木戸くんも始めるらしい
私たちは家電量販店に行くと、見知った顔が一人ヘッドギアのコーナーでにらめっこしていた。
「どしたの木戸くん」
「ん? ああ、ちょうどいい。お前らもVRMMOやってるのか?」
と、木戸くんはそう聞いてくる。
興味津々のようだ。これは広めるしかあるまい。
「もちろんだとも! これでも有名プレイヤーだからねっ!」
「そ、そうか。お、俺も始めようと思ってヘッドギアを買いに来たんだがこんなに種類あるのか? どれがいいんだ? おすすめはあるか?」
と、木戸くんはそういってくる。
三日月がうーんと一緒に木戸くんとにらめっこしていた。それにしても木戸くんこういうのやってなかったんだ。
いや、たしかにやらなそうなイメージだけど……。でもなんで今更?
「なんで今更始めるの?」
「いや、こういうのが流行ってるって聞いてな……。それに、雪斗もやってるらしいからな……。妹もやってるって聞いて俺だけやってないのもなんか嫌だな、と思って」
「別に流行に乗らなくても……。ま、やりたいんなら否定はしないけど」
「純粋な興味もある。だが値段が値段で手を出せなかったんだ」
「まあ、この値段は勇気いるよねー」
木戸くんは本当に堅実だからこういう大金を使うことはほとんどないのだろう。
私なんか割と湯水のごとく使ってるような気がしなくもないがそれは両親が稼いでくれてるおかげ。恩恵に授かれるうちは授かっておこう……。私って悪党かなぁ?
「俺としては安いのがいいのだけど、でも、安いのって性能がうんたらかんたらって聞くしどうしようかと悩んでたところだ」
「安いのはダメだよ。性能が本当にダメ。長持ちしないし」
「そうか……」
「私のお勧めはこれかな」
一つの商品を手に取る。
こういう店では実物じゃなくカードを置いておりそれをレジに持ってくと交換してくれるという仕組み。
だから実物は見れないのだが……。
「おすすめって言っても最新のなんだけどね。やっぱり買うのは最新のやつがいいよ」
「でも高い……」
「新しいのはみんなそうだって。でも、こういうのってやっぱ新しい分いろいろと機能とかも追加されるし性能も格段にあがってくんだ。新しいの買わない手はないよ」
「……わかった」
といって、その最新のヘッドギアとゲームカセットを手に取る。
アンクロを手に取った彼はレジに向かう。私もその最新のヘッドギアのカードを手にし、レジに向かうことにした。
財布の中を確認。
来るときにおろしてきたから割とあるが……。最新のはやっぱ高い。私が買ったのよりは安いがあれは大会で使われるような本格的なやつだからなぁ。比べちゃいけない。
私はヘッドギアを受け取る。
ヘッドギアの値段はなんと18万。高校生にしては本当に大金の大金であり、そんなポンポン買えるような代物じゃない。
携帯でももっと安い。
「助かるぞ、ありがとな……。アテナには助けられてばかりだ」
「気にすんなよ。友達なんだから」
「……友達でも気にするものは気にするぞ」
「……ま、どうしても気になるんなら足りない分は体で払ってもらうしかないね」
「持つべきものは友達だな! 助け合いの精神だ!」
タダの冗談を本気で捉えるな。
友達相手だと財布も口も緩いアテナちゃん
 




