職業に就こう!
私の夏休みは優雅にスコーンを焼いてティーパーティー…んなイギリスみたいなことはしない。
優雅とはかけ離れたような生活を送るのだ。だからログインする。
ログインするとクシナダだけしかログインしていなかった。
「クシナダもうログインしてんの? 朝8時だけど」
「ふふふ…ゲームは楽しいからな…。早起きしてやる時間を増やすんだ」
ということだ。
こいつは案外ゲームが好きでゲームのキャラに感化されたりすることがある。
ゲームのためなら睡眠時間を削ることもするってこともあるらしい。
逆にミカボシは朝が弱いからまだ寝てるだろうな…。
「とりあえず二人でやろうか。なにすっかなー」
「武器の調達とかはどうだ?」
「いや、剣はダメなんだよ。拳が一番いいから武器は…」
「いや、拳専用の装備もあるぞ。そういうのも想定されているからな」
まじか。
こういうのって素手なら普通に素手でいいってやつもいるしないかなーって思ってたんだけど。
「のまえに職業につかなくてはな。職業につかないと武器は短剣以外装備できないんだ」
「そうなの?」
ということなので職業を決めることになった。
職業を決めるところは職業案内ギルドというところらしく、一つの街に一個あるということらしい。転職はいつでも可能だけど、転職すると転職する前の職業スキルが使えなくなるということだ。
「拳で戦うなら武闘家だな。その窓口のところに行くんだ」
ということなので武闘家と書かれた窓口の椅子に座る。
すると職員が目の前に座り、一つのナイフを取り出していた。
「このナイフを胸に突き刺すんです」
という。
え、本気で言ってる? このナイフを突き刺すの? 私はクシナダを見るとうなずいていた。
え、ええ。自殺するの? なんなんだよこれ。
私はそう思いながらもナイフを手に取った。
軽い。だが、切れ味は凄そうでこれを突き刺さと言わんばかりにこちらを見ている。
ま、マジかよ…。
怖い。胸に突き刺せって…。自殺志願者じゃねえんだぞ。
「…南無!」
私はナイフを胸の中に突き刺した。
胸のあたりに突き刺さったナイフはずぶずぶと私の胸の中に入っていく。
痛みはない。だけどちょいと不気味だ。
ナイフは全て私の中に入っていった。
すると、アナウンスが聞こえる。
《武闘家スキル:根性を手に入れました》
《武闘家になりました。爪、グローブを装備可能になりました》
と。
根性とはなんぞや。と説明を見てみる。
根性とはピンチの時に攻撃力が上がるスキルらしい。
体力が三分の一になると発動する、らしい。
「はい、これで職業武闘家になりました。あなたに幸運がありますように」
と、言われたので私は席を立つ。
胸の辺りをさする。この中にナイフが入っていったんだよな。
大丈夫なのだろうか…。不思議だ。ゲームってすごい。けどこれ覚悟いるだろ…。
「最初は私も怖かったぞ。ナイフを突き刺すのはな…」
「やっぱ怖いよな…。ところでクシナダはなんの職業についてるんだ?」
「錬金術師だ」
「ほう…」
なんとなく選びそうだとは思った。
錬金術師ってネーミングだけはいいんだけどほとんどのゲームで地雷職な気がするんだけど。
「錬金術師って人気なのか?」
「不遇職だから人気はないぞ。私は敢えて錬金術師にしたんだ」
「なんで自ら修羅の道を…」
「ふふふ、その方がカッコいいからな! 不遇職で無双するってのは憧れがあるだろう!」
いや、私は憧れませんな…。