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彷徨える一〇一物語 〜魔法少女って聞いてたけれど、ちょっと想像と違う世界観だよ。外伝〜  作者: 山本航


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『信じる者』

 唆すような風の囁く夕暮れ時、他に誰もいない訓練場で、(アスリスカ)は自主教練に励んでいた。薄手で粗目ながら頑丈な制式運動着を纏い、騎士見習いとなった祝いに鍛えてもらった剣を逆手に構え、縁取られた蒼穹の如き青い宝珠の鎮座した柄を紅に染まった夕空に向けて掲げている。均整の取れた佇まいが運動着でさえも神聖な式典の優雅な礼服のように魅せる。


 艶やかな唇から紡ぎ出された呪文が宝珠の奥底に触れると、秘められた魔力が生を得た多頭の蛇の如く青い雷となって放たれ、激しく轟き、中空を走る。


 出来栄えに納得できない様子のアスリスカは唇の隙間から息を吐く。遠目に見える不吉な黒雲に雨の気配を感じ、騎士見習いの少女は張り詰めていた精神を緩め、今日身に着けた力の程度を疲労具合から測るように体を伸ばし、心身の緊張をほぐす。今日は終わりにしようと、寮へ戻ろうとしたその時、三人の女性徒たちのお茶会の最中のようなお気楽な笑い声が聞こえてきた。


 どうやら街へ出ていたらしく、正門の方からやってきて、訓練場を通りかかった。そのまま寮へと戻るのだろうと思いきや、三人はおままごとのような呪文をお互いにけしかけて遊び始める。耳から虹色の煙を出し、袖口を縛り上げ、無茶苦茶に踊り狂わせる。そうして三人はけたけたと笑うのだ。


 苛立たしい馬鹿笑いだけならともかく、長い伝統と格式高い親衛騎士養成機関で授けられた由緒ある魔術で遊んでいることにアスリスカは我慢ならず三人の元へ、特に普段からふざけてばかりいる同級生、信じる者(ピィス)と対峙する。


 アスリスカの睨みに怯えて他の二人はピィスの陰に隠れる。ピィスの方はアスリスカのしかめっ面に反し、にやけた顔で出迎える。まるでこれから面白い話でも披露してくれるのだと思っているかのようだ。下賜された制服を着崩し、戦士に無用の髪飾りをつけており、遺風を重んずるアスリスカをますます煽るのだった。


「ピィスさん。こんな時間まで何をしていたのですか? 門限はご存じですわよね?」

 ピィスは悪びれることなく言い返す。「ご存じだし、まだ間に合うと思うよ、たぶん。アスリスカは細かすぎるんじゃないかな」

「間に合うかどうかではなく、本校、ひいては我らが大王国に恥じることのない振舞いをすべきだと言っているのですわ。時間ぎりぎりの行動をしている時点で相応しくないという話です」


「それが細かいってのよ。だいたいアスリスカだってこんな時間まで何してたわけ? ひとのこと言えるのかな?」

「勿論言えますわ」アスリスカは真摯さを誇るように胸を張る。「遊び惚けていた貴方がたと違って、わたくしは自主教練をしていたのですから」

「うげ。そんなの何が楽しいんだか」

「楽しみでやることではありません。最精鋭の戦士となって夷蛮を打ち滅ぼし、大王国の威信を世に轟かせるのがわたくしたちの使命でしょう。違って?」


 アスリスカの眼力に気圧されたピィスの取り巻きはこくこくと頷くが、ピィスの眼差しは冷めている。


 今度のことに限らずアスリスカはピィスを普段から注視していた。大して成績が良いわけではない割に遊び惚け、にもかかわらず養成機関に在籍し続けられる。あるいは努力する姿を恥じて、隠れて訓練でもしているのだろうかと考えたが、まずそのようなことはない。だとすれば才能に恵まれているということになり、どう転んでもアスリスカを苛立たせるのだった。


 と、とうとう雲の下にいる者全てを咎めるような豪雨が訓練場に追いついてしまった。無数の雨粒が標的を射損ねた鏃のように運動場の踏み固められた地面を抉る。ピィスの友人二人は悲鳴をあげて頭を抱え、寮の方へと逃げていく。


「まだ話したいなら屋根の下にしない?」とピィスが揶揄うように言う。「体を冷やすと風邪をひくらしいよ?」

「もう話すことなどありませんわ」


 濡れた髪をかき上げてアスリスカは鼻を鳴らし、ピィスに先んじて寮へ向かおうとしたその時、言い知れぬ不安に似た予感を受けて空を見上げる。その瞬間、ただ一度、一条の稲妻が光り、大石の転がる荒野、巌ヶ原(メルガール)の方へと落ちた。まるで黄金の雫を垂らしたかのような真っすぐな稲光だった。神の国に至る両開きの巨大な門扉が僅かに開かれて、その向こうに溢れる祝いと福の光を一瞬だけ垣間見たかのようだった。


 呆けるアスリスカの横でピィスが子供のように歓声をあげる。そうしてようやく稲妻の唸り声が届く。


「ねえ!? 今の見た!? ねえ!」


 ピィスが肩を揺するが、払い除けるのを忘れるほどアスリスカは戸惑っていた。


「見ましたわよ。確かに、この目で」


 ピィスの荒い鼻息が近寄って来たのでとうとう仰け反る。まるで大量のお菓子を前にした子供のように黒い瞳を輝かせ、アスリスカを見つめている。


「ねえ、稲光(バギルディフォン)の伝説、知ってるよね?」


 竜殺しの英雄、貴き恵み(フェイデリア)の愛剣、黄金の刃持つバギルディフォンのことだ。落雷を呼び、悉くの竜を屠り、固い鱗を剥がしたという。由来と多くの伝説を残しているが、最後にどうなったかは伝えられていない。今もどこかに秘匿されていると実しやかに語る者もいるが、要するにおとぎ話だ。


「少しばかり不思議な稲妻が落ちただけですわ。そんな子供だましを未だに信じているのですか?」

 アスリスカは呆れていることを示すべく冷たい目線をピィスに送る。が、ピィスは意に介さない。

「ねえ、行ってみよう? 見に行こうよ、落雷地点」

「馬鹿ですの? 貴女のせいで門限はもう過ぎてしまいましたわ。だいたいメルガールの原は怪物のうろつく立ち入り禁止区域、ましてや見習いだけで行くなど、許されるはずもありません」


「じゃあいいよ」と断るピィスは二人の友人とじゃれ合っていた時と同じく笑みを浮かべている。「あたしが1人で伝説の剣を見つけちゃうんだから。きっと褒章ものだね。何なら一足跳びに騎士に叙任されるかも」

 駆け出すピィスを呼び止める。「待ちなさい! 危険だというのです!」


 教員を呼びに戻ろうかとも思ったが、ただ一人の不良生徒を連れ戻すこともできないと思われたくなかったアスリスカは滅多に吐かない悪態をつきつつ、ピィスを追いかける。




 走るピィスが次々に呪文を唱えている。雨除け、風除け、灯火。まるで自分が出遅れたかのように思い、アスリスカも同様の魔術をずっと上手に行使する。アスリスカに触れた雨滴は急流を滑り、海に流れ込むように全て地面へと吸い込まれていく。吹き付ける風は周囲を三度渦巻き、明後日の方向へと立ち去る。剣の柄の青い宝珠はアスリスカの視線を追うように照らす。


「止まりなさい! ピィスさん!」

「やあだよ! 連れ戻す気でしょ?」

「当たり前ですわ! いくつ規則を破れば気が済むのですか!?」


 巨大な岩が無造作に転がっているメルガールの荒野へとやってくる。ピィスは無尽蔵の体力で、少しも歩を緩めることなく岩原を走って行く。

 剣の鞘を掲げ、宝珠の光をかざし、不良生徒を見失うまいと追いかけるアスリスカだが、ピィスは追っ手を撒こうとしてか岩に身を隠しつつ逃げる。灯火の魔術まで消す念の入れようだ。

 とうとう姿を見失い、アスリスカの苛立ちは頂点に達する。


「ピィスさん! どこですか!? 馬鹿なことをしていないで戻りますよ!」

「一人で戻ればいいじゃん」と岩の向こうからピィスが反論してきたのでそちらへ足を向ける。「あたしのことなんて放っておいてさ」

「責任というものがありますわ!」


 先ほど声が聞こえた岩の陰にピィスはいなかった。アスリスカは舌打ちし、振り返ったその時、


「ばあ!」とピィスが飛び出してきて、驚いて悲鳴をあげて尻もちをつく。


 声を出せずにいるアスリスカを笑いつつ、ピィスは手を伸ばす。アスリスカは怒りのままに手をはたく。


「一体何のつもりですの!?」

「まあまあアスリスカさん。気楽に行きましょうぜ。追いかけっこよりずっと楽しい、ちょっとした冒険だよ」ピィスは再び魔法を灯し、掲げる。「ほら、あそこの小高い丘。見える? 方角と距離からしてあそこが落雷地点らしいよ。あそこまで行ってバギルディフォンを拾ってくるだけ。ね?」

「バギルディフォンなんてあるわけないですわ」そう言ってアスリスカはピィスの二の腕を掴む。「さあ、戻りますわよ。貴女、退学も覚悟しなくてはなりませんわ。分かっていますの?」

「アスリスカ!」ピィスが叫ぶとともに急に腕を引き、二人して地面に倒れ込む。


 小石が喰い込む痛みより先に、さっきまでいた場所に大岩が落ち、地面に叩きつけられたことに驚く。身震いしながら、そしてそれもまた間違いだとすぐに分かる。大岩は自ら蠢き、その巨体を持ち上げて、不格好な人型になって雄叫びをあげる。メルガールの石の怪物だ。アスリスカがさっきまで手に持っていた祝福された剣は怪物の渾身の一撃によって鞘ごと真っ二つに砕かれていた。


「逃げる? 戦う?」とピィスに問われる。

「戦うに決まってますわ」

「そう来なくっちゃ」


 二人は息を合わせることもなく左右に別れ、石の怪物を挟み込む。アスリスカは宝珠を失った分、より長大な稲妻の呪文を整え、ピィスは剣を抜き放つ。


 石の怪物はピィスの方へと体を向ける。アスリスカはすかさず石の怪物に接近し、両の手の内で唸る稲妻の魔術を叩きこむ。石の怪物は派手な爆裂音を生じ、ばらばらに砕けた。すると中から眩く輝く黄色の塊が飛び出した。砕けた石はその核の方へと坂でもないのに転がっていくが、すぐさまピィスが剣を振り下ろし、光の塊を砕く。砕けた塊の光は厚い雲に覆われた太陽のように徐々に失われ、完全に消え去ると怪物の体だった石は蠢くのをやめた。

 アスリスカは黄色の光の正体を摘まみ上げる。今では星の光を鈍く反射する鉛色の石片だ。


「何これ?」とピィスに尋ねられる。

「一説には古の竜の鱗とされていますわ。古の戦いで各地に飛散していた竜の鱗には敗残の恨みが宿っているとか」これもまた子供じみたおとぎ話だと気づく。「いないとか」


 ピィスは感心した様子で腕を組み、何度も頷く。


「ふむふむ。石は鱗に集まろうとしてたね」

「いいえ、鱗そのものが原因なら今も集まろうとするはず」アスリスカは宝珠のついた剣の柄の方を拾い、灯火の呪文を行使する。すると周囲の石がその青い灯火の方へゆっくりと転がり始める。それを確認するとすぐに灯火を消した。「むしろ石の方が本体でこの核は触媒のようなものですわね。光に寄ってくるのですわ」

「蛾みたいだね」


 その言い草にアスリスカは思わず吹き出しつつもすぐに取り繕う。いつの間にか雨は止んでいた。


「少しは恐れたらどうなのですか? 放っておくと再生するから討伐されず、立ち入り禁止地域になったのですわよ」


 ピィスは平然としたまま言い返す。


「アスリスカだって。逃げる選択肢はなかったの?」

「寮まで逃げて石の怪物と添い寝するのですか?」


 冗談を言ったつもりはなかったが、妙な言い回しになってしまい、ピィスがくすくすと笑う。


「寝苦しいだろうね」

「良いからその灯火の魔術も早く消してくださいな。取り込まれてしまうかもしれませんわよ?」照れ隠しするアスリスカの言葉に反し、ピィスは灯火を高く掲げる。「ちょっと! 聞いてますの!?」

「もう遅いと思う」


 ピィスの視線の先を追うまでもなく、石の怪物の地響きが迫っていることに気づく。それも一体ではない。そして一方向でもない。囲まれている。逃げ場はない。


「どうしますの!?」

「どうしよっか!?」


 この期に及んで楽し気なピィスに苛立つ余裕すらない。

 しかし次の瞬間、全ての石の怪物がその形を崩し、ぐずぐずと溶け去った。強力な酸の魔術だ。つんとした空気が流れてきてアスリスカはたまらず噎せる。


「君たち、大丈夫ですか?」


 呼びかけてきた男の方を振り返る。一人ではないようだ。十数人の魔法使いがやってくる。教員でもない。


「助かりました!」とピィスが暢気に答える。


 男が1人代表して進み出る。


「一体こんな所で何をしているんです? 養成機関の見習いさんとお見受けしますが」

「いやあ、不思議な落雷を見つけまして。バギルディフォンでもあるんじゃないか、と」


 そもそも教員とて立ち入り禁止のメルガールの荒野にこの魔法使いたちは何用でうろついているのか。ここに価値あるものなどないはずだ。立ち入り禁止になどされなくても、その危険性と無価値さで誰も近づくことはない。ただし、アスリスカは竜の鱗に纏わる一つの可能性に思い当たる。


 竜を信仰するという邪教の、贄の徒と呼ばれる信徒たちではなかろうか。彼らの様々な邪な信仰活動の中には竜に纏わる品々を――時には手段を選ばず――収集するというものもある。その推測を裏付けるように魔法使いの仲間たちが石の怪物の残骸の中で核を拾い集めている。


「バギルディフォンというと。あれですか? 竜を殺してまわったという伝説にある剣、ですか? 本当にそんなものがあるのですか?」

「あったらいいなって思いません?」何も知らないピィスは談笑でも始めそうだ。


 アスリスカは男たちに気取られぬよう、少しの予兆も感じさせず、突然ピィスの腕を掴んで走り出す。そして贄の徒の魔法使いたちの囲いが狭まる前に脱出する。


「何? どうしたの?」と特に驚いた様子でもなくピィスは問う。

「贄の徒ですわ」無知なピィスに贄の徒について説明している暇はない。「つまり悪党ですわ。とにかく逃げますわよ」


 魔法使いたちが殺意の籠った魔術を放ってきて、ようやくピィスも力強く走り始める。


「どういうこと? あの人たち何が気に障ったの? バギルディフォンの話をしただけなのに」

「ピィスさんのことが気に喰わないのでなければバギルディフォンが気に喰わないのではなくて?」


 竜を信仰する者たちの立場からすれば竜殺しの聖剣は邪なる魔剣だ。


「なるほど。じゃあ裏を返せばバギルディフォンに信憑性が増したんじゃない?」とこの期に及んで宣うピィスに苛立ちつつもアスリスカは必死に逃げる。

「だとしてもどうにもなりませんわ。あれだけの数の石の怪物を一捻りしたのを見たでしょう?」

「アスリスカのあれも一捻りだったと思うけどね」

「どのみち多勢に無勢ですわ」

「待って。止まって。追ってきてないよ、ほら」


 ピィスの言う通りだ。贄の徒たちは二人の騎士見習いを無視し、丘の方へと向かっている。落雷のあった丘だ。


「養成機関に戻りましょう。このことを報告しなくてはなりません」

「駄目だよ。バギルディフォンが奪われちゃう」


 ピィスがアスリスカの手を振りほどき、贄の徒を追って走り出す。アスリスカはその背中に悪態をつこうと大きく息を吸い込むが大きく息を吐く。

 戻って、報告しなくてはならない。しかし同じ騎士見習いを悪逆の徒の集団の中に置いてきては騎士を志す者の名折れだ。




 ようやく丘にたどり着くころ、ピィスの背中にも追いつく。丘の上には大岩の一つもない。贄の徒は既に落雷地点へと集まって、黒焦げの地面を囲んでいた。しかし歓声も何も聞こえない。

 ピィスはまるでおもちゃを取られた子供みたいに唇を尖らせている。


「どうやらやはりバギルディフォンなど無かったようですね。無いものを奪われる心配もなし。さあ、見つかる前に帰りますわよ」

「ねえ、このまま帰ったらどうなると思う?」


 今になって怖気づいたのか、とアスリスカは呆れる。


「どうなる? あまり考えたくありませんが、退学でもおかしくありませんわよ」

「じゃあ贄の徒を懲らしめた場合はどう?」

「そんなことで評価が翻ったりしませんわ。一泡吹かせられればすっきりするでしょうけれどね。でもさっきも言いましたわよね? 多勢に無勢です」


 ピィスはめらめらと燃え盛る炎を握りしめる。光は強いが熱を発しない珍しい魔術だ。


「そう、多勢に無勢だよ」そう言って、にいっと笑みを浮かべる。


 アスリスカはまたもやピィスに笑わせられ、悔しい気持ちになった。


「上手くいけば痛快でしょうね?」

「そう来なくっちゃ」


 アスリスカは青い稲妻を、ピィスはゆらゆらと揺らめく炎を贄の徒の方に差し向ける。しかし派手な魔術は贄の徒たちにすぐに気づかれ、対抗呪文で掻き消される。しかしアスリスカとピィスは少しも手を緩めることなく眩い魔術を放ち続ける。


「無駄なことはやめなさい!」贄の徒の代表の男が余裕たっぷりに二人の子供を諭す。「君たちをどうこうするつもりもない。さっさと学校に帰って勉学に励み給え」


 しかしアスリスカもピィスも絶やすことなく魔術を放ち続けた。

 直に勝利の高らかな足音が聞こえてくる。地を揺らす石の怪物の足音だ。ようやく贄の徒たちも二人の真意に気づくが時すでに遅し。先ほどの何倍もの石の怪物に丘が囲まれている。


「それでピィスさん。これからどうするのです?」


 石の怪物に囲まれているのは二人も同じだ。

 たしかに一見最大の危機だが、ピィスには何か誰も知らない重大な秘密の力を有しており、それを行使するのだろう、とアスリスカは確信していた。そうでなければ親衛騎士養成機関に在籍していることが不思議なくらいだ。


「……考えてなかったよ」

「馬鹿ですの!?」

「と、とにかくあいつらの方をより光らせて目立たせればこっちには来ないはず!」

「貴女を信じたわたくしが馬鹿でしたわ!」

「あたしはアスリスカを信じてたの!」


 ピィスにそう言われると不思議とアスリスカはどうにかなるように思えた。二人して笑いさんざめきながら光を放つ魔術のおかわりを贄の徒たちに送り込みつつ、勇ましくも石の怪物の方へと走っていく。

 この滅茶苦茶な状況が、しかしアスリスカを最高に楽しませていた。きっと何とかなるだろうと信じさせられた。

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