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アンダーワールドクロニクル  作者: 鳩胸 ぽっぽ
私たちの歴史の始まり
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花火大会に行こう ②

 そろそろ花火が始まる…。

 私たちは河川敷にレジャーシートを引き、空を見上げた。空は雲ひとつない青空。


「宇宙一巡しないかな…」

「なに考えてるの…」

「どす黒い悪か?」


 ひどい言われようだ。

 宇宙にはちょっと興味あるのは確かだけど一巡は冗談だって。

 私はキャラメルを口に含む。


 すると、花火が上がる音が聞こえた。


「始まった!」


 放たれた花火玉は空中を登っていく。

 破裂し、火花が周囲に散っていた。綺麗だ。花火は綺麗だなあ。

 

「…なあ、水を指すようで悪いが虫刺されの薬ないか?」

「…あんた虫除けスプレーかけてきなよ」


 三日月は呆れつつも巾着から虫刺されの薬を取り出していた。

 私もスプレーかけてないけど刺されてないな。そもそも蚊に吸われたことないや。


「てかこんなとこで生足出すなよ…」

「ばれなきゃいいだろ。カユイんだよ」

「女子としての慎みは皆無だね…」


 花火はまだ打ち上がる。

 私はまた空を見上げ…。


 ……。


「なあ、今思い出したんだけどさ」

「うん?」

「宿題、終わった?」

「まあ、初日に全部やったよ?」

「私も」


 今思い出した。

 なんでこれがきっかけで思い出すんだろう。それはまあいいさ。


「…私宿題学校の机の中にあるの思い出した」

「はあ!?」

「今って確か学校は改修中だから入れないだろ。どうすんだ?」

「三日月たちにコピーしてもらおうかなって思ってたんだけどゲームがもうすぐ届くっていうことが嬉しくて…」


 …………。

 あの、本当にどうしよう。学校では真面目に授業受けて先生からも安心されてるこの私が宿題を…。

 

「…あのー、宿題の字全部消してくれるっていうことは」

「嫌だよ…。宿題で丸一日潰したんだから」

「私は徹夜して終わらせたから拒否する」


 どうしよう!? 割とマジでどうしよう!?

 なんで問題集じゃなくて全部紙なんだよ。問題集から出せよ! 紙じゃなくすかもしれないだろ!

 っていうか夏休みに宿題なんていらないだろ! イギリスではなかったぞ! ずーーっと宿題に頭悩まされなかったぞ!


「うあああ…ここがイギリスだったらなあ…!」

「なんでイギリス?」

「イギリスは夏休みの宿題ないんだよ…。だから忘れるってことも無くすってこともないの」

「なにそれ羨ましい」


 宿題の文化を作った日本を許さない。


「もう諦めたら? 学校では成績いいんだから大目に見てくれるって」

「でも信用は少し失うだろお!?」

「それもそうだが…。他にやってないクラスメイトはいないか? ほら、ぐうたらな大和ぐらいならまだやってないんじゃないか?」

「連絡先持ってねー!」

「私持ってるからもらってきてあげるよ」


 とギャルの三日月がそういった。


「私一応クラスメイトの連絡先全部持ってるから」

「おお、主よ…」

「ちょ、崇めないでよ!?」


 私は手を合わせ三日月に向かって祈りを捧げる。主はやはり私を救ってくれるのだ。

 ありがとう、三日月(かみ)よ…。


「もういいから花火見ようよ…」







 花火が打ち終わり、私たちは帰り道を歩く。


「カユイー! なんで私だけこんな刺されるんだっ!」


 今度は腕をまくって腕を掻き毟る灘。

 どうやらたくさん蚊に血を吸われまくったらしく虫刺されが腫れている。


「そんな掻き毟ると傷が残るよー?」

「そんなこと気にしてられるか! カユイんだよ!」


 灘は災難だなあと思いつつキャラメルを舐める。


「じゃ、私こっちだから」

「私はこっちだ」


 十字路でバラバラに分かれる私たち。


「夜道だから背後に気をつけてねー」

「すぐ近いから大丈夫だ」

「私少し遠いんだけど」


 まだ歩くのか…。

 と思っていると背後から視線を感じる。私はちょっと不気味になって歩くのを早めるがついてくる気配があった。


 まさか別れた瞬間からストーカーが!?


「だ、誰だ。誰かつけてきてんだろ。姿を現せよ」


 私がそういうと現れたのは…。


「と、父さん?」

「あ、ああ」


 父さんが黒いジャンバーを羽織り、マスクをつけてつけてきていた。

 私は近づきマスクを強奪する。フードが後ろに落ち金髪が露わになった。


「やめてよこんな不審者みたいな…。通報されても知らないぞ」

「し、心配だったんだ」

「はあ?」


 どの口が…。


「今まで放置してたくせに」

「…悪かった。言い訳かもしれないが職場の同僚がな、アテナくらいの歳になると反抗期を迎えて父親を嫌うようになるっていっててな。アテナも私のことが嫌いなんではないか?と思うとアテナを避けた方がいいのかなと」


 …なにその理由。


「前に帰ってきたときに嫌われてるなと思った。けど親だから…」

「あのさあ、私が嫌いだったのは放置されてたからだ。お金だけ渡せばいいってのが嫌いだっただけ」

「そ、そうなのか?」

「別に反抗期は迎えてないっての」


 私は照れながらそういうと、父さんは抱きついてきた。

 

「アテナー!」

「ちょ、抱きつくな!」

「アテナ、コンビニ寄っていこう。好きなもん買ってあげるぞ」

「マジで? じゃあアイス」


 私は父さんとコンビニに出かけた。

 父さんが放置してた理由もわかってよかったよ。少しは蟠りがなくなったかも。

















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いずれ王となる君に~部下である剣士の私はその才能をゲームでも発揮します~
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] お父さん不器用だし、アテナも、鈍いよ〜
[良い点] おぉー、アテナさん良かったじゃありませんか。 お父さんとの仲も少し良くなりましたね。
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