戦いこそ我が愉悦なり ①
私は旅行から帰ってすぐにログインしてみた。
拠点から出ると、街は静かではなく、交戦中っぽい。魔法で何かが破壊される音も聞こえれば、人間の叫び声も聞こえてくる。
で、なんかでかい蛇が襲っている様子も見える。
「うへぇ、ほんとにやってら」
私は参戦すべく戦いが起きているであろう前線に向かう。
兵士たちが侵攻を必死に食い止めてはいるがあちらの人数が多いのか押され気味だった。プレイヤーも見かけてはいるが軍の強さに押されている。
しょうがない。
「ハイドー!」
「ガル!」
私はハイドを召喚する。
「あの兵士たちを助けてあげて。暴れたいでしょ?」
「ガル……ガル!」
寒いというような顔をしたが、暴れたかったのか分かったと言わんばかりに鳴き、戦いに向かっていく。
私はあの蛇を何とかしなくちゃな……。見た感じ魔物……。かも?
私は蛇のところに向かうとき、突然現れた。
空中から誰かが落ちてくる。竜に乗った大柄の男が私の前に立ちふさがった。大柄の男の手には大剣が握られており、私を殺そうとしていた。
私はすぐさま爪を装備し、まずは竜を爪で切り裂く。
「私を殺してみろ! オラァ!」
弱い。
野生の竜ではなく人間が育てた竜だというのもあるだろう。野生の竜よりはるかに弱い。
ドラゴンが使えなくなったのを見て、男は大剣を持って地面に降り立つ。
私の身長くらいある長さの大剣を目の前で構えていた。先ほどのなめ腐ったような顔ではなく、油断できない相手とみられたようだ。
「なに、なんか私に恨みでもあるの?」
「恨みはないがこの国に使える戦士はみな敵だ。バルムーント竜騎士団副団長オリバー、押してまいる!」
オリバーと名乗った男は大剣を振り下ろす。
私は躱し、男の懐に潜り込んだ。爪で切り裂く。男の体力がごっそりと削れて地面に倒れ伏せた。
立ち上がろうとしているが体が限界のようでそのまま動かなくなったのだった。
「余計な奴で時間を……」
その時だった。
倒したはずのオリバーがなぜか起き上がっていた。オリバーは頭を抱えうずくまる。
「うあっ……!」
と、オリバーの体から何やら黒い靄が出始めた。
黒い靄はオリバーの周囲を包む。
「うあああああああああああ!!!」
その黒い靄はオリバーにとりついた。
影のように黒く染まり、赤い目をこちらに向ける。地面に落ちた大剣を拾うとその大剣も黒く染まっていく。
どうなってるんだろう? 私はまた戦闘態勢を取る。
すると、男は一瞬で私に距離を詰めてきた。
「身体能力が上がってる……?」
こんな素早くなかった。
私はびっくりして反応が遅れてしまったが危なく躱す。オリバーは大剣を薙ぐ。そしてそのままぶんぶん大剣を振り回していた。
剣を振りおわった後隙がなくなっている。切って、また切っての繰り返しだった。
「自分の武器で受け止めろってことね! 格段と戦闘能力アップしやがって。羨ましいぞこの野郎」
私は爪で大剣をつかむ。
大剣を力づくで奪い後ろにぶん投げれた。そして、オリバーの顔をつかみ地面にたたきつける。
オリバーは叫び声しか上げなかった。耳をつんざく悲鳴が響き渡る。
「もう動かないだろ……。それにしても倒したのに何でまた起き上がったんだろ」
しかも起き上がった後は格段と身体能力がアップする状態で、だ。
何か不思議なことが起きているのかもしれないな。それにこの状態になるのはコイツだけじゃなくほかの奴もなるということかもしれない。苦戦するのは理解できる。
「もう動く気配もないし二回倒さなくちゃならなさそうだな」
私はまた再び蛇に向かって走り出した。




