命がけのギャンブル
新年早々ゲームにログインした。
ゲーム内は雪が積もっており、新年を祝うような装飾が街に施されていた。私は拠点に戻るとなにやら人が一人立っている。
「ああ、この拠点の方でしょうか?」
「そうですけど……依頼ですか?」
「いえ、郵便です」
「ああ、郵便さん」
郵便さんが現れるようになったんですね。
私は一通の手紙を受け取る。開封すると、何やらお知らせのようだった。国王からのようで、何か顔写真がついているものと、そして注意喚起と書かれたもの。
「脱獄囚……」
内容を読んでみると、つい先日の騒動に乗じ、囚人が看守を殺し脱獄し各地に散らばってしまったのだという。
そして、この顔写真は中でも凶悪な囚人の顔で見かけ次第即通報し、逃げろということだった。
「うおー、イベントに事欠かないな」
それにしても囚人か……。なんていうか、引き寄せてしまいそうだな。
私は郵便をしまい、拠点に入る。すると、一人の男性が座っていた。だがしかし、その顔は……。なんていうか、さっき見た顔写真の一人だ。
律儀に座っており、私に気づくとぺこりとお辞儀してくる。
「お待ちしておりました」
「は、はい?」
私は写真を取り出し男の顔と見比べてみる。
瓜二つ……。こいつ、囚人じゃないか……。私は警戒しつつも男の前に座る。
「それで、本日はどのようなご用件で……?」
「実は頼みがあるのです」
「た、頼み?」
そういうと、男は何かを取り出してくる。
薬箱のようだった。木でできた薬箱。私はそれを受け取ってみる。中には八つの錠剤が入っており、どれも普通の薬のようだった。
この薬がどうかしたのだろうか?
「ギャンブル、いたしませんか?」
「は?」
「僕と生死をかけた命がけのギャンブルをしましょう……!」
「は?」
意味が分からない。
「お察しかもしれませんが僕は脱獄してきた囚人の一人ですぅ……。僕はどうしても外で誰かに殺されたかったんです。でも、ただじゃ死にたくありませんからね。なのでギャンブルをいたしましょう」
「いや、え?」
「ギャンブル方法は簡単ですよ? その薬箱の中から毒薬を引き当てるだけですからね。八つのうちの一つが猛毒を持った薬です。普通の人間なら食べたら死ぬような量の猛毒が仕込んであります。僕とあなた、どちらが神に味方されているのかが知りたい! いいでしょう? あなたは処刑人であると聞いたので人を殺すのは得意なはずですよ……」
といってくる。
頭おかしくない?
「いや、私に受けるメリットないし……」
「そうですね……。ですが私は先日まで捕まっており用意するものがありません。受けて私が生き延びたらすぐに騎士団に自首いたしますよ……。最後のお願いです」
最後のお願いで私が死ぬというギャンブルはどうかと思うけど。
だが、まあ仕方ない。
「いいよ。刺激がほしかったし……。やるか」
「おお! ありがとうございます! あなたはとてもお優しい……」
私は薬箱をテーブルの上に広げたのだった。




