がなる暴徒と獣の使い
パンドラさんが戦闘の舞台に立ち、相手はガバメンさんが立つ。ガバメンさんは金髪のオールバックで、とてもいかつい見た目をしているし、先ほど怒鳴ってきたこともある。
「よくも最初は降参っつー舐めた真似を…」
「別にいいでしょ? 勝ちを譲ってあげたんだから。さ、始めようか」
二人とも武器を構える。
『では、戦闘開始です』
と、機械の無機質な声が響いた。
ガバメンさんはすかさずパンドラさんとの距離を詰める。パンドラさんはクモの糸をガバメンさんめがけて飛ばした。
クモの糸はガバメンさんに巻き付き、そのまま拘束する。パンドラさんはわざと転ばせると、何度もクモの糸を吐き出し、地面に縛り付けた。
「な、なんだこれは!」
「クモってのは罠のスペシャリストだよね…。自分の巣が罠なんだもん。ま、馬鹿正直に正面から戦おうなんていい度胸してるよね」
そういってパンドラさんはガバメンさんの顔を踏みつけた。
「て、てめぇ…」
「卑怯って言うのはなしだよ? これは私の能力だしね。能力を使って何か悪いことでも?」
「…」
「相手を警戒しないお前が悪い。ま、このまま終わらせた方が楽かな」
パンドラさんは棍棒を振り上げる。
そして、そのまま顔面目掛けて振り下ろした。もちろん相手は躱せるはずもなく、棍棒の攻撃を受けてしまう。
パンドラさんは何度も振りかぶり、何度も振り下ろす。それはもう戦い、というのではなく虐殺という感じがする。
何より笑顔で何度も殴ってるのが怖い。
「はい、終了っと」
『ガバメン、蘇生いたします。そして、パンドラさんの勝利です』
パンドラさんは戻ってくる。
「ま、あとは大将戦。大将だけは気を付けなよ。神獣をテイムするぐらいだから結構な実力者だ」
「わかりました」
私は律儀に座って見守っているジキルタイガーをみる。
ジキルタイガーは強いまなざしを向け頑張れと告げてくれていた。ま、私だってジキルタイガーはとられたくないし、本気で抗ってやるけどさ…。
『では、大将戦を開始いたします。ミーミルさん、タトゥーさんは場にお立ちください』
そう言われたので私は戦闘の場に立った。
相手の装備は軽装備だった。私と同じで。結構素早さは高いんだろうが…。私だってそれなりに極めている。
それに、素早さならプレイヤーの中でもトップクラスではあるだろう。
「…まさか前半は舐められ降参され、後半はなすすべもなくやられるとは思わなかったぞ。これでもあいつらは結構強いのに」
「まぁ、こっちの方が強かったってことだ」
「そうか。だが、俺はあいつらとは違う。覚悟しておけよ。ジキルタイガーは俺がもらう」
「神獣をテイムしてるのはタトゥーだよね? 神獣って一匹までしかテイムできないんじゃ」
「ああ。俺らはチームではないからな。一時的に手を組んでいるだけだ。ジキルタイガーを譲ってくれという人がいてな。そういうことだ」
なるほど、別のチームってことか。
「ま、カミーユは狙うつもりはなかったけどもらえるんならもらっておこう」
「お前こそチームじゃないのか?」
「私は協力してもらってるだけだからな。チームじゃない」
お互い、どうやらチームじゃないらしい。
「そうか。まあいい。もう話はすんだろう。とっとと始めようか」
「そうだね」
私たちは武器を構える。
『では、戦闘開始です』
戦いのゴングは今鳴り響く。
 




