ミーミル流喧嘩術
中間発表があったことにより私はさらに警戒を強める。
さすがに半分も切ったのに今さら死にたくはないからな。そしてどちらかが死んでもどちらかが生き残れば問題はないということだ。
生き残ることに徹するか、プレイヤーを狩るか。私たちはその二択に迫られている。
「さすがに戦闘はもうしたくはないな……。イベント上仕方ないのだろうがな」
「ですね」
そう話していると、突然目の前に誰かが道を塞ぐ。
手には盾を持っているが普通の持ち方ではなく、盾のふちを手に持っている。顔はというとヤンキーのような金髪であり、ガタイもめっちゃいい。
ヤンキー?
「おうコラ……。てめえらがクロムとミーミルか」
「人違いだ」
と、クロムがいって私たちは横を通り過ぎようとする。平然と嘘をつきやがったよこの人……。
「あ、人違いっすか。すんません……。ってなるかゴラァ!」
と、何かが私たちの横をかすめる。
相手はどうやら戦うつもりまんまんのようだ。
『本当にミーミルじゃないよ』
「が、ガイコクジン?」
私は日本語わかりません。はい。日本語わかんないんです。
『日本語わかんないのですが、あなたは誰ですか?』
「????」
ヤンキーの頭に?が浮かんでいる。
「グッバイ」
「ぐ、グッバイ……って、何逃げようとしてんだゴラァ!」
と、また何かがかすめる。
なにこのツッコミ体質……! 待ってた。君を待ってたんだ! 私はどちらかというとボケのほうがいいからな。ツッコミの人を待っていたんだ。
私は男と向き合う。
「なかなかいい鋭いツッコミだったぜ……。お笑いコンビを組まないか」
「てめえ日本語喋れんのかよ! っつーか組まねえよ!」
「ナイスツッコミ!」
「だああああ!」
私たちいいコンビになれそうな気がするな。
「おい、ゴーキ、なにしてる」
「あ、いや……」
「ミーミル、クロムとやるんだろう? そんな呑気に話してる暇はないだろ。時間がない。とっととやるぞ」
と、今度はオールバックの男性が出てきたと思うと拳を構える。
そのゴーキと呼ばれた金髪の男性は頭を掻き、武器を手にし、こちらを鋭い目でにらみつける。どうやら本当に戦闘するつもりはあるらしい。
不意打ちとかしてこない時点で結構まっとうな人間だとは思ってはいるが……。戦いたくないなぁ。だが、テンション爆上げでやるしかねえな!
「じゃ、私もヤンキー風の戦い方にしよーっと」
私は指をぽきぽきならす。
ヤンキー漫画ってこういう喧嘩あるよね。どういうセリフがあったっけ? たしか……。私は息を深く吸い込んだ。そして、大声で言い放つ。
「やんのかゴラァ!!!」
と、どすの効かせた?声で叫ぶと相手は怯んだ。
「……あれ、日本のヤンキー漫画でこういうのってあるよね?」
「いまどきは言わないかもしれないな」
「うそ……。ま、まあいいわ! っしゃあ! 行くぜオラァ!」
そう言うと私は金髪の男性にとびかかる。
その男は倒れこみ、私は男の上半身にのっかり男に身動きを取らせないようにした。
「なっ……!」
「じゃ、いくぜ私流の喧嘩術!」
私はまず顔面をボコスカ殴る。
「ゴーキ、今助け……」
「おっと、助けさせるわけにはいかないな」
と、隣ではクロムがそのオールバックの男の助けを阻止していた。
なら好都合だ。私はただただひたすら顔面を殴る。そしてトドメとして右腕をジキルタイガーの腕に変化させ顔面を殴った。
私は立ち上がり、勝利の拳を天に掲げる。
だがしかし。
「よ、よくやってくれんじゃねえか……!」
と、なぜか立ち上がったのだった。
た、タフだな……?
「じゃ、次はこっちの番だぜ! 躱すなよ!」
と、今度は私が男に掴みかかられる。
まずい、耐久力そんなないんだっての私はァ! 私はなんとかもがくが腕が振りほどけそうにない。
と、男は私をがっしり掴んだかと思うと私を天に放り投げたのだった。
空高く投げられ、私は動けないでいる。
「そしてぇ!」
私は地面に落ちる寸前に……顔面に男の拳が入った。
私は吹っ飛ばされ、地面に乱雑に着地する。あっぶねぇ、体力がギリだよ。回復手段もねえしどうしろってんだ。
私は立ち上がる。
「嘘だろ……」
「あれを耐えるか……。どんな耐久して…と、油断してる暇はない!」
クソ、私としたことが。
もうこれ以上食らえない。ちょっと本気を出すしかねえな。
私は一気に男との距離を詰める。
「なっ、速い…」
「まずは初撃!」
私はまず足で相手を蹴飛ばす。
「うぐっ……」
「追撃!」
そして両手を組み勢いよく相手にたたきつける。相手は地面に顔面を叩きつけられた。私はその男を掴む。そして、動かないよう何度も顔を踏みつけ、地面にめり込ませた。
そして、そのまま男の背中の方に移動し、体を地面に倒すように押し込むのだった。
「うっぎゃあああああ!?」
すると、男がポリゴンとなって消えていったのだった。
「ゴーキ!」
「ま、お前も終わりだ」
と、クロムが剣を心臓に突き刺した。
その男もポリゴンとなって消えていったのだった。
「……つ、疲れた」
「お疲れ」
とりあえず体力回復したい。




