見方を変えよう
私たちじゃいくらかかるかわからない。
なので頭いい人に頼ることにした。私は魔王軍のチームのところに向かう。中に入るとパンドラさんだけがそこに座っていた。
「こんちはー」
「おー、ミーミルさん。どしたの?」
「ちょっと協力を仰ぎたくて…」
「協力?」
だらーっとソファーにもたれかかりながら私を見る。
私は先ほどの謎をメモした物をパンドラさんの前に出した。
「なにこれ」
「私たちに依頼されたものの暗号ということなんですけど…どういう意味ですかね? そこになんかあるらしいんですけど」
「暗号、暗号ねぇ…」
パンドラさんはがばっと上体を起こしメモを見つめる。
数秒考えるようなしぐさをとった後、何かがわかったのか、閃いた顔をしていた。
「なるほどなるほど。これは簡単だね」
「わかったんですか?」
「うん。でもー、ただでは教えてあーげない。レースの時はイベントのこともあって協力関係だったけど、今は違うからね。対価をくれないと」
「対価…。じゃ、じゃあ私の体で…」
「いや、体で払わなくてもいいけど…」
くっ、必死のボケだったんだけど。
対価、か。私に出せるような対価…。
「ま、冗談だよ。このぐらいの謎なら対価をもらう程度じゃないさ」
「す、すいません…」
「だけど、自分で気づいてもらうよ。まずここで問題です。私たちの周りに霧がいつもあるところはどこでしょう?」
と、そういうクイズを出された。
霧がいつもあるところ?
「このゲームにも現実にも存在するものだよ。私たちに身近であり遠いものさ」
「え、えーっと…」
「英語では…クラウド」
「雲?」
「そう!」
つまり…霧は雲ってこと? 地面で雲が…。
「もしかして、山?」
「そうだね。そう考えたほうがいい。この謎を考えた人はどう見るか、じゃなくどこから見るかというのが問題点になるんだ」
「雲がかかる山のところにあるってことですか?」
「そう。で、地図を見るにこの大陸は山が少ない。雲がかかってそうな山は三つ。メルメル山、ウラウラ山、ガンデラ山脈…。ウラウラ山とガンデラ山脈はないと思うよ」
「え、えっと、なんでですか?」
「メルメル山の付近に理由があるね」
パンドラさんは地図を広げる。
地図を見ると近くにはホインドの谷とメルメル湖というのがあった。これが関係しているのだろうか?
「雲は上昇気流と水蒸気でできるんだってことは習ったでしょ? 中学の理科で…。ホインドの谷は熱風が常に吹き付けてるんだ。そして、メルメル湖の水が蒸発してその熱風に乗って上に行く。雲ができやすい条件が揃っているのがここだけしかない。年中曇りなのは多分ここぐらいだろうね」
「ほんとだ…。他の山は近くに水源がない…」
「ま、メルメル山を探してみたらいいよ。確証はないけど、絞るんだとしたらそこぐらいだね」
といってくれた。
論理的で、反論はできない。たしかにメルメル山が一番の有力候補とみて間違いないのかもしれない。
一応は疑ってかかったが…。疑うことはないのかもしれないな。
「ありがとうございました。助かります」
「なぁに。気にするなよ。ま、疑ってるだろうから言っておくけど私は決して嘘の推理とかはいってないよ。私の推測をありのまま話したからね」
「は、はい」
「それじゃあねー」
といって私は別れを告げ拠点に戻る。
「…頼られるって言うのも、悪くないな」
そう聞こえた気がした。




