揺らぐ国家、喜びの国家 ②
王は魔法で傷をいやされている。が、まだうめいている。
すると、取り押さえていた男が目を覚ました。
「あれ、俺っち……」
「よ」
「げ」
と、私を見るなり顔をしかめる。
「おはよう」
私があいさつをすると暴れて抜け出そうとしてくる。私は精いっぱいの力を込めて地面に体を押し付けていた。
力でかなわないと思ったのか抵抗をやめたのだった。
「で、俺っちをどうするわけ? 処刑する? 奥歯に仕込んであった毒も抜き取られてるし自害できないじゃん」
「それは皇帝の裁量次第じゃない? っていっても、王は今毒で苦しんでるけどね。ねぇ、毒って何の毒使ったの?」
「話したら見逃してくれる?」
「私は別に恨みなんてないし」
「……ま、いっか。どうせ戻ったら依頼不達成で口封じのために殺されるかもしれないし、どうせ死ぬんなら嫌がらせしてやるよ」
と、諦めたように笑う。
「あれは神獣の毒。だから解毒剤なんてものはこの国にはないんだよねー」
「しん、じゅう……?」
王子はその言葉を聞いて暗殺者に詰め寄ってくる。
「おかしいと思ったのだ。ありとあらゆる毒を摂取し抗体を作っている皇帝が毒に侵されるなど……。神獣の毒、なんてものを……。仕込んだのは誰だ。お前の後ろには誰がいる?」
「うすうす気づいてるんじゃないの? 多分その考えであってるよ」
「……やはりバルムーント王国か」
「あはは。ご名答」
「それよりもう一つ聞かせろ。解毒剤はどこにある? どこの国にある?」
「それ聞いちゃう? 解毒剤つってもどこでも作れるわけじゃないよ。素材があれば俺っちは作れる。けど、素材がないんだよ」
「素材?」
神獣の毒の解毒剤の素材……。
割と難易度高そうだなぁ。なんて思いつつ、私は男の次の言葉を待った。
「神獣七匹のうちの三体の血液だよ……。どの神獣の血液でもいいんだ」
「……」
王子は絶望したような顔をする。
「その血液を24時間以内に集められる? 無理でしょ? だから死ぬしかないんだよ」
「無理、だ」
「無理じゃないよ? 当てならある」
「本当か!?」
「嘘、マジで?」
「マジマジ」
私は神獣三体ならすぐに集められるだろう。
「……ねえ、王子。交換条件といかないかい?」
「なんだ」
「俺っちは解毒剤を作る。だから、俺っちを殺さないように掛け合ってほしい」
「……背に腹は代えられん」
「あれ、すぐに受け入れてくれるの?」
「お前が裏切らなければ俺は裏切らん。父上の救出がまず先だ。とりあえずミーミル殿。頼めるか?」
「おっけー」
私は身柄を王子に手渡した。
私はフレンドでログインしているパンドラさんとデコイさんを呼び出すことにしたのだった。幸運なことに二人とも今現在ログインしており、二人ともアイスマクス帝国にいることは把握済み。
ま、緊急クエスト完全クリアを目指すなら皇帝を殺すわけにはいかないもんね。




