使徒
山羊たちに連れてこられたところは随分と高いところだった。
山羊たちは洞窟内に入っていく。私はなんていうか祭壇らしきところに座らされていた。祭壇がこんなところにあるというのはおかしいが…。
山羊たちは頭を垂れている。もしかして…祈ってるというのか? 神様に…。
「ゴッドゴートというのは神を崇拝する羊の魔物だからゴッドゴートというのだろうか…」
その時だった。
私の視界はふらっと暗くなる。
私は気が付くと白い靄が出ている空間にいた。
深い濃霧だった。私はその濃霧の中を歩く。ここ…あのレシピを置いているところと酷似しているがここにレシピがあったり?
なんてそんなわけは…。と、私は歩いていると突然霧が晴れた。
すると、そこには一人の女性が立っていた。
「やあやあ久しぶりー! 元気してたー?」
「…どちら様?」
「もう私のこと忘れたの? ひどいなぁー。神獣をテイムしたって言うので注目してたのにさー。ミーミルちゃん」
「???」
心当たりがない。
誰だっけ。誰なんだっけ?
「ヴァルハラだよ! 王城の地下ダンジョンで会ったじゃん!」
「あー、ものぐさ女神!」
「言い方…。力を節約してるだけだよ! っていうのはおいておいて。メルメル山のゴッドゴートに連れられて祭壇まで来たからここに連れてきたんだけど」
「はぁ」
「連れてきたはいいけどなにすればいいかわからない」
おい。
「とりあえずここの説明をするね。ここは神の間…。この世界の創造主である私に与えられた最高神の間だよー。神様は無数にいるからね。私だけの部屋なんだ…。殺風景で何もないから詰まんないけどね!」
「……」
「この部屋は他の神であっても私の許可なしじゃ入れないんだよー。だからこの部屋に入れたこと自体がステータスになるんだよー?」
「そ、そうっすか…」
「うわー興味なさげー…」
いや、あまり興味はないし。
この神の間とも呼ばれるところは本当に何もない。ただただ夜空が輝くというだけだ。夜空に星がキラキラと輝いているだけであり、そこまで面白いものじゃ…。
「ま、興味なくすよねーすぐに」
「…で、用がないなら帰っていいですか?」
「待って! あった! そういや君ジキルタイガーとめちゃくちゃ仲良しになってるよね!? それを機に特別進化をさせようと思って!」
「特別進化?」
「神獣とめっちゃ仲良くなった人にはさせるんだけどね、そういうのがあるのよー。ジキルタイガーなら…そうだなー。うーん。使徒だね。私の直属の眷属にしてあげるよ。神獣をテイムした一発目の人だからね」
と、私の体が光りだす。
直属の眷属? なんだそれは。と、私のステータスが変わっていた。大幅にステータスがアップし、レベルにしてはものすごく多いステータスだった。
そして、種族名がヴァルハラの使徒という名前になっている。
「神獣をテイムして仲良くなった人は必ずどの神かの使徒になる必要があるんだよねー。神獣は本来神様のペットみたいなものだからさー。人間にテイムされると困るからそうするんだけど…。この私の使徒になれるのは早々ないよー? 幸運だねぇー」
「……」
「月の民だったころのスキルは使えなくなってるけど、固有能力”引力”があるからね」
「引力?」
「そんな大層なことじゃないよ。相手の素早さを下げる能力ってだけだねー。ま、君は素早いみたいだしいいスキルじゃないかな?」
なるほど、対照的に考えて素早くなったと考えればいいのか。
「じゃ、もう時間だし現実に返すよ、それっ!」
と、視界が暗転したのだった。
そして、目が覚めると祭壇にいた。
 




