クロムが仲間に加わった!
始まりの街へ帰る馬車内。
ミカボシはずーんと落ち込んでいた。
「なんでそんなこと秘密にしておくんだよぅ……。あんたの方がよほどイベント起こしてんじゃん……」
「ごめんて。言うの忘れてたんだよ」
私はミカボシをなだめていた。
宥めていると、急に馬車が止まる。どうした? と思って外に出ると、御者がどこかに逃げているのが見えた。
乗り合いの馬車で御者がどこにいく? と思って、私は外に出ると。
「なーるほど」
盗賊に囲まれていたのだった。
盗賊はこの馬車を襲うつもり満々のようで、剣を構えた奴らなどがたくさんいる。この馬車には私たちしか乗っていなく、他の客はいない……。が、あの御者、盗賊とつるんでいたんだな?襲わせるためにわざとか。
「なるほど。俺らははめられたか。公共の馬車の御者が盗賊団の一人とか気づかなかった」
「え、戦う流れ?」
「らしいぞ。ミカボシも戦うしかないだろう。たぶん、相手は生きて返すつもりはないらしいぞ。御者が盗賊団の一人とバレたくないならな」
私は拳を構える。
ミカボシも降りて剣を構えた。すると、盗賊団の後ろから何かが切りつける。盗賊団が次々とやられていき、盗賊団も何事かわかってないようだ。
私も盗賊団めがけてつっこむ。相手が混乱しているのでそれに乗じてっていう感じなんだけど……。
「オラァ!」
名も知れない手助けしてくれてる人。結構楽させてくれてありがとう。
数分後、盗賊団を見事全員倒し、私は手助けしてくれた人を探そうとするとあちらから近づいてきたのだった。
「なにしてるの?」
「クロム!」
助けてくれた人はクロムでした。
オニキスが馬車を運転し、私たちは馬車内で談笑していた。
「ああ、そうだ。アマツミカボシさん、いいかな」
「はい、なんでしょう?」
「前々からミーミルには相談していたんだけど、私、アマツミカボシさんのチームに入りたい。ダメだろうか」
「ふぇ!?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするミカボシ。
クロムと言えば上位プレイヤーでもまじで強いので戦力にはなるだろう。そして、相談されてたのすっかり忘れていた。
私はミカボシに冷たい目で見られる。
「え、えっと、それじゃ一応試験というのを……。さすがにフーとリオンは試験あってクロムさんは試験なしというのは公平ではないので……」
「わかった。何を狩ってくればいい」
「ヘルベアーの心臓とか……あの子たちと同じなんですけど」
「それならすでにあるぞ。先ほど戦ってきたばかりだ」
と、クロムがミカボシに心臓を渡す。
「じゃ、じゃあ入団ってことで! クロムさんのような強い人に入っていただけて嬉しいです。戦力も大幅に……」
「プレイヤーランキング一位のミーミルがいるから戦力は大丈夫そうだが、まぁ、力になる」
「ミーミル、大体がソロだしな。大抵ふらついてるから頼れないぞ」
「ミーミル、そうなんだね」
「ヒーローは遅れてやってくるものですから」
私は適当な言い訳を述べた。
「その、一つ聞きたいのですがソロ勢だったクロムさんがなぜチームに……?」
「クロムでいい。そして別にソロ勢だったわけじゃないぞ。私好みのチームがなかっただけだ。黄金の煌きとか名前に惹かれないしな。それに、ミーミルという友人がいるからと言うのもある」
「ミーミル、あんたいつの間に友達に!?」
「二人で一週間ずっと一緒にいた仲だからねー」
「あれは楽しかったな」
クロムは笑顔を見せてくる。
前に見た笑顔はぎこちなかったがわりとマジで笑顔ができてきている。笑顔だけ見ると本当に悪役女優やってるとは思えない。
その笑顔、演技の時にできないものか?
「クロム、笑顔出来てるね」
「……できてたか? あれから毎日笑う練習はしているがどうにも反応が悪くてな」
「なんか、今ものすごく笑顔が可愛かった」
「……よし。練習の成果が出始めてきたな」
と、クロムは嬉しそうにしている。
「話してるとこ申し訳ねえが暗くてもうこれ以上馬車は進めねえ。どうする?」
「うーん。野宿するしかないね。オニキス、近くに街とかは?」
「なさそうだ。平原のど真ん中だし始まりの街もまだ遠い」
「じゃ、セーフティーテントはって野宿かな」
そういうので、私たちはセーフティーテントを地面に置いた。
「こういう時ミーミルの後ろの歯車便利よね。光反射して割と見やすいわ」
「そう?」
「そのためのものではないと思うが……」
「なぁ、クロムもその羽根は何だ? 天使か?」
「ああ、これか。私も神の眷属になったんだ。ミーミルのおかげで」
そういうと、二人はぎょっとしてこちらを見る。
「あんた他人までついに手を染めさせたのね!」
「いや、犯罪ではないでしょ」
「よし、私も神の眷属にしろ」
「無理だよ……」
二人もなんか今日暴走してますね。




