すべては肉が勝つ
二人がログインなかなかしないので今日はしないのだろうと思い、私はクエストに行こうとすると、満腹度が減っていることに気づく。
結構限界まで減っており、速やかに何か摂取しないとまずそうな気配。
「…しょうがない。この店で腹ごしらえでもしてくか」
「満腹度が少なくなったのか? ならいいところを教えてやろう」
そういうと、私の手を引っ張りどこかに連れていかれる。
路地裏に入り、なんだか怪しげって言うかなんというか。私たちの拠点がある路地裏とはまた違う路地。
この先に何があるのだろう。そう思っているとなにやら電気の看板が立っていた。
「焼肉屋スタトン?」
「ああ。NPCがやってる店でな。結構いい肉を扱ってる。一見さんお断りっていうんだが私は紹介してもらってたまにきている」
と、クロムさんが扉を開ける。
「らっしゃい」
と、私が想像していた頑固そうな親父…じゃなく、ほんわかとした腰が低そうなおじさんだった。
「そちらは?」
「私の連れだ。ミーミルという」
「クロムさんの紹介ですか。なら大丈夫でしょう…。こちらへどうぞ」
と、カウンター席に座らされる。
目の前に七輪が置かれ、炭には火をつけてある。この世界で炭を扱う技術ってあるんだな。テレビかなんかで見たことあるけど炭づくりって大変そうだと思った記憶がある。
「で、注文は」
「今日は何の肉がいい?」
「今日はオイリータウロスの肉が手に入った。冒険者が持ってきたんだ。それがいいかい?」
「そうだな。それを頼む」
オイリータウロス。
名前からして牛か? それも脂ぎっとぎとの。肉は好きだし脂も大好きだからどんとこいや。私はそわそわして待っていると目の前に薄い肉が置かれた。
部位からして…。
「タン?」
「そう」
私はタンを七輪に乗せる。
しばらくすると脂が表面上にあふれ出てきてくつくつとなっている。嗅覚設定をオンにすると、肉が焼けるいいにおいが漂う。
「これ、お好みで」
と出されたのはみじん切りにされたネギに粗塩。それにレモンだった。
私はとりあえず最初はレモンで行こうと思う。レモンの酸味がどんくらい中和するか。では、いただきます。
私は肉を口の中に運ぶ。
「…脂がすごいけどくどくない! なんていうか、むしろ優しく包み込むような感じ? 口の中を守ってくれるって言う感じがする」
「その通りだ。よくわかってるな。オイリータウロスの肉は脂がさらりとしてて口を守ってくれる。タンが一番その成分が強い。試しにこれ食べてみな」
と、渡されたのは赤い唐辛子だった。
辛いのは苦手だし熱いのは苦手な私はこれはあまり食べたくはないが…。試しに一口齧る。
「…辛くない? いや、ちょっと辛いけどピリピリする程度だ」
「脂のおかげだ」
「すげー。美味しくて口も守れるとか最高かよ」
私は次々と肉を乗せる。
今度は肩ロースを出してきたのでそれも乗せて焼く。脂が炭に落ち、じゅわぁと聞いてるだけで腹が減りそうな効果音がなる。
私は若干レアな状態で網から上げる。
「レアはいかほどか。いただきまーす」
口の中にいれる。
肉は繊維が柔らかいのかすぐに口の中でほどけ、肉の甘み、肉汁、脂のうまさが口の中で合わさっていく。
味は現実のステーキがめっちゃ柔らかい感じかな? 美味く言い表せないが美味いことは事実。
「幸せだなぁ…」
「ここは美味い。食べ物を食べるときは基本幸せにならないといけないからな」
「食事は幸福であると祖先も言っていた。肉はいつの時代も正義とも言っていた」
「わかりますっ! 肉は正義!」
私はたくさん肉をほおばった。
今日の晩御飯は焼肉で決まりですね。




