王国騎士たちの頼み事
特殊クエストとはなんぞやと思いつつも私たちは鳥の囁き亭に戻る。
すると、なにやら高級そうな馬車が止まっており、鳥の囁き亭から騎士みたいな恰好をした人たちがぞろぞろと出てきたのだった。
「ああん?」
その様子を見てちょっと不機嫌そうなヴァイギング。
「む? お前、滅竜の覇者ヴァイギングか! やっと見つけたぞ!」
と、騎士が私たちを取り囲む。
四方八方塞がれて逃げることもできなさそうだ。
「王国騎士様がこの俺に何の用だよ」
「頼みがあるのだ」
「頼みだァ?」
ヴァイギングは警戒を辞めない。
ギロリとリーダー格であろう男性を睨みつけながら話を聞いている。
「以前、竜血祭という催しがあったのは知っているだろう?」
「ああ、もちろん知っている」
「そのイベントに使う竜を狩ってほしいのだ」
と、淡々と述べる。
ヴァイギングはふんといいつつ、睨みつけるのを辞めない。
「生憎だがテメーらに言われてやすやすとうけるような俺じゃねえよ。金積まれても狩らん。帰れ」
「そこをなんとか……」
「そこをなんとかっていう態度かテメエは。地に頭つけて頼み込むっつう気概はねえのか」
と、なにやらヴァイギングは王国騎士を嫌悪しているようだ。
「俺が引き受ける条件は一つ。国王が直々に俺に頭を下げることだ。そうでもしない限り俺はやらねえ。他を当たれ。俺じゃなくても狩れる奴はいくらでもいんだろ」
「あのー、事情は分かりませんけどお引き取り願えます? あはは。すいませんね」
私たちは鳥の囁き亭に入っていった。
これは深く理由をきかないとと思い、私たちはヴァイギングについていく。
「……騎士さんたちとなにか因縁が?」
「そんな大層なもんじゃねえよ。ただ、嫌いなだけだ」
「嫌い?」
「俺は昔騎士でよ、それはもう強さを追い求めて日々鍛錬に励んだ。そしてある時、ある貴族がドラゴンを狩りたいっつーことで同伴したんだが、その連れの騎士どもがドラゴンを見た瞬間逃げ出しやがって。その貴族はドラゴンに殺されちまった。その罪を全部俺に擦り付けやがったんだよ」
と、そう語る。
なるほど、押し付けられる、か。たしかに責任がないわけじゃないが、あまりにも責任がひどすぎる。
そもそも、責任を放り出して逃げた騎士のほうに問題があるんじゃないだろうか?
「それ以来騎士は好きにならねえしあの騎士共のせいで俺は追わなくてもいい責任をおっちまった。もうこりごりだぜ」
私も同じ立場なら嫌気がさしていただろう。
悪くない責任を押し付けられるのはムカつく。
「騎士もそうだが、騎士の言い分を信じて判断を下した国王ももちろん嫌いだぜ。毎年竜血祭にドラゴンを提供してやったのに何だってんだよこの仕打ちは」
と、ヴァイギングの部屋につく。
部屋はなんというか、ジムみたいな感じでトレーニング用具がたくさん置かれており、今でも鍛えぬいてるようだった。
「今日は教える気分じゃねーや。わりいな」
と、ミカボシに一言謝るヴァイギング。
そして、扉を閉められたので、私たちはこれで一度帰ることになったのだった。




