王城に入るには
王城内にダンジョンがあると見て間違い無いだろう。
「…私たちを呼ぶならさ、フレンドメッセージでもよかったんじゃない?」
「なんで私たちだけ自分で走ってんだよっ…」
「いやぁ」
私は馬にまたがっていた。
というのも、乗りたくなったのだ。二人が学校終わって帰るまで暇だったんで乗馬してレースする漫画を読んだ。やっぱ私も経験者だからさー。懐かしくなるわけで。
「で、確かなんだよね? 王城内ってのは」
「多分。むしろたくさんの人が探してるのに見つかんないってことは私たちが入れないところにあると見るべきでしょ」
「それもそうだな。たくさんのプレイヤーがくまなく探して見つからないってのもおかしい」
「ちょ、早い!」
「もうバテた?」
私は馬を走らせる。
「じゃ、先に話済ませてくるね〜!」
「あ、おい!」
私は手綱を握り馬を走らせる。
もちろん、中に入る算段をつけなくてはならない。
どうすればいいのか。走る馬に乗りつつそう考えていた。
馬鹿正直に入れてくれつって入れてくれたら苦労はしない。
「忍び込むとしても正門は警備が硬い、裏門もあるのはわかってるけどそこも警備の目が硬い。
となると壁をよじ登って…というのも現実味がない。登ってる最中に見られたらどうするか。私たちはニンジャじゃない。憧れは少しあるけど…」
どうすればいい。
どうすれば私たち三人で王城内に…。
「やっぱハイドの威を借るしかないかあ」
日本のことわざ、虎の威を借る狐…。私たちはキツネかあ。
ま、いいか。神獣は国でも大切に扱わないといけない存在のようだからな…。神獣をテイムしている私を無碍に扱うことはできまい。
流石にここまで影響力を借りるのは気が引ける…。やってることは金持ちのボンボンと大差ないんだよな。いや、脳外科で結構偉い地位にいて500万をポンと出せるような父親、敏腕国際弁護士として奮闘する母親のもとに生まれてる私は金は相当ある方だと思うが…。
わ、私の家って金持ちの分類になるのか?
「た、たしかにイギリスにいた頃はすげーいいとこに通ってたような…」
イギリスで通っていた小学校はものすごく良いところだった気がする。
金持ちしか通えないとか言われていたとこだったような。なんか考えてるとなんか悲しくなってきた。恵まれてるなあ、なんて思うが金をこれ見よがしに使うなんてひけらかしてるみたいで嫌だ!
あと、私も私で大金を使うことに躊躇いがないのが怖い!
「やっぱ自重すべきかなぁ…。恵まれすぎてるんだから我慢すべきかなあ…」
私はそう考えていると王都に到着したのだった。
王都に到着し、私は二人の到着を待つ。
二人は十五分くらいかけてやっと着いたのだった。
「あんたねぇ! いくらなんでも置いてくんじゃないっつの!」
「そ、そういうとこだぞ…」
「ごめんごめん。イギリスって結構個人主義だからさー。私もそれに倣わず?」
「ここは日本だっつの…」
「それに日本に来てから五年は経ってるだろ…」
それはそうなんだけどね。
私の先祖はどうやら貴族だったみたいでなかなか家族も自分でやるというのが慣れてないみたい。上流階級出身って怖いよね。
「それで? どうやって王城に入るのよ。すんなり入れてくれるの?」
「そうだな。どう入るつもりだ?」
「方法は二つかな。冒険者ギルドで冒険者登録してランクを上げて挑むか…」
「か?」
「私たちにしか出来ない方法を使うか」
ま、あれこれ考えては見たけど出来るのはこれぐらいだろうな。
「私たちにしか…?」
「これだよ」
私はハイドの紋章を見せる。
「なるほど、それで強引に中に…。なんつーか、結構悪どいやり方だな」
「仕方ないでしょ。こっちの方が手っ取り早い」
「国からしたら結構な危険物だよね…。取り扱いを間違えたら爆発するダイナマイトみたいな…」
「そこまで危険視する必要はないけどねー」
私は笑って返す。
「まあ、私たちが生まれるくらいの時に流行ってたゲームではそんな人がいたんだとか…。怒らせたらいけないとか。都市伝説だけどね」
「マジ?」
「喧嘩をふっかけたら精神が崩壊するとか言われてるんだよね」
なにそれ。めっちゃ怖い。
「ま、その人はめちゃくちゃ頭良すぎるって人だったし周りも周りであの阿久津家の人だったり今年31になった天才柔道家の球磨川さんの友達らしいよ」
「私も知ってるぞ。てかその時代は有名だったから名前も晒されていたな。ワグマにビャクロ、パンドラだったか。ネットの掲示板スレに名前残ってるぞ」
「なるべく関わりたくはないよねそんな人たちと」
…あれ。
なんか出会ったことが…。フレンド登録してるような…。
私はフレンド欄を見てみる。
「…私その三人とフレンドなんだけど」
「えっ!?」
「だってそんなことあるなんて知らねえよ! そんな恐ろしい人たちなの…?」
「…ま、まあ、大丈夫じゃない? 危害とか加えてないしね」
だといいんだけどっ! なんかその話聞いたら怖くなったわ!
私もそんな危険人物だと知ったら関わりたくなかったよぉ〜…。なんでそんなダイナマイトみたいな人とフレンドに…。
「やぁ、ミーミルさん」
「ひっ!?」
私は思わずびびって後ろを向くとフードをかぶった人が肩を掴んでいた。
私はナイフを構え、三人も武器を構える。と、その人はフードを外した。
「渚 凪さんっ…!」
「しーっ。君、静かに。一応プレイしてることは秘密にしてるんだから」
「驚いたな」
「君たちはショッピングモールに来ていた子だよね? ミーミルさんの友達?」
「は、はい! アマツミカボシです! 凪様!」
「だから静かに! 私はナエギだからナエギって呼んで」
「はいっ!」
「ふはははは! 私はクシナダだ!」
「ど、どうも?」
クシナダはマントをバサーッとカッコつけたつもりらしいがナエギさんには不好評のようですね。
「奇遇だね。なにしてるの?」
「あー、王都にあるダンジョンを探してまして。やっと目星はついたんで向かうところなんですよ」
「ほんと!? 私もそれ目的だったんだー。その、さ。よかったらついていっていい?」
「私はいいですけどリーダーの…」
「構いません! 大丈夫です!」
ミカボシよ。
フーとリオンは渋っていたのにナエギさんはいいとか差別よくないっすよ…。
「ありがとう。じゃ、その目星の場所にいこー!」
「おー!」
私たちは王城に向かった。




