空回りして乱反射して ②
私がそう切り込むとそうだが?と言ってくる。
「……シャーロットの部屋に入らないのは?」
「部屋に案内ってのは……その、こうすることだろ?」
と、左手でわっかを作ってその中に指を通す。
スケベか?
「だから俺は結婚するまでは入らないって決めてる」
「……じゃあ目をつむりながら歩いてたのは?」
「歩く姿もかわいらしくて直視できない」
「スケベで初心かよ」
これ相当惚れてんな。
「じゃあなんで私といるときそわそわしてんの?」
「恋人を差し置いて女性と二人など不義理であるからしてだな
馬鹿だコイツ。
「学校でシャーロットとは話してる?」
「いや、話しかける勇気がなくてついつい話しかけられなくてな、素通りしてしまう」
……。
なんだ。悪いのはやっぱこいつじゃねえか。私はため息をついて今の現状について説明してあげることにする。
現状が最悪だということを知ってもらわねばなるまい。。
「なあ、余計なお世話かもしれないが」
「なんだ?」
「シャーロットはノアに嫌われてると思ってるぞ」
そういうとショックを受けたような顔をしていた。そして私の胸ぐらをつかんでくる。
「お、俺のどこがいけないんだ!?」
「馬鹿か? 学校では無視され、部屋に案内しても断られてっていうのは嫌われるだろ」
そういうとノアはダメージ受けたようにのけぞる。
恋愛に関してはほんっと不器用だな。恥ずかしいからこそ空回りしてるっていうか。もう少し男としての余裕を持ったほうがいいのではないだろうか。
「それに、あんた学校内免責者の一人なんだろ? そんなえらいやつに無視されたとなりゃ学校でも嫌われるだろ。なにか嫌われるようなことをする奴だって」
「うぐっ」
「彼女は私にこういってきたぞ。あなたは誰にでも好かれるんですねって。これ裏を返せば自分は好かれないってことだろ。あんたが恥ずかしがるせいでシャーロットは人知れず傷ついてんだぞ。ちゃんとしろ」
私がそう言うと。突然、ノアは駆け出していく。
ノアを追いかけるとシャーロットのところにいた。ノアは何かを決心したかのように顔を決め、シャーロットの手をつかむ。
「シャーロット!」
と大声で呼ばれたからかシャーロットは何も反応できずにいた。
「俺の行為が君を傷つけてしまった! 本当に申し訳ないっ……!」
「へ?」
「君の友人に言われて目が覚めた。俺は影響力がある。俺が嫌ってるようにふるまえば周囲は君を嫌うことを。愚かだった。自分が恥ずかしい」
「お、お顔をおあげください」
「だが、これだけは君に言わせてもらう! 俺、ノア・アレンはシャーロットは嫌いでないと! むしろ、惚れている!」
「……っ!?」
そう言われてシャーロットは顔を茹でたタコのように真っ赤に染め上げる。
「君に話しかけられても恥ずかしくて無視してしまった。俺は誰かに惚れるというのが初めてでどうしていいかわからなかった。こんな情けない婚約者の俺だが、婚約は破棄しないでほしい」
「……ほ、ほんとに私が好きなんですか? 昔、私に可愛い女の子以外は好きじゃないといっておふりになったではありませんか」
「それは誤解だ! 君のようなかわいい女の子としか付き合いたくなくて……」
「要するにお前は可愛いから付き合おうということじゃ?」
「そ、そうだ! 雑誌かなんかで相手の気を引くためにはおしゃれなことを言おうって書いてあってな」
「それを実行した結果裏目に出て自分にコンプレックスを抱くようにさせたとかほんとに馬鹿だな」
解釈の違いということだ。ノアは受け入れたつもりだったがシャーロットは拒否されたと思ったようで自分がかわいくないと思い込んだらしい。
なんとも馬鹿だからこそ空回ってそれが反射し続けてたんだなぁ。
「こんなバカな俺を許してくれ。俺は馬鹿だから賢い君が隣にいてほしい」
「……はい。許します。よろしくお願いします」
と、シャーロットはノアの手を取った。
あー、いい仕事した。
「ま、お二人さん。私をお忘れですよっと」
私の前でイチャイチャすんなよ。




