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アンダーワールドクロニクル  作者: 鳩胸 ぽっぽ
私たちの歴史の始まり
8/442

バーベキューをしよう

 夜になり、ゲームを一旦やめる。

 下に行くと「ただいま」という低い声が聞こえてきた。父さんだろうな。


「おかえり」

「ああ」


 と、父は一目散に書斎へ向かう。

 私には視線も向けず、自室に篭るようだ。なんか、やっぱムカつくな。

 だから親は嫌いなんだよ。私のことは見てもいない。金だけ渡せばいいという感じの親だから嫌いなんだ。


 小さい時はあんなに優しかったのにな…。


 私は無視してコンビニに向かうことにした。

 父は寡黙、というわけでもなかった。イギリスにいた頃は撫でてくれたし、遊んでくれたりもした。私の話も聞いてくれていた。


 でも、日本に来てからこうだ。


「あのクソ親父が…」


 日本に来てから父のことは嫌いになった。

 何が父を変えたんだろうな。昔に戻りたいな。そう思いながらもコンビニに向かう道を歩く。


「っしゃせー」


 コンビニのやる気ない店員の声を聞き流し、弁当コーナーに向かう。

 弁当も少なく、鶏そぼろ弁当、三色そぼろ弁当というそぼろ弁当しかない。


 なに、コンビニがそぼろ推しなの? それとも客がそぼろ嫌いなの?


「カップ麺でいっか…」


 私はカップ焼きそばを手にすると、誰かと手が触れ合う。


「あ、すいま…ってアテナじゃん?」

「なんだ三日月か」

「なんだってなんだよー。ってか機嫌悪くない?」


 三日月はそう指摘する。

 まあ、たしかに機嫌は悪いな。


「父さんが帰ってきたからな」

「だからかー。帰ってくるなんて珍しいね」

「まったく。ずっと病院に泊まってりゃいいのに」


 父は外科医だ。しかも偉い立場についている。だから帰りも遅い。

 疲れて帰ってくるのはわかるけど…。家庭を省みない父親だから嫌いなんだ。


「お母さんは?」

「帰ってきてない。母さんも母さんで事務所にずっと泊まってほしいけど」


 母さんは国際弁護士。

 事務所に大量の案件を抱えて泊まっている。二人は家に帰ってくることも少なく、私はずっと一人だ。


「ふぅん…。相変わらずの親嫌いだねー」


 三日月がそういった。


「なら私の家に食べにくる?」

「いいの?」

「うん。今日は焼肉だからね」


 そう言って三日月は笑う。








 三日月の家に来た。

 天津という表札が掲げられており、私はお邪魔しまーす…と声を出すと三日月の母さんと思われる人が来た。


「…どちら様…じゃなくてふーあーゆー?」

「日本語喋れます。三日月の友達で…」

「母さん、ご飯余計にあるよね? 食べさせてあげたいんだけど。あ、私の友達ね〜」

「そう? いいわよ〜。上がって上がってって言いたいけどやるのは外でやるの。庭の方にまわってもらえるかしら」


 というので私たちは庭にまわる。

 庭のほうに行くと父親が座っていた。三日月の父さんは見たことがあるからな…。母さんはいつも家にいないとか言ってたし会ったことはなかったんだけど。


「お、アテナさん。いらっしゃい」

「お邪魔します。その、夕飯食べさせて貰いたくて…」

「かまわんかまわん! 人数多い方が美味しいしな」


 と、豪快に笑う。

 私は席についた。三日月は私の隣に座る。そして写真を一枚撮っていた。


「なんで撮った?」

「灘に自慢してやろうかと思って」

「羨ましがって暴れるぞ?」

「そうさせたいからね」


 と小悪魔な笑みを浮かべる。

 こいつ…。案外サディスティックなんだな。私と肩を組みピースをしてカメラ目線。

 またもう一枚撮られた。


 すると、三日月の携帯に電話がかかってきた。


「灘からだ」


 と笑いながら電話に出ると。


『貴様らあああああああああ!!!』


 という怒鳴り声が。

 思わず三日月と私は耳を塞ぐ。電話越しで叫ぶなよ…。


『なぜ貴様らだけ和気藹々と晩餐を囲っている! 私もいれろおおおお!』

「悪いね、この焼肉は四人用なんだ」

「ソーリー」

『ファック!』


 電話の向こうで中指立てているような気がする。

 そんな汚い言葉使うなよ。女性はお淑やかにね。三日月はうぷぷと笑いを堪えていた。


「ごめんね。また後日三人でご飯行こうね」

『絶対だぞ!』


 といって切られた。ツーツーという音が響く。


「可哀想ね…」

「三日月。あまり友達を揶揄うんじゃないぞ」

「はーい」


 反省してないなコイツ…。

 そう思っていると三日月の母さんがトングで網の上に肉を乗せた。

 肉が焼ける音が聞こえてくる。


「ふおお、いいにおーい!」

「やっぱ夏はバーベキューでしょ…」

「久しぶりの焼肉!」


 三日月の母さんはどんどん肉を乗せていく。野菜もアスパラ、ナスビ、ピーマンを乗せていた。

 私はおにぎりに手を伸ばす。


「いただきます」


 おにぎりを食べる。


「私おにぎりの海苔はパリってなってる方が好きなんだけど母さん…」

「三日月はそうなんだ。私はベチャってしたのが好き」

「これは好みあるわねえ」


 パリってするのは歯にひっつくからそんなに好きじゃないし、ベチャってしたのが海苔にも塩味がついてて美味しい。

 

「ほら、肉が焼けたわよアテナさん」

「あ、ありがとうございます」


 肉が皿に乗せられた。

 私は焼肉のタレに肉を浸し、口に運ぶ。肉の脂って美味しい…。コンビニ弁当では味わえないなー。

 

「美味しいです」

「よかったわあ」

「母さん、私牛タン食べたい」

「自分で焼きなさい」

「えー! 贔屓だー!」


 とぶつぶつ言いながら三日月は肉を焼き始めた。

 バーベキュー最高だなあ。



















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いずれ王となる君に~部下である剣士の私はその才能をゲームでも発揮します~
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 一つ気になったのですが「バーベキューを食べよう」……バーベキューをしようじゃなくて?言い方が少し違和感があったので気になりました…
[一言] コンビニのやる気ない店員の声を聞き流し、弁当コーナーに向かう。 弁当も少なく、鶏そぼろ弁当、三色そぼろ弁当というそぼろ弁当しかない。 なに、そぼろ嫌いなの? そぼろ推しなの? とかのが良さ…
[一言] ありゃ!?またVR物書いてたとは!? 何か今回の主人公も割と闇深そうだなぁ……いや、パン子には明らかに劣るけどww
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