レオンハートは救われたい
王は神獣たちの血液で作られた解毒剤を飲み一命をとりとめたらしい。
今さっき王子が事の顛末をすべて話してくれた。
そして、目の前にいる暗殺者が雇い主などのことを全部洗いざらい話してくれたらしく、あちらの国に圧力をかけるつもりらしい。
このままだと戦争をしてもいいと。あっちの出方次第でどうなるかは変わるらしい。
「で、そっちの暗殺者はどうなんの? 処刑?」
「殺すのは惜しい。腕は確かだからな。だがしかし、我々の影になってと頼んでも首を横に振るのみだ。どうやらやりたいことがあるらしい」
「やりたいこと?」
「それはお前自身の口から説明しろ、レオンハート」
「わかったよ」
暗殺者の名前はレオンハートというらしい。ずいぶんとかっこいい名前だな。
「その、俺っち、ミーミルさんのところで働きたい。ミーミルさんが神獣の血を用意してくれなかったら俺っちは皇帝殺しの罪を背負わされてそこの王子に処刑されてたと思うし、命の恩人でもある。だから、恩を報いたい」
「仇で?」
「忠義を誓う。隷属魔法をかけてもらってもいいよ」
と、私にかしずいてきた。
隣に座ってるミカボシたちはぽかんとしているが。ミカボシたちはこちらに視線を向けあとで説明しろと目で訴えている。いや、その時いなかったお前らが悪いだろ。
「俺の城の衛兵を一人で屠ることができるやつだ。戦力としては申し分ないだろう」
「鍛え方が足りないんじゃない?」
「俺っちが特別なだけだよ。そういう方面にもともと才能あったから。ほら、天才ってやつ。俺っちの父さんもじいちゃんもみんな裏稼業で暗殺を専門としてるんだよね」
「へぇ」
「父が暗殺者、母さんが女の竜騎士団長なんだ」
うわ、すげえ。
親が親なら子も子ってことか。血は引き継がれるんだなぁ。すげえハイスペックなサラブレッド生まれてやんの。
そりゃ強くなるわ。
「俺の騎士たちも戦意喪失していてな。たかが一人を倒せないなんてという自責の念が強いものもいる。今回の事件は本当にいろんな傷を残したがレオンハートの処刑は何とか免れることができた」
「ほんとありがとー。王子様もミーミルさんも」
「気にしないでいい。そういう約束だったから俺は精いっぱい手を尽くしただけだ」
王子はそういう。
が、なんか気になるのだ。未遂とはいえ暗殺しようとしたのだ。悪くても終身刑……。平民ならすぐにでも処刑されそうなものだが。
どういう条件でこいつは極刑を免れた?
「ねぇ、聞きたいんですけどどうやって死刑を免れたんですか? 暗殺未遂まで起こしておいて何の罰も与えず釈放するとは考えにくいんですが」
ミカボシも気づいていた。クシナダはぽかんとしているが。
「あー、それはだな。君たちが監視していてくれということだ。自分より実力が超あるやつがいたらさすがに大丈夫だろうと」
「それダメじゃね? 超緩くね?」
「まぁ、王家に逆らえぬようしばしは隷属の紋章をつけることとなっている。国や王族に対して危害を加えるようなことをしたら気絶するくらいの痛みが走る」
「あー、でも私たち一生この国にいるってことはないですよ? 数か月したら多分あっちの大陸に戻りますし」
「その期間だけでもいい。雇ってくれはしないか?」
ミカボシは考えていた。
どうすべきかと。だがしかし、こういうのって前例がないわけじゃない。犯罪者というならばアニキスだってそうだぞ。脱獄した元詐欺師だ。
悩むのは今更じゃない?
「ま、いっかぁ。強いやつがいるっていうのは歓迎することだしね……」
「私も暗殺術ちょっと教えてもらお」
「ずるいぞ。私も教わるのだ」
「俺っちでよければ教えてあげるよ。魔物討伐にも使えるような技もあるし活用してほしいな」
ということで、暗殺者が仲間に加わった。




