Welcom to England ②
私はシャーロットが住む屋敷へと案内された。
イギリス国内でも割とでかいほうなんじゃないかと思うぐらい広く、庭もまるで有名な庭園のように整備されている。
だが気に食わないのはなんだか人気がないところというか。
「きれいな庭園でしょう? 私好みに整備してもらったんですよ」
そういって笑うシャーロット。
「奇麗だね」
私はそう言って少し感じていた違和感を気にしないことにした。
きれいなものはきれいだった。そんなに風景とか気にしない私でも思わず見とれてしまうくらいには自然としての美がある。
「うちの自慢ですから。ここだけは私がこだわらせていただいたんですよ」
シャーロットがそう言った瞬間、横のほうからワンワンという鳴き声が聞こえてくる。そちらに視線を向けるとでかい犬がシャーロットにだきつき尻尾を振っていた。
犬種はゴールデンレトリバーだろうか。人懐こいのか私のほうに気づいて私のほうに駆け寄ってくると撫でてと言わんばかりに尻尾を振る。
「珍しいですね。その子はそこまで人になつくような子じゃないんですが」
「そう? 普通に撫でさせてくれてるけど」
「あなたは動物に好かれるんですね。その子は人一倍警戒心が高く知らない人が来たら逃げるか吠えるんです」
「へぇ」
まぁ歓迎されてるようで何よりだ。
「ちなみに名前はなんていうの?」
「ゴールドです。ゴールデンレトリバーだからゴールド」
「ほえー。ゴールド。ちょっとの間お邪魔するね」
私はゴールドの名前を呼びつつ毛を撫でる。
もふもふとした毛が手にまとわりつく。温かい。ゴールドは嬉しそうに尻尾を振り目を細める。撫でるのをやめてみると私の手にすり寄り名残惜しそうにすりすりしてくるのでまた撫でてやる。
「やっぱりあなたは誰にでも好かれるんですね」
「なんかいったか?」
「いえ、何でもありません」
そういってシャーロットはゴールドに近寄る。
「ゴールド。せっかく来てくれたのにここで引き留めては風邪をひいてしまうのでそこらへんにしておきなさい」
と優しい口調で言うとゴールドは私の手から離れていく。
「では中に入りましょうか。外は寒いですから」
屋敷の中も割とでかく、お嬢様らしくメイドガイるようだった。
メイドが私たちを出迎えてくれる。
「来て早々悪いんですがトイレってどこですか?」
「こちらでございます」
私はトイレに案内してもらう。
別に催してるわけじゃないがちょっと考え事をしたいだけだ。やっぱり先ほどの違和感、さっきのシャーロットの言葉が気になる。
聞こえてなかったわけじゃない。これでも割と地獄耳でさっきの言葉は聞こえていた。「あなたには誰にでも好かれるんですね」と。その時のシャーロットの顔は諦めか、それとも私への羨望か。あるいはそのどちらもの感情が混ざったものだったか。
「……また厄介な悩みを抱えてるってことか。思春期だから仕方ないかね?」
悩めるうちに悩んでおけばいいが私がいるときにその顔はしてほしくない。割と第一印象はよく、友達としても付き合いたいとは思っているぐらいだからそんな悩みは忘れてもらいたいものだ。だが、人間はロボットじゃない。理論やプログラムだけじゃなく感情でも動く。
「ま、なんとかなるだろ」
私の座右の銘はなんとかなる。考えるのめんどくせ。
「アテナ様、なかなか出てきませんが体調でも悪いのですか?」
「ん、いや、割と威勢がいいやつが出てきてな。今身の程をわからせてる」
「お、お下品です!」
「ははは。ま、大丈夫だってことだよ」
お嬢様はお下品が嫌いと。
クリスマスなのに最後お下品で謝るしかない




