始業式
私はあくびを一つしながら街を歩いていた。
身には高校の制服を羽織り。冬の冷たい風にさらされる金髪。今日から学校が始まるんですわ。噂によると前に首になったあの思い出したくもない先公の代わりの先生が赴任するというので楽しみ半分、不安半分に歩いていた。
「っていうか登校初日なのにこんなに人いないのなんでだろう?」
みんな寝坊してるのかな?
私はゆっくりと歩いていると駅前についていた。駅を通り過ぎて少ししたら学校がある。私は今何時か確認するために時計を見ると。
「……あちゃー」
と、そんな声が漏れたのだった。
現在の時刻、9時01分。学校は既に始まっていた……! 私は全力で走ることにした。みんな遅刻かと思っていたら遅刻したのは私でしたね。ええ。
家の時計、壊れてやんの。今朝確認したとき八時だったんだぞ……。のんびり歩いても間に合うように出たのによォ……!
私は校門につき、中へ入ろうとした時だった。
「ハイ遅刻ー」
「げ、見張ってた」
「アテナちゃん。外国人だからって言う言い訳は通じないからね?」
「言い訳する前に封じられた!?」
「はい、行こうか」
ドナドナドーナー……。
生徒指導部の先生に呆れられつつも私は体育館に向かう。始業式は既に始まっているらしく、私は目立たないようにそろーっと行こうとした瞬間だった。
「おわっ!?」
思わず躓いてしまい、大きな声を出す。
転ぶ前に手を出しバク転して着地! ふぅ、決まった。じゃなくて。
「あ、すんませんした……」
『え、えーっと、すごい、体術でしたね……』
校長先生のフォローが痛い。
『では、新任の先生から挨拶です』
と、校長が壇上から退くと一人の男性が階段をのぼる。
顔は結構整っており、真面目な先生という印象を受ける。ああいう真面目そうな人はニガテなんだよな……。私って結構適当に生きてるし。
私はそんな目で見ていると挨拶をし始めた。
『えー、僕は新たに赴任した数学を教えることになる秋時雨 ヒロといいます。よく珍しい苗字だなと言われますがこの苗字はかっこよくて気に入ってるのでぜひ秋時雨先生と呼んでください』
きりっとした顔つきにきりっとした顔。これでモテないわけがない。
「秋時雨先生かっこいー!」
「彼女いるかなー?」
と、周りの女子たちはその話題で持ちきりだった。
『これからよろしくお願いします。この学校についてはまだわからないことだらけなので生徒の皆さんがわ…僕に教えてくれると嬉しいです』
「はーい!」
女子が盛り上がってる中、始業式は終わり、次はホームルーム。
ホームルームでは秋時雨先生も教室内に入ってきたのだった。どうやらこのクラスの副担になるようでにこやかな笑顔を浮かべ立っており、女子生徒もキャーキャー言っていた。
「じゃ、まず自己紹介していこうか。天津から」
「はーい。えっと、今日遅刻した奴から」
「誰の事ですかね?」
「お前だお前」
「へーい……。えっと、山田花子です。この髪は染めててヤンキーです」
私がそう言うと先生が冷たい目で見てくる。
「染めてるなら校則違反だな。染め直してこい」
「嘘ですアテナ・アゼリア! イギリス人で生まれつきです!」
クラスがどっと笑う。
「アテナちゃん。本物の外国人を相手するのは初めてだよ」
「日本語はペラペラ何で気にせず日本語でいいです」
「こいつは日本語喋れないふりをするからその時は怒っていいからな」
「……そんなことしたことないですけど?」
心外です。
「じゃ、次私だね。天津 三日月です。私は日本人なので気軽に話しかけてください」
「あの、私だって気軽に……」
「日本語わかんないんでしょ?」
「先生! いじめられてます!」
「はい、次」
「無視!?」
無視はひどいよ。
そして、次々と自己紹介をしていく。灘の番になった。灘は勢いよく立ち上がり、椅子の上に立つ。ああ、入ってるなコイツ……。
「我は串野 灘! このクラスの頂点にして学校の支配者である!」
「はーい串野、椅子の上に立つなよあとで生徒指導室な」
「なっ……!」
「こいつがこのクラス一の問題児だから気を付けろよ」
「問題児ではないぞ!」
私は灘を見る。
「いや、問題児だろ」
「ち、違う! 違うよなみんな!?」
みんなに同意を求めたがシーンとしていた。
「串野ちゃん。そりゃないぜ」
「むしろ灘ちゃん以外の問題児は見たことないよ?」
「みんなが私の敵だ! 四面楚歌だ! 私の味方はいないのか!」
と灘が叫ぶ。
「あ、あー。個性的な子でいいと思うよ」
「秋時雨先生それ言うと……」
「そうだろう! 時代は凡庸より個性! 個性を求められるのだ!」
「あ、あの…僕何かまずいこと言ったかな」
「個性って言う単語に反応するんで……。先生、ちょっと手荒になりますがいいですか?」
「頼む。アテナ」
私は灘に近づく。
「静かにしろっ!」
「いだぁ!」
灘を叩いて黙らせた。
今日めっちゃ疲れる……。




