灘の心の強さ
私は結局暴行したということで出席停止処分を食らった。
だがしかし、花井、染岡もいじめを扇動していたということもあり、そして一人を執拗に追い詰めたこと、次にいじめるようなことがあったら処分を下していたということもあり二人の方が重い罰というか。転校を余儀なくされたようだ。
これにて一件落着…なわけないもんな。
いじめられていた灘や、いじめをさせられていた三日月。二人の心身が心配でもある。私は三日月のところに向かった。
三日月の家知らないんだよな…。灘の家なら知ってるんだけど、三日月自分家誘おうとしないしな。
「しょうがない、灘ん家いくかー」
私は自転車にまたがり、颯爽とかけていく。
灘の家は八百屋で、野菜がどれも美味しそうに並べられていた。
「こんちはー。灘いますか?」
と、おじさんに聞くとおじさんは少し暗い表情をしていた。
「灘、か…。今深く傷ついていてな。誰とも会いたくないつってるんだ。また後日来てくれ…」
「いるんですね。じゃ、あがります」
私はおじさんの言葉を無視して中に入っていく。
今、寄り添ってあげなきゃダメだ。灘のことだから誰にも理解してもらえないまま引きこもるかもしれない。まだ仲良くなってそれほどたっていないが灘の性格は理解しているつもりだ。
灘は気弱だからいじめのことも言い出せていないのだろう。
私は灘の部屋の前に立つ。
「おい、灘。来てやったぞ」
「…アテナ?」
弱々しい灘の声。私はどんどんと強くノックをする。
「染岡、花井は転校になった。すべてはあいつらが悪い。そりゃ、三日月もあんたを裏切った形になるだろうし辛いだろうけどさ」
「……」
「三日月だっていじめられたくなかった。でも、いじめたくもなかった。どうしようもないことだってあるんだ。だから落ち込むなとは言わないけど…学校来なよ。私が待ってる。ま、私もちょっとやらかして出席停止処分くらっていけるのは一か月後だけどな」
私が笑ってそういう。
すると、扉が開かれた。
「あてなぁ…」
と、涙声で灘が私に抱きついてくる。
鼻水が私の服についた。
「部屋から出てきたってことは遊ぶってことか? なにする? カードゲームか?」
「三日月と仲直りしたい…」
「いや、ここに三日月いないでしょ…」
「三日月のことだからきっとくるよ…。親に言うと思う…。私の家に謝りに来ると、思う。だから、私も三日月の事を許したい。けど、許せる勇気が出ない」
「勇気をくれ、と?」
そんな無茶な。
人の気持ちは操作できない。勇気を出せるのは自分自身だけ。それは変わらないのだ。私だって後押しはできるが勇気を持たせることはできない。
「ま、当たって砕けろ、なんとかなる」
「そんな曖昧な…」
「もう、灘は気にしてないんでしょ?」
「…うん」
灘は強いからな。
もう、気にしていない。落ち込むことは滅多にない。落ち込んだということは結構傷ついたって言うことなんだが…。
見習わないとな。私も。
「…私も、落ち込まないようもっと精神を鍛える」
「…?」
「ためしに漫画に出てくるような恥ずかしいセリフをいつもいってたら強くなれるんじゃないかって私は考えた」
「…いいんじゃない?」
「そうか! ならそうするぞ! ありがとう! …いや、感謝するぞアテナ!」
な、なんか見ないうちに逞しくなってる感じがするな?
私が呆気に取られていると、下で怒鳴り声が聞こえてきた。灘の父親の声だった。灘は下に降りていく。私は物陰からちらっとみるとそこには、三日月と三日月の両親がいたのだった。




