処刑人一族の頼み
ゲームにログインするとデコイさんからメッセージが届いていた。
確認すると…。
『処刑人がミーミルさんを探してたけどなにかした?』
ということだ。
処刑人とはなんだ? と、下にスクロールすると処刑人についての説明もしてくれていた。わかってるな私のことを。
処刑人とはいわゆる罰を与える者でカルマが高い者を狙う人らしい。
カルマとはPKやNPCを殺した時に溜まるもので高ければ高いほど処刑人に狙われるという。たまにPKもNPCも殺してない人も殺してしまうらしいが、のちのちお詫びにくるという人。
処刑人は殺しても生き返るという人だから逃れられないということだ。
「ふーむ、心当たりがないが…」
以前パンドラさんを助けた時にはPKしたが…。アレのせいか? アレのせいでカルマが溜まったのだろうか。
ならパンドラさんの方が狙われそうなもんだけど…あそこまで恨み買うぐらいなんだから。
すると、突然拠点の扉が開かれる。
入ってきたのはミカボシたち…ではなく。
「お前がミーミルだな?」
と、そこにはフライトキャップを被りゴーグルをつけた男性が立っていた。
腰にはナイフ、剣を携えている。私は戦闘態勢を取った。
「まて、私は戦うつもりはない。頼みに来たのだ」
「頼み?」
「お前が人を殺したことも知っている。が、それは人を助けるためだとわかっている。罪はない」
「あ、そう?」
私は拳を下ろす。
「依頼人として来たわけ、ですね?」
「ああ」
「なら武器をその場に置いて席に座りください」
そういうと男は腰の武器を地べたに置き、席に座る。
私は男と対面するように座った。
「えーと、私はミーミルです。あなたは?」
「私はエーデル・デフリル・ラプソデイ。処刑人を生業とする神の使徒だ」
「神の使徒?」
「ああ。私は神によって創られた人間を裁く存在。噂には聞いてるだろうが私は人には倒されるが殺されはしない。人間に私は殺せない」
なるほど。だから復活するのか。
「で、エーデルさんは何を依頼に?」
「ジキルタイガーのことです」
「ふむ」
私は立ち上がりお茶を入れる。
紅茶にレモンを輪切りにしたもの一切れを入れ出した。
「私の一族は神獣に認められてから成り立つもの。わが孫の試練を手伝ってもらいたい」
「孫ぉ? エーデルさん何歳ですか…」
「51歳となります。息子は33歳、孫は15歳となります」
「18で子供産んでんの…」
息子さんも18で子供産んでんだな…。高校卒業してすぐ出来ちゃったって感じか。
若いおじいちゃんと若い息子だな…。
「孫の試練…」
「我々はジキルタイガーに認められなければ処刑人として活動できないのだ」
「ほえー、そうなのか」
「ジキルタイガーが課す試練を乗り越えなければならない! だからこそジキルタイガーをテイムしたあなたの力が必要だ」
なるほど。ジキルタイガーをテイムしたからか…。私を探していたのはそういう理由だ。
「ま、別にいいですけど…その、下衆い話になりますが報酬とかはありますか?」
「もちろん我々としても協力してくれるのなら処刑人という職業に転職させるワークナイフを差し上げよう。ジキルタイガーをテイムしているあなたには資格があります故に」
ほー、職業か。
処刑人は多分特別な職業だろうな。気になる。よし。決めた。
「協力するよ。ジキルタイガーのとこにまず孫を連れてきゃいいんでしょ?」
「助かる。ありがとう」
「はいはい。でもま、まずその孫がいないと話にならないし今日は夜遅いから明日でいい?」
「構わない。明日、また来る。都合のいい時間帯は?」
「明日は朝からいるはずだから朝からでも大丈夫です」
明日は日曜日。
学校も休みで一日中暇だ。約束もないしな。二人もゲームするつってたし明日は一日中ゲームできるぞー!
「それじゃ、また明日」
「はい」
エーデルさんは去っていった。が…。
「ナイフとか忘れていってやんの」
私はナイフを手に取り追いかける。
エーデルさんは繁華街にちょうど出たばかりのようだ。
「エーデルさん」
「なんだ?」
「忘れ物」
「…私としたことが。親切をありがとう」
と、優しくはにかんだ。
すげーかっけー。付き合うならこういう男の人がいいなあ。なんて思ったりした。
「それじゃ、今度こそまた明日」
「はい。迷惑をおかけしてすまない」
私は拠点に戻る。
さて、黄金の煌きに遊びに行こう。




