無実を証明してほしい
どうやら、囚人は本当に極悪らしく、依頼でもそういう依頼ばっか来るようになっていた。
付近の村の変死事件……。強盗事件などなど。騎士団からそういう依頼を受け取ってきたが……。これをやるのか?
「始まりの街、王都、そして海沿いの街ガフェルっていう街に出現率が多いっていう囚人……。囚人の顔リストも渡されたがどうしろというんだよ……」
私はお菓子を食べながら拠点に戻っていた。
私のことだからどうせすぐに出会うだろうと思っていた。
「はあっ……、あの、ちょっとだけ匿ってください!」
と、私の背後に立つのは小さな女の子ではなく、女子高生のような感じの女の子だった。
可愛らしい声で頼まれたので、私はその子を後ろに隠した。すると、騎士団が走ってくる。騎士団は私に声をかけてくる。
「君、ここらへんで君のような年代の女性を見なかったか?」
「見てないですけど……」
「そうか。ご協力ありがとう!」
と、騎士団は慌てて走っていく。
騎士団に追われている? 見たところそんなに高そうな服ではなく、結構ぼろぼろの服。こんな女性を追うなんて理由は一つしかない気がする。
「お前…囚人か」
「うっ……」
私は顔写真リストを見ると、女性の顔もあった。
元貴族の女性で王子の暗殺未遂事件を起こし死刑が確定していた令嬢とそっくり。つまりこいつは元貴族か。
私が見比べているとその女性は私を警戒したような目で見ている。
「あなたも私を捕まえるんですか……?」
「んー、私に危害を加えない限りはしないよ。大丈夫大丈夫」
私は顔写真リストをしまう。
「で、王子の暗殺未遂って何をしようとしたの?」
「してません」
「ん?」
「私はそんなこと企てていません! 私は……濡れ衣なんです」
そう悔しく叫ぶ彼女。
「……とりあえずここは目立つから拠点にいくか」
私は場所を移して話を聞くことにした。
拠点に戻ると二人は疲れたようにぐでーとしていた。
「元気ないな」
「クシナダに付き合わされてさっきまでNPC特別職探してたんだもん……」
「見つからん……。で、その女の子は?」
「囚人の一人」
そういうと、二人は一気に警戒態勢だった。
私は構わず座らせる。
「はい、お茶」
私はお茶を汲み、女の子に手渡した。
「ありがとうございます……」
「それで? 濡れ衣って?」
「はい。五年前に、王が主催するパーティーがありました」
彼女の話を聞いた。
彼女曰く、そのパーティーに招待されて向かったはいいが、そこで事件が起きたらしい。王子のアレクが突然苦しみだしたということ。
毒を飲んだ症状と酷似しており、料理に毒が盛られていたことがわかり、その実行犯として怨恨が一番強いとされたこの女の子に疑いが向いたそうだ。
そして、彼女の従者のポケットから毒を入れたとされる容器が見つかり、計画を企てたとその従者が言ったらしい。
従者共々捕まったという。
「それ、絶対実行犯あんたの従者だろ……」
「はい。彼も獄中で私にだけ教えてくれました。動機はあなたと一緒に死にたくて、あなたと一緒に地獄に落ちたいからというだけでした」
「その従者最低だな」
「すごくメンヘラっていうか……」
「狂愛っていうのかね?」
愛した対象を巻き込んでとか害悪にもほどがあるだろう。
「お願いです! 私の無実を証明していただけませんでしょうか! このままだと捕まって死刑にされるんです!」
「……と言われても私たちそういうの疎いよ? 割と戦闘をメインだしその手の頭を使う依頼は」
「構いません! きっと誰も信じてくれません。頼れるのはあなた方のみなんです」
「それはいい、が」
クシナダの目つきが鋭くなる。
「お前はどこまで信用していい?」
「そうだね。それなんだよね」
二人は囚人だということで疑わしくなっている。
「信じてくれないだろう、頼れるのは私たちだけ。これは私たちに依頼を絶対に受けさせようとしているのだろう? 私たちしかいないといって同情を買って。お前さんが嘘をついている可能性もなくはないからな」
「ま、しばらくは探してみるけど信じられる根拠が見つかるまでは信じないからね」
「二人はひどく警戒的だなぁ。ま、探してみますか」
「……ミーミルはその子を見張ってて」
「え? 私も探すんじゃないの?」
「いや、ミーミルこういうの好きじゃないでしょ? 動物的だから」
頭を使うのは確かに好きじゃないけど……。
あの、動物的ってひどくない?
「無実を証明って割と無理があるね……。あの人たちを誘ってみようか」
「あの人たち?」
「魔王軍? の人。ミーミルのチームメイトっていえば通じるでしょ」
と、二人が行ったのだった。




