本番はここからです ②
文化祭が始まって校内もざわついてきた。
「お帰りなさいませ。こちらお嬢様のために用意したダージリンティーでございます」
私はなんだか女性からの指名が多かった。
賑わってるのはいいことなんだけど、何この圧倒的女性からの指名率…。こういうのってかっこいい系イケメンの木戸くんとか守ってあげたくなる系の柊君とかが人気なんじゃないの?
「お姉さん外国の人ー? 肌滅茶苦茶しろーい!」
「メイド服に合ってるよ! 可愛いねぇ可愛いねぇ」
頼むから私にも男性の応対をさせてください!
午前9時でこの賑わいようはすごいとは思うが私女性しか相手してません! 何? 私イケメンなの? 美少女じゃなくて?
「イギリス生まれです…」
「本場だねー!」
「オッドアイもすごくかわいい! 私、外国の人と結婚したいなぁ」
「はは…。日本人の人の方が可愛い子多いですよ…」
「そんなことないってー!」
イギリス談義で話はじめたので私は席を離れる。
なぜ私はこうも忙しいんだ…! 暇な人だってたくさんいるぞ! 格差がすごい! 灘なんかは一部のアニオタらしき人たちに写真めっちゃ取られてるしまんざらでもなさそうだが…。いや、まぁ、あの眼帯はうけるわ…。
三日月もエロティックな雰囲気を出し、男子高校生とかに人気が出ている。
「君腕太いね! 何かスポーツでもしてるの?」
「俺はバスケをしてます。これでもエースって言われてるんですよ」
「すごーい!」
木戸くんも女性を相手にしてるようだ。女性って何かと大変だよな。
「やっぱ外国人美少女は客を引くわね! 女性が指名多いのは想定外だったけど!」
「委員長…」
「ま、私はメガネで地味だし指名がこないのは想定してたわ! だからこそのメイド喫茶よ!」
「……」
この委員長…。
私は帰るお客さんが来たので会計の方にたつ。
「すいませんお嬢様…。本日のお食事代が1200円となっております」
「はい、1万円」
「は、はい。では差し引いた金額が…」
「残りは君にあげる!」
「そ、そんなわけには…」
女性さんたちが去っていった。
私は手にした一万円を眺める。えぇ…上げるって言われましても! なんで私こんな人気なんですか!? 私の前世インキュバスだったんですか!?
なんていうか…ちょっと気に食わないぞ…。
「アテナさん、こちらの旦那様が出かけるというので会計を」
「は、はい」
私は一万円をしまい、目の前の男性相手ににこっと微笑む。
「やっと話せたねー!」
「た、巽くん?」
「いやぁ、きたはいいけどアテナさんめっちゃ人気でさー…」
「あ、会計1500円ですね」
「なんか冷たくない!?」
「あはは。まぁ、金落としてくれてありがとさん」
私は五千円札を受け取る。
「ありがとうございました」
「…えっ、おつりは!?」
「冗談だよ。はい、2500円」
「3500円だよ! なにおつり間違えようとしてるの!」
『すいません、日本語わからなくて…』
「なんていってるかなんとなくわかったぞ! アテナさんバリバリ日本語喋ってるじゃん!」
私は3500円を手渡す。
「ま、冗談だよ。ほいじゃまた」
「もう…。でもそんなアテナさんがー…可愛いねっ」
「はいはい」
「スルー!?」
巽くんは帰っていった。
私はちょっと笑った後、エプロンを引き締める。まだシフトの時間は残ってる。午前中いてくれと頼まれたからな。午後からは三人で文化祭を回る予定だ。
「いらっしゃいませお嬢様」
「うへぇ、本格的なメイド服ねぇ。うちのと大差なさそうだわ」
「…あれ、ミーミル?」
「お、ミーミルだ」
なんで私のゲームの名前が?
私は顔を上げると、ゲームでパンドラさんたちにそっくりな人たちが…。
「私の名前わかるでしょ? パンドラ。ここ阿久津家の従妹が通ってる店でさー。ほら、理事長がいるでしょ? あれ阿久津家の親戚でさー。招待されたんだよね」
「あんたの家の事情じゃないのに話しすぎよ…。とりあえず席に案内してくれるかしら」
「は、はいただいま」
私は三人を席に案内することにした。




