メリィ・シープ牧場の牛
アプデ翌日。
私たちはすぐに学校から帰りログインした。ログインすると二人は既にログインしており、何やら紙を見ている。
「何見てるの?」
「ん? あー、なんかアプデの報告の紙と依頼書があったからそれ見てたんだよ」
「ほえー。どういう依頼?」
「差出人は商人バイタ。素材を納品してほしいって。書いてある素材は丁度私が持ってるから納品しにいくけど…」
ほえー。
私が依頼書を横から眺めていると誰かが拠点の中に入ってくる。私たちは振り返ると、カムイ神父とメリィ・シープさんがそこに立っていた。
珍しい組み合わせだな?
「あら、お二人ともどうしたんすか?」
「依頼でしょうか?」
「違うべー。今日はお世話になっているお礼をしようと思ってだな、来たべ。ミーミルさんが助言してくれたおかげでメタルシープを繁殖させられたべ!」
「私も彼と同じです。日々お世話になっている皆様に贈呈の品を持ってまいりました」
「贈呈の品?」
「お世話になった人には毎月お礼の品を差し上げるのが常識なのです。以前の礼拝堂に関してはお世話になりました」
あー、そうか。礼拝堂の…。
でもお礼の品を送るほどか? と思うと、NPCに好感度があるのかもしれないという考察があるな。好感度が高いほどいいのかもしれない。
好感度が上がる条件と言うのもあるかもな。
「私が差し上げるのは厄除けの聖水。振りかけるもよし、アンデッドにたいして強い浄化作用があるのでアンデッドに対する攻撃手段としてもご活用ください」
「わしはわしの牧場のミルクだべ! いい餌を食べさせてるから美味い。そしてミーミルさん、また相談があるんだがわしの牧場に来てもらえないべか?」
「私?」
「そうだべ。お礼はする。どうだべ」
「いいっすよ。私程度の助言で申し訳ないんですけど」
というので、私は二人と一旦別れメリィ・シープさんについていくことにした。
牧場につくと、メタルシープが繁殖している。広い牧草地に放り出されており、みんな素早く動いては疲れて眠る者も。
「繁殖に成功したはいいんだがやっぱり毛を刈り取るときが大変でなぁ。どうにかいい方法はないべか?」
「うーん…。そう言われましても…。メタルシープの習性とかはないんですか? 普通の羊と違うところとかは?」
「そうさなぁ…。特にはないべ。しいて言うなら団体行動は好まないぐらいか。普通の羊は群れを作って追い込むのが簡単なんだが…」
そうか。単独行動か…。
「む、こんな時間だべ」
そういうと、メリィ・シープさんは口に手を当てる。
「みんなー! 餌の時間だべー!」
と、声を張り上げるとドドドドドという音を立ててメタルシープが一斉にやってくる。食欲旺盛なのか?
メリィ・シープさんは近くにあった餌が入った袋を掲げる。
「もうこれ餌でおびき寄せたほうが早いっすね」
「餌のときになると毛が汚れるんだべ…」
「こればかりは仕方ないんじゃないですかね? 苦労するよりかはこちらの方がいいと…」
「わかったべ」
そういいながら餌をほいほいやっていた。
それにしてもめっちゃ食べるな。
「そういや餌は外に置いてあるんですね?」
「魔力草が入ってるんだべ。普通の餌と一緒に置いておくと魔力草の魔力で普通の羊にやる餌が魔力だらけになるんだ。いつかは小屋を建てるつもりだけんど、今はたてられねんだ」
「え、なんで?」
「わしがいつも頼んでる大工が王都にいってるらしんだわ。もうすぐ戻ってくるっちゅーし急ぐほどでもねーんで待ってる」
ほえー。
「モー」
と、今度は何やら牛の鳴き声が聞こえてきた。牛たちがメタルシープに近づいていく。一緒にして大丈夫なの?
「お、牛どももきおった。こいつらとメタルシープは仲いいんだべ」
「メタルシープ逃げないんですね」
「ゆうても一応は魔物だからだべな」
そういうと、牛の一頭が私に近づいてくる。
そして、私の衣服を噛んだ。
「ちょ…」
「好きなんだべなぁ。よほど好かれるんだべ」
「ちょ、感心してないで助けて!」
「遊んでほしいんだべ。少し遊んでやったらいいべ」
そう言われましても…?
と心の中でぼやいていると何か違和感がある。
「この牛って普通の牛ですか?」
「ん? そうだべ。牛は魔物じゃないべ」
「だとすると…なんかちょっと自信はないんですがこの牛変ですよ?」
「変?」
「魔力を感じるんです。なんか…。魔力たぶんこいつ持ってます」
「なんと!?」
そういうとメリィ・シープさんは私と牛を引きはがす。
「ほんとだべ。魔力を感じる…。進化する前って感じだべ!? どうするべ…」
「どうするって?」
「退治するほうがいいのかもしれん。牛の魔物は野生でも存在してるがすべて凶暴なんだべ…。こいつもそうなったらと思うと怖いだ」
「なるほど…」
そう思っていると。
突然牛の体が光りだす。
「まずいべ! 進化し始めやがった!」
「こういう進化なんだ…。どこのポケ〇ンだよ…」
光が止むと、そこには短い手足になり乳房が増えた牛がいた。二足歩行できるらしくのそのそと歩き始める。
凶暴さのかけらもないな。
「し、新種の魔物だべ…?」
「新種っすか?」
「うおおお、これは報告だべ! 温厚そうだ! 一応魔物研究所へ報告するだな! 些細な変化に気づいてくれて助かるべ!」
そういうと、その牛がのそのそと近づいてくる。
そして、乳房から牛乳を出していた。
「そだ。牛乳を飲んでみるべ」
と、そそくさとカップをもってきてそのままそこで絞り始めた。
私にも渡してくる。審美眼で鑑定してみた。すると。
【ジェントリーミルク 特徴:心を落ち着かせる効果を持つ。体力が100回復】
という。ハイポーションと同じくらいの回復量だ…。
「これ鑑定してみたんですが…」
「スキル持ってんか!」
「まあ、似たようなスキルですけどね。このミルク、すごいっすよ。心を落ち着かせる効果を持つらしいっす」
「ほほう…」
と、牛乳を飲むメリィさん。
私も飲んでみる。普通の牛乳とは違い、甘い。練乳という甘さではないが、牛乳に砂糖を淹れてちょっと甘くしたような感じだ。美味い。
「甘い! 牛乳とは違う味だべ。これは進化させるのもありだべな…。だが進化条件が分からん以上無闇に出来んが…」
「私もちょっと考察してみますんで今日はもういいっすかね?」
「いいべ。わしはちょっと魔物研究所に報告する資料をかくだ」
そういって、私は牧場を後にしたのだった。
 




