神のオオカミ ②
フェンリルという狼は北欧神話に登場するオオカミの形をした怪物がモチーフなのだろう。
真っ白い毛並みだが、爪や牙が鋭く、こちらを威嚇している。
フェンリルはこちらに素早く距離を詰めてくる。
狙いを私だけに定めたらしい。私だけを眼中に捉え、牙をむき出しにしてくる。そのまま噛みつこうとしてきたので私は懐に潜り込み一発ぶちかました。
ジキルタイガーよりは楽だという感じが本当にすごい。
ジキルタイガーよりは無理ゲーじゃなさそうだ。
フェンリルは私の一撃を食らい、少し怯んだが、こちらをぎろりと睨みつけるとそのまま私にかみつこうとしてきたので思わず躱す。
「っぶねえ、私一撃でも食らったら死ぬっての」
神獣化はこの大衆の目では見せたくないからしないで戦うしかない。
闇の二面性も目立つだろうからここは流星武闘だけで戦うしかないか。自分の実力だけで戦うって言うのは割と無茶だな。
私自身スキルの効果もわりと大事にしてるからステータスがそこまで上がらないのが辛い。
「ガルル! ガアアッ!」
と、フェンリルに突然鎖が飛んでくる。鎖はフェンリルの体に巻き付きフェンリルが拘束された。
拘束魔法をかけた人を見る。なかなかの手練れのようだがこれは悪手だ。ヘイトがそっちに向かったような感じがある。
フェンリルはその鎖を飛ばした男の方を見る。
「ガルルガゥ!」
と、鎖を引きちぎったのだった。
「なんだと!?」
「ここは私に任せてくださいっての! 下手に手を出すとそっちがやられますからね! オラァ! お相手は私だろうが浮気すんな!」
私はフェンリルを再び殴りヘイトをこちらに向ける。
フェンリルが吹っ飛ばされ、木にぶつかり木が折れる。だがフェンリルは体勢を変え、木に着地したかと思うとこちらに向かって勢いよくとびかかる。
そのまま前足で私が叩かれるところだったが、済んでのところで避けたのだった。
「神獣化とかがないと割とつらいぞこのフェンリル!」
私はそうこぼしながらも、フェンリルの体毛を掴み、自分の体を引き上げる。そして、フェンリルの上にのしかかった。
フェンリルは振り払おうと暴れまわる。
「どおどおどお!」
私はジキルタイガーのナイフを取り出し、フェンリルに突き刺した。
ジキルタイガーのナイフがものすごく痛かったのか暴走はさらに激しくなっていく。振り落とされるわけにはいかないのでそのまま捕まってジキルタイガーのナイフを突き刺していくが、フェンリルは思い切り木に体をぶつけようとしていた。
私は手を放し、そのまま地面に着地すると、そのままフェンリルの前足が飛んでくる。
「やべ……」
「ガルルルル!」
私は前足の攻撃を思い切りくらい吹っ飛ばされた。
体力がごっそり持っていかれた。何とか死ななかったが体力が1まで減った。私はポーションをがぶ飲みし体力を回復させる。
その間にフェンリルも私に距離を詰めてくる。
私は飲み終わった瓶をその辺に捨て、フェンリルに詰める。
「もうミーミルちゃん本気出すもんねー!」
私はスライディングで懐に一気に潜る。そしてそのまま蹴り上げて上空に弾き飛ばす。
めっちゃ重い! そんな飛ばなかったが、それでもいい。私はジキルタイガーのナイフを構えてフェンリルを見る。
フェンリルは空中で体勢を整え落下と合わせて私を倒すつもりらしい。
私はジキルタイガーのナイフを投げたのだった。
そのナイフは、フェンリルの心臓部分に刺さる。
「ガルッ」
フェンリルは口から血を吐き、そのまま地面に落下してきたのだった。
そして、少しの間気絶し、そのまま塵となって消えていった。
「勝ったのは、私ですな」
ジキルタイガーのナイフを回収し、ドロップ品を拾った。




