父からの大事なお話
スポーツ施設から出たのは夜の五時くらいだった。
あらゆるスポーツを遊びつくし、お嬢様三人は伸びていた。
『足が筋肉痛ですわ……』
『痛いー……』
『もう歩けない……』
この程度で伸びるのは軟弱よ。
『今日はここらへんで終わりにしましょう。二人はどこに泊まるんです?』
『あっ、今日はホテルをとっておりましてホテルに宿泊して明日帰りますわ』
『さすがにあっちの学校何日も休むわけにはいかないんです』
だろうね。
『エレノアも?』
『はい。今日はホテルに泊まって明日帰りますの。すいませんがお姉さま、体力に余裕があるならタクシーを拾ってもらえませんか』
と、三人は体力的に動けそうにないのでしょうがないか。
私はタクシーを引き留め、三人を乗せる。
『目的地は?』
『ペイスリーホテルというところですわ…』
「ペイスリーホテルまで」
私はタクシーの運転手にそう告げ、三人を乗せる。
あとはなんとかなるだろう。私は三人と別れ、家路に戻る。体力的にはまだいけるが精神的には本当に疲れた。
ったく、帰ってゲームしよ。もう夜だけど。
私は家に帰ると父さんも帰ってきていた。
「アテナ、今日エレノアちゃんきたんだって?」
「そうそう。さっきまで案内してたの。それじゃゲームしてるから緊急時以外は呼び出さないでね」
そういうと、父さんが私を引き留めてくる。
大事な話があると言って父さんは私をリビングにあるテーブルに座らせる。神妙な面持ちで、なにか大事なことを告げられる感じがする。
何事だろうか……。私は、親のちょっと悲しそうな雰囲気を察し息をのむ。
「その、なんだ。父さんたち、またイギリスに戻るかもしれん」
と、告げられた内容はとても私には受け入れづらい内容だった。
イギリスに戻る?
「なんで!?」
「あちらのお偉いさんから声がかかってな。ぜひ来てほしいということだ。あちらのほうが今より設備も環境も良くてな」
「でも、断れるんでしょ?」
「それが、だな。断りづらい人なんだ。イギリスの医師会の会長から声がかかってな」
「私は嫌だけど。三日月たちもいるし日本にいるよ私は」
私はそういうが、父さんは顔を俯かせるままだった。
父さんと母さんがイギリスに戻ることになるのなら、私も必然的に戻ることになる。今はまだ私は子供なのだ。どんなに偉そうにしていても、子どもだから、親についていくしかない。
ついていかないとしても、電車で数駅とかの距離ならまだしも国が違うというのは本当に嫌だ。私は日本がいい。
「……別居も考えたほうがいいかしら」
「そんなっ……」
「アテナの気持ちはここにあるのならアテナはここに残すべきよ。私が残ってあなたがイギリスで……と言うのは嫌?」
「嫌に決まっているだろう! 愛しのアテナと離れるのはなぁ」
父さんは私の気持ちを尊重してくれているのは嬉しい。
私だって駄々をこねたい。何でも言うこと聞くから日本がいい。
「嫌、だがそれもやむないかもしれん……」
「本当に、断れないの? 断る勇気も必要よ」
「……そうだな。もう少し検討してみる」
と、父さんが言った。
イギリスに戻る……。か。そうなったら嫌だなぁなんて思いつつ。
「っと、なんか焦げ臭くない?」
「……あっ、煮詰めたままだったわ!」
と、母さんが勢いよく立ち上がり、火を消した。
「あちゃー……。鍋焦がしちゃったわ……。やっぱ私って煮つけとか煮物はニガテね……」
「……とりあえずアテナ。いい方向で考えてみるからそんなに考え込むな」
「……はいはい」
そうだね、そんなこと考えてたらダメだね。
人生は楽観的に生きるのが私だからね。考えるのやめよ。




