同級生に遭遇 ①
翌日、ジキルタイガーに跨り野原をかけていた。
依頼で、海の方にある水晶のサンゴをとってきて欲しいという依頼を受けた。
始まりの街から海までは遠く、馬車だと結構な時間がかかる。歩きでも無論かかる。
なのでハイドだ。
「うおーっ! はえーっ! ハイドすげーっ!」
「ガルっ」
ハイドはスピードを上げる。
うおっ、すごい風圧。まるでレーザーカーの上にいるような感じだ。
本来ならGやらなにやらが作用しそうだがゲーム補正でそんなのはあまり感じない。
「Go Go! 馬に乗ってる時よりすごいぜ!」
海が見えてきた。
潮の匂いがする。いい匂いだ。私が生まれ育った街に似ている。私も海沿いの街に生まれてロンドンに引っ越し日本にまた越してきた。
「海の匂い…」
「ガル」
「海は広いからな…。夢がある」
海底は未だに調査されていない。
宇宙もそうだ。未開拓。ロマンがあるんだ。ロマンは人を動かす力がある。
「ロマンこそ人生! 人生こそロマンだぁ!」
なんて叫びつつ私は海についた。
ビーチにつき、ハイドは止まる。たしか海沿いの洞窟に水晶サンゴがあると聞いた。
「アレだ」
私は洞窟を見つけ中に入っていくのだった。
中は真っ暗闇…というわけじゃない。
赤、青、緑色に光る好物があった。珊瑚のような形をしているからこれが水晶サンゴなのだろう。
「なんつーか、ゲームとはいえ見惚れる景色だな…」
透き通る水晶が光を反射しまたその光が水晶に反射し…。
まるで自分で光を放ってるかのように水晶サンゴが光っている。
私は水晶サンゴを触り、少し力を込めると簡単に折れてしまうのだった。
紫色の水晶だ。綺麗だな…。アメジストのように紫色。でも、脆い。
「これなら楽勝だな」
水晶サンゴを私はどんどん取っていく。
緑色、青色などの色もあり私の分もあいつらにプレゼントする分も取っていく。
乱獲するのはアレなので少しは残しておこう。
私は気分良く外に出る。
外に出るとハイドが何かを前足で押さえつけていた。
デカイ星型の…。あれはヒトデ?
「ハイド、なにそれ?」
「ガルっ」
ハイドは前足を再び振り下ろすとそのヒトデは動かなくなった。
「そういや依頼人は難しいとか言ってたけどこいつが難しくさせてんのか?」
ハイドが抑えつけていたところをみるにきっと洞窟に近づこうとしていた…。
サンゴを食べるのかな。高確率でこいつに出会うからこそ難しいとされる所以か。ま、ハイドには勝てなかったみたいだが。
「ハイド、お手柄だな」
「ガル…」
と、ハイドは私の後ろを睨む。
私は振り向くとそこにはプレイヤーらしき人が四人立っていた。
剣を構えてはおらず、逃げ腰。四人は今にも逃げ出そうと睨みつけている。
「ハイド、まだ仕掛けるなよ。あっちから仕掛けてきたら攻撃していいからな」
「ガル」
「…慌てるな、三人とも。逃げるなら全速力だぞ。ジキルタイガーは素早いからな。すぐに追いつかれる。誰かが犠牲に…」
どうやら敵対心はないみたいだ。
私はハイドの腕に手を置く。ハイドは顔をこちらに向けた。
「攻撃はしなくていいよ。見逃してやったら?」
「ガル」
ハイドはその場に丸くなった。
「ね、寝た?」
「なら逃げるチャンス! ほら、ユキト!」
「あ、ああ。今が逃げるチャンス!」
と、四人は逃げ出した。
ユキト。ユキトか。うちのクラスにもそういう名前のやついたな。
柊 雪斗。うーん、なんか似てたような…。聞いてみるか。
「ハイド、ちょっと追うか」
「ガル!」
私はハイドに咥えられ背中に乗せられる。そして、ハイドは走り始めるとすぐにユキトと呼ばれた人たちに追いついた。
「なっ…」
「はいはーい、ユキトさーん。STOP〜」
「えっ、女の子の声?」
「ここよ。ハイド。攻撃すんなよっと」
ハイドは足をかがませる。私はハイドの背中から飛び降りた。
「あ、あなたはアテナさん…?」
「やっぱり。柊 雪斗か! 奇遇だなあ。ゲーム内で会うなんて」
「そ、そうだねアテナさん」
「じゃあそっちは…」
「見たことないと思うけど姉と従姉妹だよ…。女系家族なんだ」
へぇ。姉弟で同じゲームを…。仲良いなー。
「…誰? この外人」
「あ、えっと、同級生のアテナさん。イギリス出身だよ」
「リアル外国人! 初めてみたぁ…」
「すげー、人形さんみたーい」
と、ジロジロと女の人たちに見られる。
「オッドアイ…?」
「あー、はい。リアルモジュールなんでオッドアイも治してないんです。青と緑のオッドアイです」
「なにそれカッコいい。ねえ、アテナさん」
「はい?」
「うちのユキトと結婚しない?」
「ぶっ」
柊が吹き出した。
「姉さん! やめてよ…」
「どうやら柊クンに嫌われたみたいなので結婚は無理ですね」
「ちがっ…そういうわけじゃ…」
私と柊姉がニヤニヤしながら柊を見るのだった。




