ミーミル曰く燃えよテンション
村を襲った魔物を倒したと報告するとすごい喜ばれた。
お礼としてなにやら村秘伝のスキルナイフをもらった。どうやらこれだけは取られないように村長が持っていったようでいざとなったらこれを誰かに使って戦わせるみたいだったようだ。
そのスキルナイフは虹色に光っており、結構レア度が高いスキルみたいだ。
「さて、気を取り直して魔王城いっくぞー!」
私はハイドを呼ぶが応答はなかった。
どうやらハイド側は今呼ばれたくないらしい。というので村長から馬を借り走らせることにした。私は鞍を馬につけ、馬にまたがる。
手綱を持ち、そして、馬を走らせる指示を出す。
「それじゃまた馬を返すときに寄りますね!」
私はそう言って走り出す。
馬だと何時間かかるだろうか。ハイドの速度で慣れてるせいかこの程度だとちょっと遅く感じるな。地図だとまだ結構遠いから馬だと一日以上はかかるかもしれないが……。
「ちょーっと全力で飛ばしてこうね、へポちゃん」
私は馬の首筋をなでると馬は嬉しそうにいななく。
乗馬は久しぶりだ。ゲームでもそんな最近乗った記憶がないな。ヴァイギング以来か? 現実でも乗馬してみたいが……。現実ならもう数年前になるんじゃないだろうか。おじいちゃんたちが活きていた時代だから……最後乗ったの。
私が馬を走らせていると、なにやらプレイヤーの集団がいた。
駄弁りながら歩いているようで、通行の邪魔になっている。PKするわけにもいかんので私は馬を止め、話しかける。
「あのぉ、すいません、通してもらえませんか?」
「あ、すいません。道塞いじゃってました」
「何してんだよお前」
と、笑いながら男の子は仲間を責める。仲良さそうだなー。なんて思っていると、一人の男の子が私の顔を見て何かに気づいたようだ。
「あ、あのー、つかぬ事をお聞きしますが」
「ん?」
「あなたってトッププレイヤーのミーミルさんでは……」
「あー、そうよ。私ミーミル」
自己紹介をすると、中学生らしきプレイヤーはうえー!と驚きの声を上げた。
「すごい! こんなところで会えるなんて!」
「あ、あの、サインください」
と、言われたのだった。
サインって。そんな有名じゃないんだけど? 有名人でもなければそんなサインあるような人じゃないし。
高ランクプレイヤーは憧れの的なんだろうか。
「サインなんて私持ってないっての……」
「す、すいません!」
「あ、あの、一ついいでしょうか!」
と、びしっと背を伸ばしてそういってくる。
「あなたみたいに強くなるにはどうしたらいいでしょうか!」
という質問が飛んできた。
強くなるには? 強くなるには、かぁ。私の戦闘スタイルって基本適当だからなぁ。私を構成するのはその場のノリとテンションだ。わりとマジに。
割と普段からテンションが高い方なので強さは保ててるがテンション低くなったら割と弱くなるんだよな。
だからこういう風にすればいいとかいうアドバイスはマジでない。
「……ま、基礎をしっかり?」
「基礎をしっかり! わかりました!」
「何事も基礎からって言うからね……」
基礎を出来てないとなにもできないのは本当。
アドバイスではないけど。当たり前のことだし。
「そ、それじゃ私もう行くね。ばいばーい」
「はい! ありがとうございました!」
と、私が馬を走らせるとその後ろで列になって頭を下げていた。
ザ・日本人って感じで礼儀正しいなぁ。




