騙された大賞、受賞
翌日、二人はまたパンドラさんと調べてくるといって出ていったので私はヴェニカと二人きりで拠点に座っていた。
ヴェニカは縮こまり、角に目立たないように座っている。私も特に話すことがないので無言の空間が続いていた。
「……失礼するぞ」
「ん、どなた?」
「俺はアデリー騎士団副団長のボルボリック。今回は貴殿に頼みたいことがあってやってきたのだ」
「頼みたいこと、ね」
騎士のボルボリックは私の目の前に座る。
なんだか堅苦しそうな人で、礼儀とかもきっちりしてそうな人。私こういう人ニガテなんだよね。堅苦しいのがどうも嫌いというかさ……。
「つい先日、連続殺人鬼のギャアルの遺体を持ってきてくれただろう?」
「あー、あの男ですか」
「実は死んでないということでな。先ほど息を吹き返したようなのだ」
まじで? あれで死んでないの?
「貴殿と話がしたいと呼んでいてな。どうかついてきてもらえないだろうか」
「まあ、いいですけど……」
と、私が立ち上がり、拠点を後にした。
盗られていいものは置いてないし、荒らされてもいいものも置いてないからたぶんヴェニカを放置していても大丈夫だろう。
私は騎士団の副団長についていく。だがしかし、様子がおかしい?
「あれ、騎士団ってこっちの道でしたっけ」
「ああ、今は裏道を使っているからな。実はこっちのほうが速くつくのだ」
「なるほど」
裏道、か。
すると、突然目の前の男が扉を開ける。その瞬間、私は背後から何者かに薬を嗅がされたのだった。
「なっ……!」
そして、私は気絶の状態異常が入ったのだった。
再びログインできるようになり、ログインするとなにやら牢獄のような場所に入れられていた。
嵌められたらしいです。一生の不覚。
騙されたということか……。くっ、何でも人を信じちゃう優しいミーミルちゃんの悪いところだね!
「それにしても私を攫う目的ってなんだよ……」
「攫う目的か? そんなのは簡単だろう」
「あ、いたの」
私を騙した男が目の前の椅子に座っていた。
「あんたは国が大事にしたい存在のはずだぜ? その紋章…神獣のだろう? 俺は知ってるぜ。前は神獣専門の研究者だったからなぁ」
「なるほど、神獣をテイムしたからか」
「お前を人質にとれば神獣を大切にしている国は黙ってないはずだぜ?」
まぁ、そうだろう。
だがしかし、こんな屈強そうな牢でもハイドを呼べば一撃で…と思って召喚しようとしたがなぜか召喚できないのだった。
「あはは、無駄だぜ! ここでは一切の魔法を禁止する魔法がかけてある! 俺以外に魔法は使えねえ!」
「用意周到なこって……」
ハイドの召喚も魔法という扱いになっているのか。
じゃ、どうやって出ようかな……。窓はないし、出口があるのだとしたらやっぱ正面の牢なんだが、見張りがいる。
脱獄、無理じゃね?
「ま、国が動くまでちょっと待ってろよ。俺は人質をすぐには殺さねえからよ」
と、私のほうに近づいて頭をちょんっと小突いてくる。
……さて、どうするか。




