終わるまであと…
イベントもとうとう最終日になった。
七日間経過したつもりでいるんですけど現実では一日しか経ってないってマジですか? もう一週間は何もしたくない気持ちがあるんですけど?
「最終日は本当に安全に過ごしてましょうよ……」
「そうだな。ターター、ハイジをやったおかげでものすごいポイントをもらえることができた。無理に戦う必要もないだろう」
というので、最終日はずっと身を潜めてることにした。
体力自慢の私だが、いつでも気を張ってないといけないというのはさすがに疲れるものがあり、それが七日目となると疲労もピークに達している。
こうなるとテンションを上げるのも無理だ。
「今の私は超弱いですよ。本当にテンションあがらない……」
「疲れると弱くなるんだな」
「そうですそうです……」
私たちは洞窟の奥に行き、身を潜めることにした。
一応気配察知だけはしているが、特に引っかかる様子もなかった。
「ま、あと数分で終わる。それまでの辛抱だね」
「そうだな。あと五分といったところか」
五分も待ってなくちゃならないというのがあれだが、なにもありませんように。
だが、嫌なことは連続で起きるものだった。気配察知に何か引っかかったと思うと、私に向かって攻撃が飛んできたのだ。
洞窟は暗いので見えるわけがない。私はその攻撃をもろに食らう。
「ミーミル!?」
「誰か来ましたよ……。やっべ、紙防御だからもう死にかけ……」
私は自分の体力を見る。
「こうも狙って投げてきたとなると相手は暗いところを見えるようなスキルを持ってますね。見えない状況なので私たちのほうが不利だと思います」
「冷静に分析している状況か! 逃げるぞ!」
と、私の手を引いて逃げようとするが。
だがしかし、逃げれるとは思わない。逃げるためにはあの敵がいる方向に近づいていかなくちゃならないのだ。
私の手を引くクロムもそれはわかっているのか不規則な動きをして狙われにくくしている。
と、私たちは誰かの横を通り過ぎる気配があった。気配察知も私たちのすぐ近くにある。
「クロムさんとミーミルさんだ! 倒せばポイントゲットできるなぁ!」
と、相手も逃がす気はないらしい。
……しょうがないか。
私はクロムの手を振り払う。
「な、なにを?」
「このイベント、どっちか片方が生き残りゃいいんですよね? なら……」
「囮になるって言うのか!?」
「どっちみち逃げるのも足手まといみたいなもんなんで足止めしておくよォ! テンションを無理に上げてこー!」
私はクロムを庇うように立ちふさがる。
クロムは渋い顔をしてそうだが、生き残るためにはこうしかないだろう。二人とも一緒にいて一緒にやられるわけにはいかないからな……。
終わるまであと四分。どんくらい時間を稼げるかなーっと。
「ちっ、早いとこミーミルさんを終わらせてクロムさんのほうにいくぞ!」
「おう!」
「そうはいかないな! 君たちは私が倒しちゃったりして?」
私は拳を構える。
疲労困憊の体、死にかけの体力。どれくらい持つかな。
「最後に総取りのつもりでいたんだろうがその考えは甘いぜ!」
私は一瞬で距離を詰め、まず一人をぶん殴る。
その瞬間、私はもう一人の奴に剣で切りつけられた。油断していた……。だがしかし、死ぬ、と思ったのになぜ死んでないのだろう?
そう思ったが、装備のおかげだとまた気づく。
「削り切れてない!? さっきの削りを見るに死にそうなもんだったんだが!?」
「不死の鉢巻き……。お前には本当に助けられるな」
装備の効果も使っていかないとな。
私は胡蝶の道着・上の効果も使ってみる。何気に使うの初めてだし忘れていた。たしか姿がぼやけ見えなくなるという効果だったか。
私は使ってみた。
「なっ……どこにいった?」
「おお、本当に見えなくなるみたいだね」
私はその状態でぶん殴る。
最初からこうしてればよかったよ。騎士道もなにもないけどな。イギリスの淑女としては失格だろう。姿を隠し攻撃はな……。
だが、最終的に……勝てばよかろうなのだぁ!
「オラァ!」
私は攻撃をやめない。
終わるまであと二分! 体力1でどれくらい持ちこたえられるか!? ……いや、この場合は。
「それじゃ、逃げる!」
「ああ、クソ!」
姿が見えないのなら逃げやすい。
逃げるんだよぉーっと。あと二分、頑張って走って遠くに行こう。
すると、クロムからメッセージが届く。
『すまない、やられた』
と。
……逃げて正解ですね。




