夜の礼拝堂 ③
礼拝堂の地下室についた。
神父がランプをもって辺りを照らす。なんだここは…。床にも朽ちていく紙があるのがわかるがこの黒いものは何だ? 模様…なわけないだろうしな。
触ってみるとボロボロと崩れる。
「…ミーミル様。それは人間か何かの血液ではないでしょうか」
「うおっ、マジか」
私は思わず手を離す。
血…? すると、私はちょっとした異変に気付く。
「カムイ、ちょっと息を止めてて」
「かしこまりました」
神父が呼吸を少し止めた。
いや、神父がいる反対方向から呼吸する音が聞こえる。その呼吸音はどんどん近づいてくるのだった。
私は思わず神父に手を伸ばす。
「まずい、何かいる! 逃げるぞ!」
と、流星武闘が発動した。
ということは戦闘状態に入ったことになる。私は闇の二面性を発動し、神父を持ち上げてお姫様抱っこのような感じになりつつも階段を急いで駆け上がった。
戦闘状態になったということは相手には敵意があると見て間違いない。姿が見えなかった。
「まだ戦闘状態か…だが、ここはまだ比較的明るいからここで戦ってやる」
礼拝堂まで上がってくると階段の下から一人の人間が現れた。
一人の女性だった。女性はこちらをギロリと睨みつけてくる。
「カムイ、私が戦ってるから逃げろ。あれはまずいぞ」
「…あなたにご加護があらんことを」
カムイは走って逃げようとした。が、その瞬間目の前の女性も素早く走り出しカムイに狙いを定めたようだ。
私は足を払いその女性を転ばせる。
「ガッ…!」
「お前、何者だ? タダの人間じゃないだろ。ちょっと固かったぞ」
「ワタシハ…」
「ま、どうでもいいか。倒すからな」
「…バカニスルナ!」
と、その女性は足で私の足を払おうとした。
私はジャンプしてそれを躱すと、女性は立ち上がり、攻撃しようと右手を振りかぶったので私は足で顔面を蹴る。
ゲームだからこんなジャンプ力あるんだよなと思いながらも、私はどう倒すかなーと考える。
「イダイ! イタイヨォ!」
「そうか。なら…」
私は顔面をおさえて悶える彼女の首を掴む。
彼女は苦しそうに私の手を引き離そうとしていた。私は地面に叩きつける。地面に思い切り叩きつけ、彼女は血を吐いた。
「グフゥ…ツヨイ…」
「殺すのは気が引けるけど殺さなくちゃいけないよな…」
相手は動かなくなる。
とどめを食らわせてやりたいが…。
「いっ、イヤ! シニタクナイ!」
と、泣き叫び始めた。
すると、戦闘が終わったのか流星武闘が解除された。闇の二面性も解く。死にたくないと涙を流す彼女には何か理由があるのかもしれないな。
「わかったよ。とどめはささないでおいてやる。その代わり何が起きたのか教えろ」
「ワカッタ。協力スル…。ワタシハマケタ…」
私は女性と地下室にまた降りていく。
女性はランプの魔法を唱えると部屋が一気に明るくなった。
「ここは何の部屋だったんだ?」
「ココハ…人ヲ生ミ出ス部屋…」
「生み出す部屋ァ? 出産するためのところか?」
となるとこの机は分娩台? いやんなわけないだろうな…。
「私モココデ生マレタ…。人工的ニ人ヲ造ッタ」
「人造人間ということ?」
「ソウ」
アポカリズム教さぁ…。
「百年以上モココニ閉ジ込メラレタ…。私ガ唯一ノ成功…。沢山ノ人ガ私ノ為ニ殺サレタ」
なるほど。この血はその人たちの…。
非人道的というかなんというか。
「大変だったな」
「イヤ…」
しょうがない。
私はとりあえず帰るとしよう。流石にこの光景を見て平気ってわけじゃないからな。だがしかし、帰る前に…。
「えーっと、君はずっとここにいるの?」
「…私ニハ居場所ガナイカラズットココニイル」
「そう。じゃ、たまに来てもいい?」
「…何故?」
「君と話したいから。ダメ?」
「構ワナイ」
「私が来ても襲ってくるなよー?」
「ワカッタ」
人造人間は笑う。
「あと、君だけじゃちょっと不便だから名前を教えてもらってもいいかな?」
「名前…ナイ」
「名無しかよ…」
となると名付けなくちゃいけないのか。
うーん。
「じゃあアーティ。アーティって呼ぶね」
「アーティ。イイ名前」
人造人間の英語からとっただけなんですけどね。
「それじゃ、バイバイ。アーティ」
「バイバイ」
私は階段を上り、拠点へ向かうのだった。




