忌々しき太陽が照らすものは ⑤
アマテリウスの体力はゼロになった。
アマテリウスの体の靄が霧散し、アマテリウス本体が落ちてくる。地面に落ちたアマテリウスはまだ息があった。
私はアマテリウスに近寄る。
「私の勝ちだ」
私がそう告げると、アマテリウスは笑う。
「私は……二度も神に負けたのか」
そうって腕で目を隠す。アマテリウスからしずくが地面に落ちた。泣いているようだった。悔し涙……なのだろうか。
少なくとも、復讐失敗で泣いてるようではなさそうだ。
「なぁ、なんで太陽を独り占めしようと思ったんだよ」
「……人々が、神に対する信仰を忘れていたからだ」
アマテリウスは事情を話し始めた。
人間はいつしか神の存在を信じなくなり、作物が育つのは当たり前だと言っていたようだ。神への信仰心が薄れていき、自分たちの存在も危うくなると危惧したアマテリウスは太陽をなくしもう一度知らしめようと考えたらしい。
「馬鹿だろ? 妾はこんなやり方しかできん。逆恨みだって言うのもわかっておったわ。でもこうしないと、人は忘れてしまう。神の存在を忘れてしまう」
「そんなことはないと思うけどなぁ」
と、どこかから気の抜けた声がする。
三神がそこには立っていた。
「アマテリウス。人は神を忘れたりはしない」
「神は人を助け、人は神を敬う。時代は変わってもそれは同じだよね」
「あたしらだってちゃんとしていれば人間もちゃんとするんよ」
そういって三人の神はアマテリウスに手を伸ばした。
「……妾に手を差し伸べるのか? 貴様らの世界を壊そうとした妾を」
「だって私たち神様でしょ。動機はほめられたもんじゃないけど神様のことを考えてたんでしょ? それに、何万年前だと思ってるの。もう時効だよ時効」
「私たちだってそんな昔のことで怒ったりはしない。あの時は私たちも未熟だったからな。恨まれても仕方ないだろうとは思っている」
「ほんとひやひやしたわー。ま、どっちにしろもう許したるわ。太陽を管理するのはもう疲れたからそろそろ代わってや」
そういって手を伸ばしたままだった。
アマテリウスはその手を取る。砂埃を払い私たちのほうを向いた。
「悪かった。妾はとんでもないことをしてしまった」
と、頭を下げてきた。
「それじゃ、この子は連れて帰るからね。ごめんね、迷惑かけて」
そういって四人は消えて行ったのだった。
私は地面に思わず座り込む。そして、天を見上げた。太陽は元の位置に戻っており、隕石はふっていない。どうやら勝ったようだ。
勝った……。神様に。なんていうか、すごい満足感だ。本気を出せたような気がする。楽しかった。また戦いたいな。
「ミーミル!」
「大丈夫か!」
二人は私に駆け寄ってきた。
「勝った……! 私たち勝ったよ!」
「さすがだなミーミル!」
二人は私の背中をたたく。
嬉しそうに笑う二人の顔を見るとちょっとうれしくなってしまった。
《ワールドクエスト:アンダーワールド をクリアしました》
《世界の平和は守られました》
あと本編一話だけです。
いきなりラスボス戦始まっちゃって困惑したと思います。これがミーミルです。暇だから顔合わせしておこうとしてラスボス戦になっちゃうんだもんなぁ。ミーミルちゃんには困った……。
明日は午前六時に投稿されます。そういう気分でした。




