閑話:その頃の運営は・・・
ここはゲーム世界ではなく現実の世界…。
モニターの前で大人数の人が座っていた。
「気づく人が出てきたなー。そんなわかりやすく説明したか?」
「してないはずだぜ? むしろ違和感がないように説明したはずで、道中にそれらしきヒントがあるって感じなんだけど…」
と、モニターを見ながら焦りを隠せない運営陣がいたのだった。
完全に予想外だった。まさか、ほぼほぼノーヒントで気づくような奴が出てくるとは思わなかった。その戦争に参加せねばフニッシュの街へ到達できないこと、それを気づけるのは普通じゃない。
「…パンドラ、ワグマ、ビャクロ、ミーミルのデータが出ました! そ、その、十年近く前に流行った他社のIUOというゲームをプレイしてました。パンドラ、ビャクロ、ワグマは」
「尋常じゃないIQの持ち主、世界的大活躍のトップアスリート、世界の経済を握る阿久津グループの会長…。まじか」
その並びが強すぎるのだ。
「ですがミーミルさんはやっておりませんね。今作が初めてのVRなのかも」
「定期的にバケモンがくるな…。まだいるだろ? バケモン」
「ええ、そのバケモンは今神獣に出会ってますね」
神獣。
それはテイム出来たらどのレベルにおいても活躍を見込める超強ーいモンスター。それ用の特別イベントもあれば、テイムしなければなれない職業もある。ミーミルを見ればそれがわかるだろう。
そもそも、始めたてのプレイヤーがジキルタイガーに認められるというのも想定外だったのだ。
「なんでこうもバケモンが多いんだろうな。想定外が多すぎるぞ」
「ま、そううまくいかないってのもまたいいんじゃないですか? 近頃の若者の才能は目を見張るものがありますね」
「頑張って開発したのにすぐに攻略されたら少し悲しいがな」
運営はまたモニターを見る。
モニターには、ミーミル、ビャクロが敵軍を蹴散らしている様子が見えた。
「…ダメージ1も負ってないな」
「二人の動きがほとんど人間離れしてる」
運営の意見は合致していた。
見ていて飽きはしないが、ダメージを負わずに対応するなんて厳しいものだ。多勢に無勢というのは結構きつく、ダメージを負ってしまうものなのに。
二人はそれすらなく対応している。
「世界って案外広いんだな…」
「さすがトップアスリートというところか。今度有名人を誘ってのコラボイベントを開くつもりだったしアスリート呼んでVR運動会ってのは?」
「それもいいがスキルがあるしな。それに、アスリートだけじゃ足りないな。インパクトにもかける」
「そうですか…」
そう談笑しつつ、モニターをまた見やった。
パンドラたちも映し出されており、パンドラとワグマはなにやら敵軍大将のところに潜り込んでおり…。
なにをするつもりなのだろうか。




