私たちの昔の事 ③
翌日、学校に登校すると。
クラスが静かになっていた。染岡と花井がテレビに何かをうつしていた。それは昨日の放課後らしき映像。
それには、三日月がカッターで机に傷をつけている映像だった。
「三日月ちゃんサイテー! 友達を傷つけるなんてさー!」
と、花井が笑う。
「女子ってこえーな! こうも簡単に裏切れるもんなー!」
と、染岡が嘲笑う。
灘はというと、信じていた三日月に裏切られたという事実がぬぐえないのか、力が抜けていた。三日月はずっとうつむいたままだった。
うつむいて、何も話そうとしない三日月。灘はその裏切られたというストレスに耐えきれなかったのか、そのまま倒れてしまったのだった。
…切れそうだ。
私は、感情を押し殺す。ここまで怒りそうになったのは初めてかもしれない。私はまず三日月に話を…と思ったが、チャイムが鳴ったので私は灘を抱え、保健室に向かうことにした。
灘が帰り、私は三日月を探す。
三日月は学校の屋上に立っていた。フェンスを今にでも乗り越えようとしている。
「三日月!」
私は大声で名前を呼んだ。
「アテナ…」
「お前、いじめていたってのは嘘だろ? だとしたらごめんなんていう言葉出てこないもんな」
私はそう聞いた。
すると、三日月はその場に泣き崩れる。
「何があったか教えろ。私が何とかしてやる」
私が近づいてそう言うと、三日月はぽつりぽつりと話し始めた。
「私がっ…私にやれって染岡たちが…。やらないと、私もいじめるぞって…」
「…それで灘を?」
「ごめ、なさい…」
と、泣いている。
ま、そんなことだろうとは思っていたが。だがしかし、私はまず三日月を何とかしないといけないかもしれない。
いじめたことによる罪悪感。それが今三日月を蝕んでいる。
「…三日月」
「……」
三日月は泣きじゃくる。
「友達一人を犠牲にできるような性格してないんだから。そんな無茶するなよ。嫌なら抗え。学校に来ないとか、そういうこともできる。私が何とかしてやるから待ってろ」
私はそういって、三日月を置いていった。
私が目指すは教室だった。教室では染岡と花井が談笑している。私は染岡に近づいた。
「おい」
「あ?」
そう声をかけ染岡が振り向いた瞬間。
私は、拳を振り下ろした。染岡は椅子から吹き飛んでいく。私は湧き出る怒りが抑えられていない。
殴ってでもやめさせてやる。それが私にできる唯一のことだ。
「な、なにすんだてめえ!」
「何してんだよお前こそ。私の友人二人を追い詰めてそんな楽しいのか?」
私はもう一発ぶん殴る。
今度は花井が掴みかかってきたが、私は花井の顔面にもグーパンチをお見舞いしてやった。私、今何するかわからないからな。
染岡と花井は怯えたように私を見やる。
「お前らに恐怖をしみこませてやる。ほら、かかってこいよ。殴りかかってきなよ!」
私は染岡をまた殴る。
染岡の歯が折れていた。
「わ、悪かった! 悪かったよ! 謝る!」
「誰に? 私にじゃないでしょ?」
「ふ、二人に謝るから! だから許して! ごめんなさい!」
そう二人が許しを乞うてきた。
私は拳を振り上げるのを辞める。騒ぎを聞きつけた先生が教室に入ってきた。そして、私に近づいてくる。
「染岡、花井、そしてアテナ。まずは来なさい」
と、先生がそう告げた。




