似非勇者の処罰
魔法使いが魔法を放ってくる。
私はそれを躱し一気に距離を詰める。魔法使いにまず一撃を加えた。
「痛いい!」
「ルルカ!」
似非勇者は心配するように声を上げる。
すると、魔王様が勇者様に剣を振り下ろした。ガキィンと剣と剣がぶつかり合う音がする。魔王が振り下ろした剣を防御するように剣を横にし、つばぜり合い。
そして、魔王が勇者を突き飛ばし、似非勇者も負けじと魔王に向かって突撃していく。
「んじゃ、邪魔させてもらうよーん」
私は足を引っかけ転ばせる。
「なっ……!」
「助かる!」
と、魔王が勇者に剣を振り下ろす。
戦士の人が私に剣を振り下ろしたが、私は剣をはじき、そのままカウンターで顔面にパンチを食らわせてやった。
戦士たちは一発でノックアウトし、残るは似非勇者だけとなっていた。
「残るはお前だけだぞ似非勇者」
「誰が似非だ! 私は女神に選ばれたのだ!」
「聞くけど、どんな女神?」
「運命をつかさどっている女神だ!」
と、いうとヴァルハラン様は前に出てくる。
ちょっと怒ってる?
「私があなたを選んだとしたら私自身がちょっと恥ずかしいですから嘘はやめようね……。じゃないと、殺しちゃうよ?」
とにっこり笑うが、なんていうか、笑ってるのに笑ってないような感じがする。私もちょっと背筋が冷え、魔王も顔をそらしていた。
ヴァルハラン様は似非勇者に近づいていく。
「あなたが運命の女神様に選ばれたというのなら私に見覚えがあるでしょう、ね?」
「やめろ、近づくな!」
「私に見覚えがないっていうのならあなたは選ばれたものでもなんでもありません。私がこんな低俗なガキ、選ぶはずがないもんね」
「言葉遣いわっる」
「すいません、つい本音が」
こほんと咳払い。
「さっさと立ち去りなさい。あなたのような嘘つき人間を目にしてると本当に裁きを加えたくなったちゃいますから」
「ひいいいいい!?」
そういって、勇者はパーティーメンバーを置いて一人逃げ出していった。
と、その時、勇者は何者かに一発ぶん殴られたのだった。それは街を案内してくれたチンピラだった。
何が何だかわかってなさそうだが、ダヅリはめんどくさそうに魔王に近づいていく。
「よう、魔王様。俺のお出ましだぜ」
「ダヅリか」
「知ってる仲?」
「よく隣町の領主からお使いにくるんだよなぁ」
と、笑って魔王様は応対していた。
「ま、スマイル団ボスだからな。いかついあんたを見れるのは俺だけだろ。他の奴らはビビっちまってよォ。ま、書類は届けたぜ。で、なんなんだいこの騒ぎは?」
「実は勇者と名乗る一行が魔族を大量に殺したのだ」
「へぇ、こいつらか。魔王様、こいつら、俺に任せてくださいよ。俺がきちんとぶちのめしておきますんで」
「頼んだ」
と、ダヅリは戦士たちの首根っこを掴み、ずるずると引きずっていた。
奥で伸びてる似非勇者も鎧ごと掴み、帰っていく。すげえ力だな。喧嘩案外強いのかも……。
「なにあのチンピラ……」
「こらこら」
「ふむ、ま、あの勇者共を懲らしめてくれるならいいが、魔族を大量に殺されておいてあんな軽いものでいいのか魔王よ」
「ダヅリは結構怖いですよー。死ぬよりひどい目に合わせると思いますよ」
「ならばよし」
何やら満足げなヴァルハラン様だった。




