花火大会に行こう ①
現実での用事。嘘じゃない。
今日は花火大会があるのだ。三日月、灘たちといく約束をしている。
私は浴衣を…。着ない。もってないからだ。
「ふあーあ…。そろそろ約束した時間だな…」
私は階段を降りてリビングに向かうと父さんが座っていた。
お前いるのかよ…。
ま、なら都合いいか。
「私出かけてくるから」
「…どこいくんだ」
「別にどこでもいいでしょ」
リビングに来たのは鍵がここに置いてあるからだ。鍵をかけて…と思ったが鍵かけなくてもいいな。
一応鍵だけは持ってくけど。
「悪い輩と付き合ってないだろうな」
「はあ…。なに? うざい」
「…付き合ってないだろうな」
「付き合ってるわけないでしょ。今日は花火大会だから行く約束してんの」
私はそう言って出ようとすると引き留められる。
「ちょっと待ちなさい」
「なに?」
父さんは一階の自分の部屋に行ってしまった。
なんなんだよ…。と思っていると何か手に持ってやってくる。
「これをやる」
「なんだ…?」
渡されたのは一着の浴衣だった。
紺色に紫陽花模様の浴衣。私は受け取った。
「さ、サンクス…」
「ああ」
父さんはリビングに戻っていく。
一体なんなんだよ。浴衣プレゼントなんかして。この程度で穴埋めとか出来ると思ってんのか?
ま、まあいいや。浴衣は嬉しい。三日月とか着付けできるかな。
ったく。父さんも素直じゃないなー。
と、父さんがまたでてくる。
「忘れていた」
「ん?」
「下駄…。履き物も大事だと聞いた」
「父さんさぁ…」
下駄を手渡される。
これって靴下とかなんも履かないで履くのか? うーん、わからんなー。
下駄の履き方とかわかるわけないだろ。
私はとりあえず靴下を脱いでほっぽり出して下駄を履いて三日月の家に向かう。
流石に浴衣でチャリンコはダメそうだから歩くか…。ちょっと遠いんだよなあ。
花火大会が行われる河川敷についた。
三人とも浴衣を着てザ・日本って感じで趣があるっていうか…。浴衣女子って意外と可愛い。
「浴衣持ってたのか、アテナ」
「今日父さんにもらった」
「嫌われてるとか言ってなかったか?」
「うーん、わからん。穴埋めとかそういうつもりじゃない?」
私は二人の手を引っ張る。
屋台も設置されており、ヤキソバ、タコヤキなどもあった。
それに結構人も来ている。
「VIP席は前だって」
「私たちはVIPじゃないから入れないよ」
「えぇー! 前で見た方が迫力ありそうなのに」
まあ後ろの方でもいいか。見上げたら花火が見れるしね。
イギリスでも花火は見れたけど…。やっぱ花火は見てて美しさがあるよね。イギリスなら父さんVIP席を買い取ってみれたのに父さん来ないからな…。来て欲しくもないけど。
「何か食べようよー」
「腹が減ったな。私は無論タコヤキだな!」
灘はタコヤキの屋台に向かっていく。
「おっちゃん、タコヤキ! アツアツなのをね!」
「私あつあつなの嫌なんだけど」
「私は好きよ? あつあつなのが美味しいんじゃない」
「日本でそれが一番理解できない」
ちゃんと適温に冷まして食べるのがイギリスだからな。ふーふーするのは行儀悪いって教えられてるし…。
生魚の丸焼きも慣れたし生卵を食べるのも慣れたんだけど…あつあつなのは嫌なんだよ。
「三人分買ってきたぞー!」
「ありがと」
「さ、サンクス…」
私はとりあえず食べれる温度まで冷まそう。
ったく、なんであつあつが美味しいっていう文化があるんだよ。
お笑い芸人だけだよ喜ぶのは。
「あっつ、うまっ」
「食べないのか?」
「あつあつ嫌なの知ってて言ってる?」
「そ、そうか。アツアツ嫌いか」
舌火傷したくないし…。
タコ焼きを片手に、私たちは屋台を歩く。食べ物だけじゃなく射的などもあって射的で遊んでる人も多い。
私は三日月に荷物を渡す。
「おっちゃん! 射的やりたい!」
「お、百円ねー」
私は五百円を渡す。
「五回続けてやる」
「お、やる気だねえ」
私はコルク玉を25個、そして銃を手渡された。私は玉をセットし引き金を引く。
まずはキャラメルだ。林永のミルクキャラメル。甘いものがほしい。
私は狙いをよく定める。風は東方向、敵の距離は至近距離。
西部劇みたいな感覚だ…。
私は精神を研ぎ澄まし…引き金を引いた。
ミルクキャラメルはぐらっと倒れ後ろに倒れた。
「キャラメルゲット!」
「おめでとう。これキャラメルねー」
「次はあのウサギ人形だな」
射的。私の精神が研ぎ澄まされるぜぇ…。




