ちょっと厳しすぎるんじゃないの?
私たちは一度拠点に戻ることにした。
拠点に戻るとクシナダとミカボシがなにやら言い争いしているような声が聞こえる。
「さすがにヘルベアーはあのレベルできついだろ。鑑定してみたらレベル29だ。私じゃ勝てないぞ」
「それはそうだけど…でも…」
「昔の事、まだ引きずってるのかよ。大丈夫だって」
という声が聞こえた。
私は中に入るのを辞めておく。後ろには二人がいるので二人にとりあえず喫茶店かどこかに行こうと促し、私は二人だけを喫茶店に送った後拠点に戻った。
「よーっす」
「ミーミル…」
「え、なんで泣いてんの」
少しばかり目を外したら泣いていた。
「ミーミルゥ!」
「ちょ、いきなりだきつくな」
ミカボシは私に抱きついてくる。クシナダはやれやれといったように肩をすくめている。一体何があった。なんで泣いてるの?
私は目でクシナダに聞くと、クシナダは席に座る。そして席に座るよう促した。
私は席に座る。
「ま、ミーミルは過去を知らないからな。なんで泣いてるのかは見当つくはずもないか」
「私が越してきた小学校5年生前の出来事?」
「まあ、そうだな」
小学校五年の時にこちらに越してきて今六年目だか五年目かになる高校一年生だ。当然小5以前のことは私には知る由もなく、なんとなくなにかあったんだろうなとは思っていたが聞くことはしなかった。
「ま、話したくないことなら聞かないよ。てかミカボシよ、今のお前は調子に乗ってるクシナダよりうざいぞ」
「それはなんか嫌だから離れる」
「おい。どういうことだ」
クシナダはぎろりと睨んでくる。私はそれに笑みで返した。
「とりあえず試験はクリア不可能。実力が足りてない。ヘルベアーは私が倒しました」
「そう」
「もう少し緩めてもいいんじゃないの? さすがに一回倒すってだけならまだしもレアドロップを二つはやりすぎだって」
私はそう言うと考えるようなしぐさをとる。
「そう、だね。うん。じゃ、じゃあ一回倒すだけでいいよ。ミーミルも最低限の手助けはしていい」
一気に緩くなったな…。
まあそれなら大丈夫だろうな。私が手助けするなら大丈夫だろう。主に戦うのはあの二人だが、攻撃力ならたぶんなんとかなる。
「はいはーいっと。って言うか入ってきたとき気になったんだけどこの木の残骸はなに?」
「ああ、アマノイワトの看板を作ろうと思ってな。その残骸だ。ふっ、できたぞ。これだ!」
と、アマノイワトとダサいデザインの看板。
私は思わず…。
「ダサい…」
「なあ!? かっこいいだろう!? 闇を封じ込める光の戸アマノイワトって!」
「クシナダ…。それは私が見てもちょっと…」
「敵ばかりだ…」
それって二つ名じゃん。
ここはバーだしバーのような看板を立ててひっそりとするのがいいんじゃないの? その方が雰囲気的にはあってるしな。
隠れた名店みたいにするのもいいし。
「んじゃ、私行ってくるから二人は看板作り頑張って。なるべくクシナダに任せないように」
「私が考えるよー!」
「私じゃ不満か!? おい! 私のこれのどこが悪いのだ!」
「いやもう全体的に禍々しくて近づきがたいでしょ…。正直言ってこれを出してたらあの子たちも絶対来なかったよ」
うん。たぶん軽くホラーだし。
私は二人が言い争う声を聴きながら喫茶店へと向かうのだった。




