隠しボス
拠点に戻ると、ミカボシとクシナダの二人が座って何かを話していた。
紙を中央に置き、どうするかと話している。
「どしたの?」
「あ、ミーミルか。いや、依頼が来てな」
ミカボシは私が座れるように少し隣にずれる。私はミカボシの横に座り、紙を覗き込んだ。書いてあったのは地下大水路の清掃という内容。
地下の大水路にとてつもない量のゴミが溜まっているので掃除してほしいということ。
「めんどくさい依頼が来たね」
「いや、違うんだよ。これは多分かくしボスクエストなんだ」
「隠しボス?」
「内容はほとんどの依頼と変わらないんだけどごくまれに隠しボスがいるクエストがあるんだ。それも尋常じゃないくらい強いの」
へぇ。これが隠しボスクエストというのか?
どうやって判断してるんだろう。見た目は普通の依頼なんだけどな。隠しボスがいる要素がわからない。
私はじーっと見ているとミカボシが説明してくれた。
「それには書いてないよ。それは依頼をもらったときに自動的にできる依頼書だからね」
「へぇ」
「さっき依頼書作成システムを購入してさ、自動的にできるようになったんだよね。でもこれには隠しボスがいることは書いてないから話を聞かないとわからないんだ」
「依頼主は男性騎士。地下水路の見回りの最中にゴミが溢れてたらしい。帰ろうとした時なにやら影を見たといっていた。この影が隠しボスだ」
なるほど。それは依頼人から直接聞く必要があるということだな。
「影を見たということを聞いたら隠しボスがいるということだと噂されてるんだ」
「へー。いくの?」
「まず装備を整えないとね。隠しボスは基本的に図鑑に載ってないボスだから何使ってくるか…。水属性魔法ということもあるし水属性耐性で固めていくのもいいかもね」
ということで隠しボスに向けての装備整えが始まった。
私は黄金の煌きチームの拠点に来ていた。
チームメンバーは私たちより余裕で多く、みんなわいわい騒いでいたりしている。私はその拠点の受付の方に行くとガタイのいい男の人に声をかけられた。
「おいおい嬢ちゃん。何のようだい? あんたみたいな低レベルがまさかチームに入ろうと?」
「違いますよ。リーダーのところにいくだけです」
「あん? リーダーは今不在だぞ。クエストいってんだ。副リーダーならいる。リーダーになんか用か?」
入る人じゃないとなったら優しくなったなおい。
「デコイさんがいるならデコイさんでいいか」
「呼んでくっか?」
「お願いします」
そういうと男の人は奥に行った。しばらくして出てきたのはデコイさん。デコイさんは満面の笑みで私に近づいてくる。
「おー、ミーミルさん。何か用かい? あ、僕も聞きたいんだけどフーログインしてる?」
「いや、してないですね。どうかしたんですか?」
「あいつ昨日宿題やらせようとしたら逃げ出しちゃってさ。さすがに女子だから迂闊に部屋も入られないし…。あいつ下着とか部屋に散乱してるから入りづらくて」
「あー、たしかに男性は下着とか転がってたら気にしちゃうんですか」
「僕が、というよりフーがね。下着見たら殴るんだアイツ。自分で放り出してくるくせに…」
と、愚痴が始まった。
大変なんだなぁと聞き流している。
「まあいいや。僕に何の用かな?」
「あー、なんか隠しボスが出る依頼をもらったらしいんですよ。どれくらい強いのかなーって思いまして。経験豊富なリーダーに聞きたかったんですけど」
「あー、隠しボスね。たしかにレベル30台ならきついと思うけどレベル50もあれば余裕だよ。この町は。始まりの街だからね。そこまでレベル高くないさ」
「街ごとに違うんですか?」
「そう。魔王城があって、その近くの街は本当に隠しボスは強くてさ。レベル200は超えてないとまず勝てないんだよ。ここは始まりの街だしそんな難しいものはでないさ。運が悪くないと」
へぇ、街ごとに違う。
「ただ、やっぱり例外はあってねぇ。どの街でも『これゲームのラスボスだろ!』って言わんばかりの強さの隠しボスがあってさ。それはどの街でもでるし僕も勝てたためしはない」
「そんな恐ろしいのが…」
「ま、それは出る場所が限られてるし大丈夫だよ。この街は地下水路だったかな。その依頼は一応保管してあってあれは辛かったなぁ」
…地下水路?
え、いや、嘘?
「どういう依頼内容ですか?」
「地下水路から悪臭がするから調べてほしいって言う内容」
嫌な予感がする。
私は汗がだらだらと垂れてきた。まさかここで引いちゃう?
「あの、私たちは地下水路のゴミを掃除してほしいと…」
「…運が悪い、ね」
「これって間違いなくラスボス級のですよね?」
「そうかもしれないね。でもそうじゃないかもしれない」
「どゆことですか?」
「地下水路に出るんだけど地下水路の隠しボスは三匹。そのうちの一匹が格段と強いだけで他二匹は普通に勝てそうだけど…」
だが、悪臭とゴミ。繋がりがないわけないだろう。
「とりあえず手伝うよ。オルタナも呼ぶさ」
「私はクロムさん呼んでおきますね…」
嫌な予感はぬぐえません。




