イベントに事欠かない日
彼は真剣な表情だった。
彼は親からも、誰からも本当の自分を認めてはもらえず、本当の自分をわかろうともしてもらえなかったらしい。
自分は優しくなりたいっていって、でも、周りはこんないかつい自分を強い、優しくないという印象付けて周りがそう認識してしまった。それが嫌で荒んでしまったのだという。
「情けねえだろ……。俺は誰からも劣っててよ。人を騙して優越感に浸ることでしか俺も俺自身を認められなかったんだ」
「……」
周囲が悪いだろうな。
たしかに、人の印象は見た目が大半を占めるという。彼の顔は本当に屈強そうな男って言う感じの顔で優しさのかけらも見つからなければ、むしろ強そうで怖いという印象を受ける。
親ですらも、見た目で判断したのだろうな。
「あんたは……俺を認めてくれるのか? こんな弱い自分を」
「いや、この犯罪犯してる時点で度胸とかはめっちゃあるから弱くはないでしょ。行動と自分の気持ちに矛盾してるぞあんた」
「…………」
「ま、話はわかったよ。でもそれってさ、自分だって自分を認めてねえじゃん。自分が自分を認めてねえってのに他の奴が認められるかよ」
私は厳しく突き放した。
いつにおいても、自分が自分を認めなければ、他の人はわからないのだ。他の奴が認めないのは自分も悪いのかもしれない。
大体は周囲が悪いけど。
「私からは以上」
「……ありがとう」
「ま、アドバイスとしては吹っ切ることだな。認めなくてもいいけど、仕方ないとは思ったほうがいい。割り切るっていうか、諦める方で」
「……もっと前向きなこと言わないのか」
「いつでも前に向いてると疲れんじゃん。時には後ろ向くのも大事」
私はにかっと笑う。
「……なぁ、俺よ、あんたについてくことはできねえか」
「私に?」
「あんた、チームだろ? 俺を雇ってほしい。留守番でもなんでもする。俺を導いてくれるのならば、俺はあんたについていきたい」
「……私リーダーじゃないからなぁ」
私の一存で決めることはできないんだけど……。ま、聞くだけ聞いてみるか。
「わかったよ。じゃ、ついてき…って、ここ階段どこよ?」
「こっちだ」
と、私は案内されて外に出たのだった。
外に出るともう夜であり、星が輝いている。雲一つない快晴なので星が綺麗に見える。私たちは拠点に戻ると、二人となぜか花井の姿が見える。
……?
「ちょっと…そういや名前なんて言うの?」
「お、俺か? 俺は…本名はアニキスだ」
「ちょっとアニキス待っててね」
この異様な状況、信じられるわけがない。
なぜ、花井とミカボシたちが一緒にいるのだろう。夢? これは夢か。そうか。これは夢なんだな。私はゲームをやってると思ってたのに夢を見ていたか。
となるとここは夢の世界なのかな?
「ソムニ、いる?」
「なに?」
私はソムニを呼ぶと、ソムニはだるそうに近づいてくる。
「ここ夢の世界みたいだから元の世界に戻して」
「は? 何言ってんの? ここ現実っしょ」
「……いやいや、ソムニが勝手に私を夢の世界に連れていったんでしょ? とぼけないでよ」
「とぼけてるのはあんただし! 私は力使ってないっての!」
……え?
「ど、どうも~……」
「ミーミル、おかえり」
「ただいま言える状況じゃねえ! なに!? なんであんたら仲直りしてんの!? なんで平気そうにしてんの!? なんで一目放しただけでなにかイベント起きてんの!?」
「最後のはあんたもでしょ」
「……あんたらニセモンか? ミカボシが許すはずないからな」
「いや、本物……」
私は塩を手にする。
「キエエエエ! あくりょーたいさーん!」
「ちょ、何するの!?」
塩をまこう。
現実だとすれば悪霊が憑りついてるに違いない。
ミーミルちゃん、疲れて暴走してるなぁ




