第10話
「すごいすごい!誰がどう見ても女の子になんて見えないよ!」
ひどくうっとりとした表情で嬉しそうに言葉を放つルイスだけれどその言葉はひどく私の胸に突き刺さる。
細身な上にまな板な私は別に背はいうほど高くないけれどウィッグをかぶってさえしまえば女の子に見えない。
その事実を気にしているということをルイスは知ってか知らずか容赦がない。
「あ、大丈夫。女の子に見えないからって忘れてるわけじゃないよ!本当はもっと胸元当たりの露出が多い方が好みなんだけど、無くても一応女の子だから胸元の露出は控えておいたんだ。」
にっこりと笑いながらルイスなりの「女の子扱い」を語ってくれるがやはりそれも私の精神にナイフの如き鋭さで突き刺さってくる。
一々まな板と言われているのと何ら変わりがない……。
でも嬉しそうに私の格好をみるルイスに今は反論する気にもなれずにいた。
とはいえ反論はしなくても気になることはある。
私はその気になることをルイスに問いかけた。
「ねぇルイス。その、どうして急に仕事着なんて用意してくれたの?私たち数か月ほど一緒に仕事してるけど今まで特に衣装にこだわってこなかったっていうか……。」
昨日私がひん剥かれた服で今まで仕事もこなしてきた。
普通にあれを着て仕事をすればいいのではないかとどうしても思ってしまう。
なぜわざわざ新調したのだろう。
そう思わずにはいられなかった。
「理由は単純だよ?明らかにどっかの誰かのおさがりのような服を男装に使ってるのが気に食わなかったから。でもかといって普段着に渡したのは可愛さ重視で仕事着って感じじゃなかったし、闇ギルドの友達にお願いしてそれっぽくて僕好みな1着を作ってもらっちゃった。」
ルイスの言う通りおそらくルイスは「なんか気に食わない」という単純な理由から服をそろえてくれたのだろう。
すごくさらっと説明してくれる。
とはいえさらっと説明しててもやはり垣間見える独占欲。
ここまで独占欲があるなら私とサッサと付き合ってほしい。
そしたら第一皇子にも「恋人がいるので」と断れるわけだし、ノウスに遊びに行こうといわれても「恋人とすごしたい」といって攻略対象2人くらいは遠ざけられる気がする。
本当に何故こんなにも頑なに付き合ってくれないのかが理解できない。
「にしても思った以上に色気のあるイケメンになっちゃったなぁ……。これはこれでいいけど、ますますアリスを女の子に思えなくなっちゃったや。」
「えぇっ!?」
女の子に思えなくなったというルイスの発言にそうそう驚きの声をあげない私だけれどついつい驚きの声をあげてしまう。
そんな私にルイスは「大丈夫大丈夫」と言いながら手を伸ばし、頭に触れてくる。
そしてそのままルイスの可愛い顔が私の顔のすぐ隣に寄せられ――――
「僕男の子でもいけるんだぁ。男の子だったら好きなタイプだよ、アリスは。男だったら、ね?」
「…………え?」
色々な意味で思考が停止するのであった。




