シスターは感謝する
突如として謝られたシスターは困惑していた。
「いやぁ、昔暇だから運命をさりげなく見てたら間違っていじくっちゃって。目の病気にしちゃって目をみえなくさせてさ……。てへっ」
反省している様子を見せないヴァルハラン様。
対するクロノス様は怒髪天を衝く感じに怒っている。ヴァルハラン様を背後から思い切りぶんなぐっていた。
「手違いで目を見せなくしておいてそれを私たちに隠した挙句反省もしてないっていうのはどういうこと?」
「ああ、ごめん! 反省はしてるってえ!」
「あ、あの。じゃあ私の眼が見えないのは主のおかげということでしょうか」
「申し訳ないって思って割と幸運な運命にしたんだよぉ! 幸せでしょ? ねえ?!」
そう言ってヴァルハラン様はサンフラワのほうを見る。サンフラワは今の状況がいまいちの見込めてないらしくきょどっていた。
クロノス様はさらに目つきを鋭くさせる。
「は、はい。確かに幸せです。目が見えないことで主が私を導いてくれてるので」
「……」
そういうと、クロノス様は乱暴にヴァルハラン様を解放した。ヴァルハラン様は地面に頭を打ち付け少し涙目になってこっちに向かってくる。
「本当にごめんね。幸せならそれでいいんだけどさ」
「はい。目が見えないハンデはあっても幸せです。なのでその、クロノス様は何も悪くありませんから」
「君はこんなダメな女神でも許してくれる寛容さがあるんだね。それじゃ、お詫びと言ってはなんだけど……私からの祝福を授けよっか」
そういって手をかざすとサンフラワは光に包まれた。
その光景に見とれてしまう周囲の人と私に抱き着いて泣きわめくヴァルハラン様。よほど怖かったんだろうか私の胸にうずくまって泣いている。
「こ、この暖かさは……」
「君はもう今後どんな病気や厄災からも守られるよ。君は寿命が尽きるまで健康のままさ」
「あ、ありがとうございます! こんな加護をもらってしまってうれしい限りでございます」
と、サンフラワの眼から涙がぽたぽたと。サンフラワの眼が開かれた。目が見えないせいか白目をむいていた感じだったが……。
「私、クロノス様を信仰していてよかったです。今日、クロノス様に会えた日が一番の褒美です。今日という日を一生忘れません」
「あはは。私たちも忘れないでおくよ」
「ほ、ほんとにごめんね」
泣き止んだヴァルハラン様はサンフラワのほうを向きぺこりと頭を下げる。
「んじゃ、私たちは帰るよ。ごめんねお祈りの最中に。祈られてる私が言うのもなんだけどね」
そうして二人はまた光に包まれ店に戻っていく。
そして、一瞬まばゆく光ったと思うとその次に目を開けた時には二人はいなくなっていた。ぽかんとする学校の生徒と神父、ほかのシスター。
私が来るのを見計らってきたとするとこの後始末は私がやれと?
「す、すごいことだ! 主が降臨しサンフラワに加護を与えたぞ!」
「帝王様に報告せねば! 主は私たちを見ていてくれたのだ!」
「すっげえ、神様はじめてみたぜ……。あの神々しい雰囲気、そして人間とは思えねえ魔力の質。あれは本物だぜ……」
本物の神に出会えたという熱は当分冷めそうにもない。
「み、ミーミル様!」
と、サンフラワが近づいてくる。
「はいはい?」
「ミーミル様のおかげで主に出会えました。感謝いたします」
「あ、いや、私のおかげってわけじゃないと思うけど」
「いえ、きっと主はミーミル様がいるから降臨なされたのです。一生に一度の貴重な体験をさせていただき本当にありがとうございますっ」
と深々と頭を下げてきた。
もとはといえばあっちの責任だしいずれかは姿を見せてたとは思うが……。まぁなにいってもわかってもらえなさそうだしそういうことにしておこう。
「どういたしまして。祈りはもうおしまい?」
「多分そうなるかと思います。ミーミル様がよければこの後の学校の見学も……。いえ、数時間後に皇帝から呼び出しがかかるでしょうから見学はできませんね」
「皇帝? え、呼び出されんの私」
「皇帝様も敬虔なクロノス信徒なのですよ。主のご尊顔をお目見えし、加護をかけられたとならば話を聞きたがると思いますから」
「なるほど。で、私はなんで?」
「運命神様の眷属だからですね」
眷属だからって呼び出しかかるのか。
「サンフラワ、運命神の眷属殿。今より城に向かうぞ!」
「はい」
「あ、今から謁見なのね……」




