流星武闘
男の子の母親は家につくと目が覚めたようで体を起き上がらせる。
「ここは…」
「あなたの家ですよ」
私は椅子に座り、そう話しかける。
すると、シーツを持ちながら私と距離をとる母親。
「あ、あなたはだれ!」
「お姉ちゃんはお義母さんを助けてくれたんだよ!」
「わ、私を…?」
というと、見る目が変わったようで、頭を下げてくる。
「ありがとうございます…」
と感謝される。
別に感謝されるためにやったわけじゃない。人のためになにかをするというのはあまり好きじゃない。ただ男の子が邪魔だっただけだからな。
「気にしないで。それじゃ、目が覚めたんなら私は行くよ」
「お、お礼をさせてください!」
「ん?」
母親は立ち上がり、タンスの方に向かう。
引き出しをあけ、何かを取り出していた。一つのナイフ。だがそれはどこかで見たことがあるようなものだった。
「それって…」
「スキルをもらえるナイフと言われてるんです。あげれるものはこれ以外ありません…」
と、渡された。
職業ギルドのナイフは普通のナイフの色だった。黒い持ち手に銀の刃だったがこれは全体が虹色に光っている。
色によって違いがあるのか?
「あ、ありがとう。でもいいの?」
「はい。私の兄が持たせてくれたものですけど、使い道がないので…」
「息子にでも使ってやればいいのに」
「息子にナイフを突き立てるのは…」
まあ、この形状だから嫌と言えば嫌か。
ナイフを突き刺すというのは嫌になる人もいるだろう。私も滅茶苦茶怖かった。
「じゃ、ありがたく受け取るよ」
私はナイフを手に持ち、家を出ていった。
そして、拠点に戻る。私はログアウトするまえにスキルをもらうことにした。このナイフを突き刺せばいいんだっけか。
これがただのナイフだったら許せんけど…。虹色に光るナイフっていうのは普通のナイフじゃないだろうし安全か。
「…まだちょっと怖いな」
ためらいながらも、私は自分の胸に突き刺した。
ナイフは職業ギルドのナイフと同じようにずぶずぶと私の胸の中に入っていく。ほんとこの光景だけはちょっと嫌だな…。
《スキル:流星武闘 を取得しました》
というアナウンスが脳内に響く。
流星武闘の説明を見ると、流星のように素早く攻撃ができるようになるスキルらしい。自身のスピードが三倍されるということだ。戦闘時常時発動型スキルらしい。
闇の二面性と併せれば速度は尋常じゃないくらい速くなりそうだけど…。これは同時発動できるのだろうか。
「なかなかいい滑り出しだな。今日は二つもいいスキルが手に入った」
多分攻撃力ならミカボシ、クシナダに負けないくらいには上がっていそうなものだ。
これ二人に言ったら驚くかな。
私はあいつらのレベルも知らないしスキルも知らないが…。それでも私よりは確実にレベルも実力も上。早くあいつらに追い付きたい。
ここが始まりの街と言われているのなら、違う街だってきっとある。
種族が選べるのならその種族が暮らす村もきっとある。
そういったものを探して歩くのもいいかもな。
「エルフの村とか見てみたいものだな…」
エルフの村にいくのが最初の目標かな。




