表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLゲームの世界に主人公たちの妹として転生した結果  作者: 皇 鸞(すめらぎ らん)
外伝※本編末のお知らせをお読みの上、読み進めてくださいませ。
113/115

外伝 ブランとルチェル2

「俺の後ろでおとなしくしているんだぞ、ブランっ……。」


「……うん。」


明らかにどこか様子の可笑しい男が一歩、また一歩と僕たちとの距離を詰めてくる。


それに対し僕らは下手にこの場を離れるようなことはせず、まるでクマと対峙した時の対処法のように相手の目を見つめながらじっと立ち尽くす。


(どう対処するか考えてるのかな?)


ひどく切羽詰まった表情がかすかに背後から盗み見れる。


どうやら僕を見捨てる気はないらしい。


(見捨ててもいいのに。別に親しくも何でもないんだし。)


つい今の今まで名前を認知すらしていなかった相手にここまでされるのは少し変な気分だった。


それに――――――


(どうしよう……ちょっと、素敵かも。)


有事の際、身を挺して誰かを守る姿。


その姿は僕がよく知る二人によく似ている。


ヴァルドとアリステラ。


あの二人は何かあるといつも自分の事なんて二の次で誰かの為に体をはれる人間だ。


それが今であったばかりの人間や、極端な話、大嫌いな人間相手でも。


(……駄目。うん、駄目だ。こんな時だっていうのにどうしよう。僕は……僕はこの人間、ルチェル・エレア―ノスの事がもっと知りたくなってきちゃった……。)


大好きな二人によく似ている人間。


そんな人間に興味を持つことはきっとおかしいことではない。


でも流石に僕だって探求する時と場合くらい選べるぐらいの忍耐力はある。


……はずなのに――――――


(こっちに向かってきている人が明らかに性的欲求を満たそうとしていることが理解できるからか、僕もすごく、そんな気分になってきた……。)


今興味を持っているのは男同士での恋愛についてだ。


何故興味を持ち出したのかは忘れた。


でも、何故かとても興味を惹かれて、知りたいと思い始めた。


だから正直、それを知れるのならばやることをさっさとやってアリステラのところに戻ればいい話なのだけど、理解していてもそれができない。


(どうせ実体験するなら相手はルチェル・エレア―ノスがいい……かも……。)


大好きな二人とは流石に実験で気ない上、アリステラに関してはそもそも女の子だから研究を手伝ってもらうことはできない。


ならせめてそんな二人と似ているルチェル・エレア―ノスがいいと思い始めるとこの場を切り抜けることができそうな手を取ろうと思えない。


でも――――――


「ルチェル・エレア―ノス、あのね――――――」


男同士の恋愛の仕方について知りたい。


だから自分を置いて言ってくれて構わない。


意を決してそう言おうとした瞬間だった。


バシンッ!!と、力強い音が響き、僕やルチェルに近づいてきていた男が僕たちの視界から勢いよく消えた。


「「…………え?」」


僕とルチェルは理解できない現状の間抜けな声を重ねる。


すると近くの低木の隙間から少年が鞭を片手に現れたのだった。


「う~ん、やっぱり薬使ってるねぇ。いや、薬っていうか魔導具?なんでもいいけど悪趣味だなぁ。仮面舞踏会という名の乱交パーティーなんて本当ロクなものじゃないよね。ね、君たちもそう思わない?」


ひどく落ち着き払いながら淡々と状況整理をし、笑みを向けてくる少年。


その少年は先ほど僕たちに歩み寄ってきていた男が僕たちの視界から勢いよく消えた原因になったであろう鞭で地面に転がり気を失っている男を縛り上げると「これで良し!」といって男を放置したまま僕たちの元へと歩み寄ってきた。


「この道をまっすぐ行くと今すぐ利用できる馬車が止まってるから二人はそれで家に帰って。いいね?」


自分は何者で何故帰れと言ってくるのか。


そんなことは何一つ説明してこない少年。


だけど少年は僕にとってとてもありがたい言葉を付け足してくれる。


「アリステラ・クラウドラインとヴァルド・クラウドラインの事は僕に任せてくれて大丈夫だから。」


僕がこの場を不快に思っても離れられない理由。


その理由を失くしてくれる少年は僕のようにどちらかといえば文学少年に見えるビジュアルをしている。


けれど何故かこの人になら任せられる、と思えるような頼もしさを感じられた。


そしてこの場において「何故弟妹の事を知っているのか」なんて質問は不要で、無駄な時間を使う行為だと理解した僕は静かにルチェルの袖を引っ張った。


「僕は帰るけど、君は?」


「は!?いや、帰るって……」


ルチェル・エレア―ノスは少年の事が信用できないのか、この場を離れるという選択に対し納得がいっていないかのように少年と僕の顔を交互に見る。


先程まで真剣な表情で僕を守ろうとしてくれていた人間の表情とは思えないほど思考が混乱してそうな表情に少し、面白さを感じずにはいられない。


なんて思っていた時だった。


「……俺も同行しよう。お前がこの場を離れて大丈夫だと思ったのであれば大丈夫なのだろうしな。」


少し不安そうではあるものの、共にこの場を離れる決意をしたルチェル・エレア―ノスと共に僕は危ない仮面舞踏会の会場から静かに離れることになったのだった。

更新が少し遅くなって申し訳ありません!


また、次回更新日は現在未定でございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ