帝王を目論む者
アルミラージを討伐し終え拠点に戻るとパンドラさんたちがいた。
冬装備で身を包んでいる彼女たちはとても大人っていう色気がある。特にワグマさん。
「どしたんすか?」
「いや、ミーミルちゃんの力を借りたいなって思ってさ」
「私の?」
パンドラさんが私の力を借りたいという。
パンドラさんぐらいなら割と一人でもなんとかなりそうな気はするがそれでも私に力を借りたいっていうことは割ときついのかもしれないな。
私は話を聞いてみることにした。
「さっきアルミラージが帝都の中にあふれ出たでしょ?」
「ああ、さっき一匹は討伐してきましたけど」
アルミラージがどうかしたのだろうか。
「そのアルミラージ、なんで帝都に湧いたんだと思う?」
「え? なんでって……」
たしかになんでなんだろうな。
普通ならあり得ない。この帝都の中でアルミラージが生息していたということはないだろう。あの大きさだしすぐに見つかる。
となると外からやってきたと考えるのが自然か? 誰かが手引きしたということか?
「……誰かが帝都に連れてきたとか」
「正解。私は今からその帝都に連れてきた人たちをぶっ殺しに行くんだけどさ」
「はぁ。その犯人の目星はついてるんですか?」
「もちろんよ。知ってるかしら。アマノサキ親衛隊って知ってるかしら?」
え、なにそれ。
「アマノサキ……は配信者の名前よ。かわいい女の子なんだけどね。その親衛隊が彼女を王にしようとしているの」
「はぁ」
「彼女自身も乗り気のようだ。そのためにアルミラージを放って帝国に混乱を招きその隙に帝国を乗っ取る下準備をするそうだ」
ほえー。
「詳しいですね?」
「ま、懐に潜り込むのは簡単だからねー」
パンドラさんが悪い笑みを浮かべる。
「帝国を乗っ取るってなかなかスケールがでかいっていうか……。でもパンドラさん、なんでそのアマノサキっていう子が帝王になるのを止めるんですか? 別に放っておいても……」
「プレイヤーが王になるなんてばかばかしい。あいつらのアマノサキが一番という考えをへし折ってやりたいのさ。それに、あいつらはワグマに喧嘩を吹っ掛けたからね。ならこちらも最高戦力で挑むんだよ。一生ゲームできないくらいのトラウマを植え付けてやるさ」
悪い笑顔ここに極まれり。
「たかだかいち配信者ごときが私の友人を泣かせるなんていうのはほんとに腹立つ。ミーミルちゃんはわかるでしょ?」
「まあ、たしかに」
どうやって泣かされたのかは気になるが。
「だから手を貸してくれないかな? 越えられない壁というのを見せつけてやりたい。ああ、処刑人に関しては気にしないで。ちゃんとエーデルさんには許可もらってるから」
「手回し早いですね」
「まぁね。迅速的に徹底的につぶしたいから障害となるものはつぶしておく必要があるのさ。準備はいいかい?」
「あ、参加は決定なんですね……。まあいいですけど」
さっきアルミラージと戦ってきたばかりなんだが。
まあいいさ。やるしかない。パンドラさんにはお世話になってるしね。




