暴力的な神様
教会のすぐ横に光のヒビみたいなのが確かに存在していた。
ヴァルハラン様は神様だからこそ場所が分かるのかもしれない。神の怒りとかいっていたが、これは本当にヴァルハラン様がやったわけじゃないんだろうか。
私がそう疑念に感じていると、ヴァルハラン様はやれやれと首を振る。
「私はそんな滅多なことじゃ怒らないよ。私の不利益になることに関しては怒るけど、人間がいて不利益になるわけでもないし、信仰されて嬉しいからねー」
「……そうっすか」
私は目の前の光のヒビを見る。
「……んじゃ、行きますか。光の中へ」
私は一歩、足を踏み入れた。
すると、光のヒビがどんどん大きくなっていき、私を包み込む。
「ミーミル!」
ミカボシが手を伸ばすが、その手は光のヒビによってはじき返されていた。ミカボシははじき返された自分の手を眺める。
私は出ようにも出れるわけがなかった。そして、地面が崩れていく。
「この程度の力なら……。アマツミカボシとかいったね? 君も一緒に行くかい?」
「……え?」
すると、光をこじ開けたのはヴァルハラン様だった。
ヴァルハラン様はミカボシの手を掴み、中へ引きいれる。そして、私たち三人は光の底に落ちていったのだった。
私たちは落下していく。
「ヴぁ、ヴァルハラン様! どこに行くんでしょうか私たちは!」
「うーん。この感じだと、神界かな。魔力的に。ただ、落ちた人間はろくでもない扱われ方をしてるだろうけどねぇ。いい機会だ。たまには下級神の働きでも見てやろうじゃん?」
「そんな呑気な……」
「ま、神界なら私が送り返せるから安心してね。こういうことを軽い気持ちでしちゃう神を一発ぶん殴りたいでしょ?」
ヴァルハラン様は不敵に笑う。
私たちは、そのまま眩しくて目が明けられないほどの光に包み込まれたのだった。
目が覚めると、なにやら石造りの部屋にいた。
周りには落ちたであろう人間が座っており、ここはどこだと慌てふためくもの、どうなるかが分からず不安でふさぎ込んでいるもの、出口を探っているものがいる。
人間などはまとめてここに堕とされるらしい。
すると、突然石でできた壁が開いた。
「貴様ら人間ども、よく聞きやがれ」
そういって出てきたのはローマ神話に出てきそうな服を着た男だった。
男は人間を見渡す。
「お前らは……」
「てめえ! ここはどこなんだァ!」
と、一人の男が掴みかかった。
その男は汚物を見るかのような目でその掴みかかった男を見ると、思いきり振り払って魔法を唱えたのか、雷が男に落ちて黒焦げになった。
「貴様ら、死にたくないだろう? 私どもに逆らわなければ死にはしない」
と、偉そうな口をほざく。
その隣ではちょっとイラついてるのかヴァルハラン様が耳打ちしてきた。
「ミーミルちゃん、一発ぶん殴っていいよ」
「いいんすか?」
「私が許可する。こうも神たちは腐ってたとはねー。仕事が増えちゃったよ」
というので、私は神に向かって駆けていく。
そして、そのまま思い切り殴ろうと構えると、神も気づいたのか魔法を唱える構えをしたが、神はそのまま動けなくなっていた。
「なっ……!」
「私もあんたを見習って気に入らないからぶん殴ってやるぜええええ! どらあ!」
私は思い切りぶん殴ると神は吹っ飛んでいった。
私が拳を下ろすと、周りから拍手が飛んでくる。
「とりあえずしょうがない。みんな、元の世界へお帰り」
そういってヴァルハラン様はみんなをどこかに転送したのだった。
私とミカボシたちだけは残されていたが。
「二人にはちょーっと協力してもらおうかな。とりあえず私だと気付かないバカな神もいるようだしわからせようね?」
「物理で?」
「脳で理解しないなら体で理解させようね」
「随分暴力的な神様ですね……」
ミカボシのツッコミはもっともだ。
「というのは方便で、二人とも神界がどうなってるのか気になるでしょ? 人間と同じように神だって国を作ってるんだよねー。観光して行きなよ。神様見習いとか天使とか天使見習いとかいるからさ」
「いいんですか?」
「ま、私が同伴するから大丈夫だよ。とりあえず、先ほどぶん殴った神を起こそうか」
といって、ヴァルハラン様はその神に近づいたのだった。
拳で解決するのはミーミルちゃんもやってる




