女は怖いよなぁ
なんやかんやあったが元に戻ってよかった。
私はハイドにまたがり、始まりの街へ戻ることにした。
「ガル」
「ああ、楽しかったかって? それなりに」
ハイドはそうかと頷いた。
そして、黙って走って駆けていく。始まりの街へ戻ってきて、私は早速拠点のアニキスを尋ねる。アニキスはカウンターの奥に座っており、戻ったかといって私のほうを見てきた。
「どうだった? 魔王領は」
「ま、そこそこ楽しかったよ。それでアニキス。グランツ元魔法師団団長って知ってる?」
「……よぉーく知ってるぜ」
と、アニキスはそういうと、私にお茶を出してきた。
私はお茶を一気に飲みほす。
「脱獄を計画したのはほかでもねえ、そいつだからな。死ななかった死刑囚、グランツ元魔法師団団長……。あいつはどこか狂気を感じていたな。俺らとは違って、もっと恐ろしかった。殺人鬼だのなんだのと俺らの牢獄にいて俺は全員と話したが二度と話したくねえって思ったのはあいつだけだ」
ほえー。その話したくない奴の計画には乗ったんだ。
「ま、俺も脱獄計画に乗ったのは外に出たかったからだし利害一致ってやつだぜ脱獄計画はな」
「あら、心の声聞こえてた?」
「考えてることはなんとなくわかったんだよ。それで、そのグランツがどうしたんだ」
「いや、昨日討伐してさ。どんな奴だったか知りたくて」
ただ興味本位だ。
なぜ死ねなかったのかという興味もあるけれど。
「ふぅん。こっちは昨日事が大きく動いたぜ。他のチームの奴らも囚人をたくさん捕らえたらしいぜ。脱獄囚はもういねえんじゃねえか?」
「……呆気なく終わるなぁ」
「基本、根は変わってない奴らだからな。すぐにぼろを出して捕まるさ」
となると囚人探しはもうしなくていいのか。
ほっとした瞬間、私はなんだか目の前が暗くなっていったのだった。睡眠状態……!?
「な、なにか盛ったな……!」
「……俺も根は変わってないってこったぜ?」
そういうと、私は睡眠状態になったのだった。
目が覚めると吊るされていた。
チームの拠点で。
「さて、鉄砲玉さん。何か言うことは?」
と、なんか木の棒を構えたミカボシとクシナダが笑顔で私を見ている。
あ、私またなんかやっちゃいました? 私はだらだらと冷や汗が出てくる。私はアニキスのほうをみるとアニキスは顔をそらしている。
肩を震わしているのを見るに笑っている。
「アニキスてめぇ!」
「す、すまん。一服盛ったのはこいつらに頼まれたからだ」
「ミーミルちゃん? 無断でどこにいってたのかな? 二三日戻らなかったよね?」
「あ、あはは……。ちょっと魔王領に」
「馬鹿かな? 学習しないのかな? 一言言ってほしいもんだね」
「あ、アニキスには言った!」
「たしかに言ったが、それ、口封じしたろ? なんかごちゃごちゃ言ってくるから黙ってろって」
確かに言った!
魔王領に行くとなるとミカボシたちがちょーっと口うるさくなるから黙って一人で言ってその辺でクエストやってるとか誤魔化せばいいやって考えてた!
「そんなに私たちと行動したくないの? 私たち友達だと思ってたんだけど勘違い?」
「いや、そんなことはない。私は友達だと思っている。だが、友達でも秘密にしたいことはあるだろう? なぁクシナダよ。クシナダは前にミカボシの大切なヘアピンを……」
「よしミカボシ。悪気はなかったんだからおろして差し上げろ」
と、クシナダも冷や汗を噴き出しながらミカボシにそう告げる。
ミカボシは笑顔だが、顔は笑ってない。
「ミカボシだって前にクシナダから借りていたDVDの上に間違って……」
「そうだねおろしてあげよう」
と、二人は私を下ろしてくれた。
「で、ミカボシが私のDVDになにをしたのか教えろミーミル」
「クシナダが私のヘアピンになにをしたって?」
「あ、えっと、友情って素晴らしいね……」
「「誤魔化すんじゃねえーーーー!!」」
と、二人は私にとびかかってくる。
「あの壊れたヘアピン、クシナダが壊したの!? あれお気にだったのに!」
「私こそあのアニメDVDになんか変な映像写ってると思ってたけどミカボシにしては変だなって思ったぞ! 案の定だったかお前!」
「ふっ、またつまらぬものを壊してしまった……」
「だが、まぁ、許そう。ヘアピンを許してくれるのなら」
「う、うん。ヘアピンはまた買えるし私こそDVDごめんね」
「ああ。そういえばミーミルがミカボシから借りてた教科書に落書きしていたぞ」
「そういえばミーミル、クシナダから借りた消しゴムを割っちゃって誤魔化してたよ」
と、私が秘密にしていたことを二人はお互いに告げる。
あ……。これやばいですね。
「……すんませんした」
と、私は地に頭をつける。
二人は私の頭を踏んづけた。
「女って怖えー……」
と、アニキスがそうつぶやいたのだった。もっともです。怖いね。




