強い漢になるには ③
私が黒い影を倒したと同時に、男はふらふらとした足取りで近づいてくる。
「その…ありがとな。俺がやるっつっておいて…偉そうな口を叩いた手前倒せなくてよ…」
「いいよ。焚きつけた私が悪いから」
予想以上のビビりだった。
「情けねぇ…。俺が怖がってるばっかりによ…」
「気にするなって。前には進もうとしたんでしょ。十分な進歩だよ」
人は何かにたいして恐怖を感じるものだ。
私だって怖いものは一応存在する。恐怖を克服することが生きることだとどこかの悪役さんが述べていたかもしれないが、そうだと思う。
人は何かを怖がるものだ。それは暗闇だったり狭い場所だったり高いところだったり。私は集合体が苦手かな…。気持ち悪くなる。
「…うっす!」
「うっす?」
「口癖みたいなもんす。な、名前聞いてもいいっすか?」
「あ、自己紹介してなかったか。私はミーミルね。アマノイワトっていうチームの一員」
「うっす、改めて、俺ァアキラっす!」
と、私の手を握る。
「ミーミルさん! 俺ァあんたに惚れました!」
「ほ、惚れ?!」
こいつ私のこと好きなの!?
「ぜひ俺の師匠になってくださいッス!」
「…?」
え、師匠?
「ミーミル師匠は俺より漢らしっす! 俺ァあんたみたいに漢らしくなりたいっす!」
「は、はぁ!?」
私が漢らしい!? ふざけんな! 私は女! 女性! ウーマンね! だれが漢らしいだ。たしかに腕っぷしは強いほうだがそれでも女の子だよ。か弱いか弱い女の子。
私は睨むと、嬉しそうに笑う。
「その鋭い眼光! 威圧するようにすればいいんすね!」
「ち、ちが…」
こいつバカなのか?
誰かコイツを何とかしてくれ。私が助けを求めるように墓守さんのほうをみると、墓守さんは目をそらす。
「ば、ばかぁあああ!」
私は一発、アキラにビンタし、その隙に逃げ帰ってきたのだった。
あいつ、ムカつく。私は女の子だっての。何が漢らしいじゃアホ。こんな外国人美少女を捕まえて何が漢らしいじゃ。
たしかに服装とかはあまり気を付けないほうだがそれでも女の子! 恥じらいだってありますぅ。
私は拠点に逃げ帰ると、クシナダとミカボシが座っていた。
「お、お帰りー」
「おかー」
「ただま…」
「どしたん、元気ないね?」
そう言われたので私は席に座り、先ほどの事を愚痴る。
すると、二人は笑い始めた。
「そりゃ暴力で解決しようとしてるからなぁ! ある意味じゃ漢らしいな!」
「それに、受け入れがたいこともすぐ受け入れられるし全力でやってんじゃん? ある意味その清々しさは漢勝りっていうか、漢だよね」
「…私そんな漢なの? もう私女性じゃないのかな。男の子として生きていたほうがいいのかな…」
「そ、そんなことないぞ。ミーミルは外国人美少女だ。自信を持て」
「男の子がそんな可愛い見た目してるわけないから…」
「…見た目だけですか」
見た目だけ女の子って言われても。
私は性格は男の子なんですか。女の子捨てたわけじゃないのに。
「よし、じゃ、明日から女の子らしく過ごしますわよ!」
「「それはやめて」」
なんでですか。
 




