盗賊のスケアリー
私は王城から帰らせてもらえた。
帰り道を歩いていると、ミカボシたちを見かける。ミカボシたちも私を探していたようで私を見かけるとおーいと手を振りながら走ってきた。
「どこいってたの?」
「ちと王城に…」
「ああ、ダンジョンの事報告してたの?」
「いや、うーん。ま、そういうこと」
そういうことじゃないけど説明が面倒なのでそういうことにしておく。
「私たちそろそろ帰ろうと思ってさー。ミーミル探してたんだよ」
「ん、帰んの?」
「帰りたくないの?」
「いや、帰りたいけど…」
というので、私たちは帰ることになった。
フルムーン・パレスがいなくなったというか多分聖域にいるだろうということで警戒状態は解除され、再び通行できるようになったらしい。
帰りは歩きか馬車か聞いてみると馬車で帰るという。
「歩かないの?」
「なんつーか、歩くの面倒になってきた」
「そう」
ま、だろうな。
私たちは乗り合いの馬車広場に向かった。
馬車に乗り込み、始まりの街へ向かっていく。
行くときはろくなことなかった。まさか帰りもろくなことに…。出会わないだろうな。なんて思っていると、突然馬車が止められる。
それは停車駅についたようなやさしい止まり方じゃなくて、急ブレーキをかけたような止まり方だった。私たちの体は思わず前に倒れこむ。
「な、なんだァ?」
そういうと、御者の人が中に入ってくる。
「盗賊です! 盗賊が現れました! みなさんの中で冒険者などの戦える人は…」
というので、私とミカボシはしょうがないなという顔をして外に出ると、いかついおっさんたちが私たちが乗る馬車を取り囲んでいた。
「戦える奴らこれだけしかいねーのかよ! 瞬殺して終わりじゃねーか!」
「早いところやっつけちゃいやしょうぜお頭」
そういうと、背後からお頭と呼ばれる人が現れる。
それはいかついおっさんでもなく、普通に美少年だった。目つきは鋭いがかっこいい盗賊だった。だがしかし、その目は人を恨んでる目だ。
「ミカボシ、やれる?」
「たぶんだいじょぶ」
「よし」
ミカボシは剣を構える。私はナイフを構える。
「さっさとやっちまえ。お前ら」
そうお頭が命令すると盗賊は襲い掛かってきたのだった。
剣で切りつけようとしてきたのでそれを躱し、心臓部にナイフを突き刺し引っこ抜く。弱点が見える。
それに、普通の時でも素早いので見切りやすい。
「死ねぇ!」
「せい!」
私はナイフで切り裂く。
そしてもう一人の男に近づき喉元を掻っ切り、私はお頭めがけてナイフを投げた。お頭はナイフで防御し、反撃と言わんばかりにこちらにナイフを投げてくる。
「たった二人だろう。何を手間取っている」
「こ、こいつら意外と…」
「それはお前らが舐めているからだ。どんな敵でさえ、どんな人間でさえ舐めていちゃ勝てるもんも勝てねぇぞ。お前らが甘いんだよ」
と、冷たい声だった。
「そこで高みの見物してるお頭さんよォ!」
私はナイフを投げる。
「無駄だ。ナイフなんぞすぐに防御できる」
「ああ、そうかい」
たしか投擲物は急所に当たるスキルが発動していたが、はじき返されたらそれはなくなるらしい。防御に弱いのか…。
「んじゃ、直接攻撃だ」
「俺とやるつもりか?」
男はレイピアのような細い剣を取り出す。
冷酷な視線。お頭は鋭い一突きを繰り出してくる。私はナイフではじき返し、近づいて心臓を一突きしようとすると男は私の脇腹を蹴ってきた。
「すばしっこいやつめ」
「こりゃ一筋縄じゃいかないわ」
「お頭ぁぁあああ! 今助けるぜええええ!」
「やめろ。お前如きじゃこいつに敵わない」
「何言ってんだ! か弱い女だ! 俺の敵じゃ…」
私はとびかかってきた男の心臓にナイフを投げた。
男は胸のあたりをおさえ、攻撃を辞める。そして私は喉のあたりを切り裂く。
「馬鹿が。無駄に命を使いやがって。ちっ、分が悪いか。引き上げることにしよう」
よくみるとあとお頭しか残っていなかった。
「…よくも二人で俺の仲間をやったもんだ。お前、名前を教えろ」
「報復にでも来るの?」
「そんなことはしない。それは二流の盗賊だ。俺はお前らを認めよう。俺はスケアリーだ」
「私はミーミル。こっちアマツミカボシ」
「そうか。覚えよう。すまなかったな」
と、馬に乗り去っていく。
スケアリーね。覚えた。
「ありがとうございますぅ! 始まりの街についたらお礼いたしますので!」
「あ、そうですか…」
「早くいこうよ、ね?」
「はい!」
私たちはまた馬車に乗り、馬車は再び走り出した。




