木戸くんとデート ③
バスケ勝負。勝ったのは。
「いよっしゃあ!」
『負けた…この私が…』
勝ったのは私です。
「さすがアテナさん!」
「まあ、敵じゃないね。これが私の実力っていうか」
私が誇らしげに語っていると女の子が立ち上がる。
私の腕を掴むと女の子の方に振りむかせられた。女の子は少し涙目だが悔しそうにしていない。
『お姉様! あなたのバスケの強さ惚れ惚れしました!』
「???」
『これでもアメリカでは負けなしのプレイヤーだったんです。そのせいで少し思い上がってました。上には上がいるということを改めて思い知りました』
『はぁ』
『是非バスケ部に入ってください! お姉様なら頂点に立てます!』
と、勧誘されていた。
私は男たちの方を見るが男たちは英語を理解していないのではてなマークしか浮かんでいない。
くっ、なぜ英語を喋れないんだ君たち!
『申し上げるのが遅れました! 私はソフィア。ソフィア・ホワイトです。ソフィーと呼んでくださいお姉様』
『私はアテナ・アゼリア。イギリス出身』
『イギリス! 納得しました! アメリカはイギリスの植民地でしたからね! 私より上なわけです!』
『それとこれは関係ない気がするけど…』
たしかに歴史的に見ればそうなんだけど今はアメリカの方が経済的にも優位だし世界の中心的存在はアメリカだろうよ。
『で、お姉様、バスケ部に…』
『ゲームに忙しいし無理。助っ人くらいならいいけど』
『そうですか…。残念です…』
肩を落とし少し落ち込んでいた。
「話終わったかな?」
「終わったよ。木戸くん。いこっか」
「あ、ああ」
私は木戸くんの腕を引っ張った。
『お姉様ー! キドー! バイバイ!』
『バイバイ』
「あー、えっとバイバイ」
私たちは二人と別れる。
歩いてる時に木戸くんにあの子たちのことを聞くことにした。
木戸くんは少し話しづらそうにしていたが関係ない。
「あー、えっと、あの子は俺に惚れてわざわざ転校してきたみたいで…」
「…そこまで?」
「父親がNBAリーグの大人気のチームに所属していて、母親がそのチームの監督という間の子らしくてさ。いわゆるバスケのサラブレッドで彼女に敵う人はアメリカではいなかったんだって。その時日本に遊びにきた時俺とバスケしたら気に入られて惚れられて越してきたっていう…」
「たかが一人の男のためにアメリカから来るかふつー…」
才能ある人はどこかおかしくないといけないのだろうか。
私の場合は両親が日本好きということだし日本に憧れがあったらしいからわからなくもない。ただ惚れた男のためだけに…。
「夏休みに越してきたらしくてな。まだ日本に来たてだから英語しか喋れねーらしい。クラスでめちゃくちゃ浮いてるらしいぞ」
「まあ、大体が英語喋れないしな…」
言語の壁というのは意外とデカいからな。それに世界でも難しいと言われている日本語だ。覚えるのは結構時間かかる。
「女バスでも一人だけ言語が通じないから英語の先生つけて通訳してるんだ」
「大変だねえ」
「英語の先生が無理だったらアテナさんに頼むかもしれないけど…その時はよろしくね」
「ま、いいよ。通訳ぐらいなら」
話しているとスポーツ店のシューズ売り場についたのだった。




